地球環境

気候変動に関する政府専門家セミナー(概要と評価)

平成17年5月17日

I. 概要

  1. 気候変動に関する政府専門家セミナー(Seminar of Governmental Experts)は、16日、17日の両日、ボンで開催された。
  2. 今次セミナーは、2月の京都議定書発効を受け、また2013年以降の約束の検討が本年末までに開始されることも念頭に、昨年12月のCOP10(気候変動枠組条約第10回締約国会合)合意に従い、開催された。
  3. セミナーの狙いは、今後将来に向けてグローバルな地球温暖化対策をいかに強化できるかにつき政府間で率直かつ突っ込んだ意見交換を行うことにあり、約200の参加国及びオブザーバーは積極的な態度でこれに参加した。
  4. わが国からは西村六善地球環境問題担当大使ほか竹本和彦環境省審議官、深野弘行経済産業省審議官等が参加。またわが国の小西正樹外務省参与(前地球環境問題担当大使)は、マレーシアと共に共同議長を務め、友好的な雰囲気の醸成と議論の活性化に貢献した。

II. 各国の発表

  1. わが国、中国、インド、米国、カナダ、英国、ブラジル、南アフリカ、ツバル、豪、メキシコ等、計26か国及び欧州委員会がプレゼンテーションを行った。
  2. わが国からは、4月28日に閣議決定した「京都議定書目標達成計画」に基づき、6%削減約束を達成することを表明するとともに、技術の開発への投資や、クリーン開発メカニズム(CDM)の見直しを通じた技術移転に対するインセンティブの重要性、主要排出国を含む長期的な排出削減努力の必要性、及び適応措置(洪水、干ばつ対策等)への支援を強調した。また、懲罰的でなく、全ての国が相互協力によって国際取り組みを前進させることを念頭に、現実的な対話を求めた。
  3. 途上国は主に、持続可能な開発を重視しつつ、将来に向けては「共通だが差異のある責任」の原則に則りさらなる国際協力を通じた技術移転(CDMの見直しなど)や資金供与及び気候変動の悪影響への適応が必要であることを強調した。
     欧州諸国は技術の開発・普及、投資の動員のための長期的な政策シグナル発信の必要性、気候変動と貧困問題やエネルギー安全保障等他分野の政策措置との連携につき強調した。
     また米は気候変動に関する独自の取組を紹介するにとどまった。

III. 評価

  1. 今回の政府専門家セミナーは、京都議定書の発効後、気候変動に対する中長期的な取組に関して、COP合意に基づき政府関係者が初めて意見交換と議論を行う画期的な機会となった。
  2. 会議の性格上合意文書は作成されないが(後刻条約事務局が議事録を作成予定)、次の点について概ね共通の認識が得られた。(1)気候変動が深刻な脅威であり、全ての国による対応が不可欠であること(2)各国は京都議定書の目標達成に全力を挙げる一方で、2013年以降の将来については全ての国が有効な措置をとる必要があること、及び(3)今後枠組条約の目標(温室効果ガス濃度の安定化)に向けて更なる前進が必要であり、そのために本年末のCOP11及びCOP/MOP1(京都議定書第一回締約国会合、於モントリオール)が重要な交渉の機会であること。
  3. 今後は、COP11に向けて2013年以降の取組について各政府間で議論が益々活発になることが予想される。わが国は、今回のセミナーを踏まえ、米国、中国・インド等の途上国も参加する実行ある将来枠組みの構築に向けて、国際交渉の場や、わが国がブラジルと共同議長の下に開催している「気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合」を通じて各国と協力していく。
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