
気候変動に関する非公式閣僚会合
~ 概要と評価 ~
平成20年10月14日
日本政府代表団
1. 会合の概要
(1)日程・場所
10月13~14日 於:ポーランド・ワルシャワ
(2)出席者等
参加国:約40の国及び地域(注:国名は末尾に記載)
議長:ノヴィツキ・ポーランド環境大臣
日本:古屋地球環境問題担当大使、竹本環境省地球環境審議官、有馬経済産業省審議官、赤堀農水省管理官 他
(3)会合の構成
13日及び14日午前の一日半で、本年末のCOP14(於:ポーランド・ポズナン)で目指すべき成果、来年末のCOP15(於:デンマーク・コペンハーゲン)に向けた道筋、共有のビジョンのあり方、さらには昨今の国際的金融危機と気候変動との関係等を中心に意見交換が行われた。
2. 議論の概要
(1)COP14で目指すべき成果
- COP14について、条約特別作業部会(AWG-LCA)議長のとりまとめ文書を基に本格的な交渉をスタートさせること、そのための来年の作業計画を作成することが重要な成果となるとの指摘が多くの国からあった。我が国からもこれらの指摘に加え、交渉を進展させるための政治的メッセージを発することが重要と主張した。さらに、途上国から資金や技術移転、適応基金の運用開始などが成果となりうるとの言及があった。他方、将来枠組みの交渉に関する事項はパッケージとして合意されるものであるため、COP14での成果とはなりにくい、来年の交渉においても、緩和、適応、資金、技術等を案件ごとに順次決着するのではなく、一体的に議論できるよう、作業計画に柔軟性を持たせるべきとの見解も示された。
- 共有のビジョンをCOP14における閣僚ラウンドテーブルで議論するとの考えに多くの国が賛意を示した。我が国からは、G8で合意された2050年の半減目標を紹介し、この長期目標を国連の場で採択することの必要性を訴えた。その他にも、様々な国から長期目標と中期目標、技術移転、資金などとの関係について言及があった。途上国からは長期目標を議論するためには先進国が野心的な中長期の目標に約束すると同時に、資金、技術援助を予見可能性のある形で行うことが前提であるとの見解が示された。
(2)COP15に向けた道筋
- 交渉の政治的なモメンタムを維持するためにも、来年半ばに非公式な閣僚会合を開催してはどうかとの提案があった。また、意味ある成果を生むためにも、主要国のリーダーシップが不可欠であるとの指摘があった。我が国からは、2つの作業部会を補完的に進めていくべきこと、産業界などを巻き込みながら議論を進めていくことなどを主張した。
- COP15での合意に向けて、途上国の差異化について検討することの重要性についても議論があった。我が国からは、先般条約事務局に提出した日本提案に基づき、途上国の差異化の必要性につき説明した。他の先進国からも、能力に応じて参加することの重要性を指摘する発言があった。他方、途上国からは、差異化に慎重な声もあった。
- セクター別アプローチについては、日本からその有用性について説明したことに加えて、いくつかの国から技術移転を進める上で有用、さらに重要な課題としてCOP14で議論すべきとの指摘があった。
- また、途上国の活動を支援する上で、資金的仕組みの検討、炭素市場の役割などについて議論された。
- 気候変動による悪影響に脆弱な国は、対策の喫緊性を再認識すべきと強調した。
(3)金融危機と気候変動
- 金融危機と気候変動問題については、多くの先進国及び途上国から、気候変動は長期的な課題であり、現在の金融危機によって対策が遅れるようなことがあってはならないとの認識が示され、気候変動対策のモメンタムを維持していくことについて一致した。
(4)COP14の関連会合
- 議長から、COP14の関連会合として11月27~28日にセクター別行動に関する産業大臣会合を、12月8~9日に財務大臣会合を開催するとの報告があった。
(5)主要国との二国間会談
- 我が国は、主要国(米国、EC、英国、デンマーク、ポーランド、インド、南ア等)との二国間会談を行った。会談では、先進国側から日本の差異化に関する提案について一定の支持が得られた。また、セクター別アプローチの有用性などについて意見交換を行った。
3. 評価
- 今次会合において、COP14はCOP15を成功させる上で重要なプロセスの一部であり、交渉を前進させるためにも政治的に前向きなメッセージを発するべきとの共通認識が得られたことは、有益な成果。
- 特に昨今の国際的金融危機が気候変動対策の障害とすべきでないとの点で一致したことは、今後の交渉のモメンタムを維持する成果として評価できる。
- 共有のビジョンについては、バリ行動計画に従って交渉を進める上で、重要な基礎となるものであり、COP14において閣僚間で議論することについて賛意が示されたことは重要。他方、途上国は、共有のビジョンの下で長期目標だけでなく、中期目標、資金、技術、適応など幅広い論点をとりあげるべきと主張し、今後、どのようにして議論を収れんさせていくかが課題。
- 途上国の差異化については、今次会合の明示的な議題ではなかったこともあり、支持する国と慎重な立場の国の双方から意見が示されたが深い議論はなかった。
- セクター別アプローチについては、全体会合に加え、バイ会談においても、その有用性に触れる発言があったことは有意義。また11月末の産業大臣会合でセクター別アプローチを議論し、その成果がCOP14に報告されることはセクター別アプローチに関する理解の更なる促進に貢献。
- 今後は、実効ある枠組みの実現に向けて、我が国の包括的提案について引き続き各国の賛同が得られるよう努めつつ、国際交渉において主導的役割を果たしていく。
(参考:参加国及び地域)
米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、ノルウェー、ドイツ、英国、フランス、デンマーク、スウェーデン、イタリア、オランダ、スペイン、チェコ、EC、ウクライナ、ハンガリー、スイス、アンティグア・バーブーダ、アルジェリア、アルゼンティン、バルバドス、ブラジル、バハマ、中国、コスタリカ、グレナダ、インド、インドネシア、モルディブ、メキシコ、フィリピン、韓国、サウジアラビア、シンガポール、南ア、タンザニア、ツバル