平成19年10月26日
日本政府代表団
10月23~25日、気候変動に関する非公式閣僚会合が、12月にインドネシア・バリで開催予定の気候変動枠組条約第13回締約国会議及び京都議定書第3回締約国会合(COP13・COP/MOP3。以下バリ気候変動会合という。)の準備会合として、約35か国の環境大臣他が参加して開催された。2013年以降の次期枠組みに関して、どのように検討を進めていくか、という事項に絞って、一日半集中的に議論が行われた。その結果、現行の京都議定書の下での検討の場に加えて、米も参加している気候変動枠組条約の下に新たな検討の場をバリにおいて立ち上げることに、参加国の意見が大方一致した。他方で、そのようにして立ち上げられる新たな場が、どういった内容を、また、どの程度深く議論するか(特に途上国の新たなコミットメントに関し)、さらに、2つのプロセスの関連性については、多様な意見が出された。
鴨下環境大臣は、議論の出発点の一つとなる提案を行うとともに、「美しい星50」をあらためて紹介し、明年の北海道洞爺湖サミットに向けての決意を表明した。また、この機会に中国及び英と二国間会談を行った。
(1)日程・場所
10月23日~25日、於ボゴール(インドネシア)
(2)参加
日本、米、加、豪州、ニュージーランド、ロシア、ノルウェー、スイス、ポルトガル(EU議長国)、EC、独、英、仏、デンマーク、ポーランド、スウェーデン、伊、パキスタン、中国、印、ブラジル、メキシコ、南ア、韓国、パプア・ニューギニア、越、マレイシア、シンガポール、アルゼンチン、ケニア、ナイジェリア、タンザニア、モルディブ、サウジアラビア及びインドネシア(主催)の約35か国。我が国よりは、鴨下環境大臣、小町地球環境問題担当大使、大江外務省国際協力局参事官、伊藤経済産業省審議官、谷津環境省審議官、皆川林野庁次長の他、外務、経済産業、環境及び林野の各省庁が参加した。
(3)23日の夕食会の後、24日及び25日午前の計一日半で、大きく分けて、次期枠組みの構成要素(Building Blocks)と、それら構成要素をどう実現するか(場の位置づけ)、について議論を行った。
(1)構成要素
あり得べき構成要素として、長期対話〔注1〕の共同ファシリテイター(議長)から、4回のワークショップを通じて、次期枠組みの構成要素として、緩和、適応、技術並びに投資及び資金の4項目を中心に議論された旨報告があった。これに対し、多くの国が4つの構成要素の重要性について賛意を示す一方で、さらに付け加えられるべき要素として、我が国から9つの要素( 1)グローバルな排出削減の長期目標、2)市場アプローチを含む緩和の政策措置、3)技術の研究開発、普及及び拡大、4)エネルギー効率、エネルギー安全保障及びコ・ベネフィット〔注2〕、5)温室効果ガスの目録〔注3〕、6)森林、7)適応、8)資金、並びに 9)国際競争力の観点からの衡平な負担分担)を提案した。その他にも、特に強調されたり、加えられるべきとされた要素として、クリーン技術、国際航空・海運からの排出、対応措置〔注4〕、SD-PAM〔注5〕等が挙げられた。
〔注〕
(2)新たな場の位置づけ
(イ)多くの国が、条約の下で、現在の長期対話を、より正式な場に転換、または、新たな交渉の場を立ち上げることを支持し、明示的な反対は示されなかった。
(ロ)我が国は、2013年以降の枠組み構築のため、米、中、印等の主要排出国が参加して、単なる対話ではなく、交渉を行う場(アドホック・ワーキング・グループ(AWG))をバリにおける気候変動会合において条約の下に立ち上げ、そこで長期目標や緩和対策等について議論することを提案した。
(ハ)条約の下での新たな正式な場と、現在の京都議定書の下での交渉〔注6〕を当面並行して行うとの、いわゆる2トラックのアプローチに多くの支持が集まったが、条約の下での新しい場においては、あくまでも現在の条約で定められている義務以外は交渉すべきでないとの意見、他方で、主要排出国が参加する実効性のある枠組みについての議論を行うべきである等の意見等が出された。また、2つのトラックが相互にいかに関連を持って進められるべきかについても複数の意見が表明された。
〔注〕
(ニ)我が国は、条約の下での議論、及び、京都議定書の下での議論の双方を、総合的に議論することが理想的であるが、そのような場の実現は実際上困難があると考えられるので、当面は、2トラックを並行して、将来的な統合を視野に入れつつ相互に関連付けながら議論することを主張した。
(ホ)また、新たな場は、2009年までに結論を得ることを目指すべきであるとの意見がほぼ共有された。
(へ)鴨下環境大臣よりは、新たな場についての提案の他、日本は来年のG8議長国として、次期枠組み構築に関してリーダーシップを発揮したいと考えている旨、また、世界全体が共有すべき戦略として、本年5月に発表した「美しい星50」を説明し、さらに、気候変動対策上重要な課題である、途上国における森林減少からの排出の削減対策のため、我が国が世銀の森林炭素パートナーシップ基金に1千万ドルを拠出することを決定したことを紹介し、今後森林分野の協力の経験・知見を活かし、同パートナーシップの運営に積極的に貢献していく旨表明した。
(1)次期枠組みのあり得べき姿に関し、率直な議論が行われた結果、参加国の間で、次期枠組みについて検討する正式な場を、バリ気候変動会合において開始するべきとの点で、ほぼ共通の理解が得られた。同時に、新たな場の位置付けやそこで議論する内容について、まだ調整を要する点が特定されたので、バリにおいてさらに議論をつめていくこととなった。
(2)我が国は、具体的に2013年以降の枠組み構築のため、米、中、印等の主要排出国が参加して、単なる対話ではなく、交渉を行う場として新たなAWGをバリにおいて条約の下に立ち上げ、そこで長期目標や削減対策等について検討することを目指した提案を行った。これに対して、技術、コ・ベネフィット等の個別の点への言及がなされた他、好意的なコメントを含め、いくつかのコメントがあった。我が国の提案は、交渉のあるべき姿にも言及したものであり、引き続き各国の賛同が得られるよう努めつつ、主導的役割を果たしていく必要がある。