地球環境

緑の気候基金設計のための移行委員会第2回会合 結果概要

平成23年7月15日

 7月13日及び14日,カンクン合意で設立が決定された緑の気候基金の制度設計を行う移行委員会第2回会合が,日本政府と国連大学の共催の下,国連大学にて開催されたところ,概要は以下の通り。また,本会合に先立つ12日には気候変動分野の既存の基金について特徴及び問題点等について議論するワークショップ及び適応分野における民間資金の動員の方策に関するサイドイベントが行われた。

1.概要

  1. (1)移行委員会第2回会合は,トレバー・マニュエル大統領府国家計画担当大臣(南アフリカ),コルデロ・アロヨ大蔵公債大臣(メキシコ)及びヒューティル・ルンド財務副大臣(ノルウェー)の3共同議長の下,移行委員会のメンバー国40か国,国連機関,国際開発金融機関,民間企業及びNGOなど約250名が参加した。我が国から移行委員会メンバーである石井副財務官他,財務・外務・経済産業・国土交通・環境各省,JICA,JBIC関係者が出席した。
  2. (2)13日の会合冒頭に伴野外務省副大臣から,気候変動問題を解決するためにはすべての主要排出国を含む包括的な一つの枠組みが必要であるが,その枠組みの下で取組の実施を資金面で後押しするのが緑の気候基金であり,移行委員会を通じた設計プロセスに積極的に貢献していきたい旨述べた。また,野田財務大臣から,緑の気候基金は既存基金との差別化を図りその付加価値を明確に説明できる設計とすべき,受益国が基金設立後に資金を迅速に利用できるための制度強化・能力強化が重要であり,その支援を積極的に行っていく,基金への貢献がこれまでの各国の貧困削減支援を弱めないことが重要である旨述べた。
    伴野外務副大臣冒頭挨拶
  3. (3)移行委員会第2回会合においては,基金の目的・原則,ガバナンス,運用形態,評価方法について議論が行われ,今次会合で表明された各国の意見や今後の書面での意見提出をふまえ,共同議長及び共同ファシリテーターがCOPへの報告書案を作成し,9月の第3回会合(9月11~13日,ジュネーブ)で議論することとなった。

2.移行委員会

  1. (1)手続き事項
     第1回会合の積み残しの議題であった副議長選出について,議長より,関係国間の協議の結果としてシンガポールおよび豪州が提案され,異論なく了承された。
     作業枠組みについては,途上国より,コンセンサスの定義を明確にすべきこと,移行委員会の事務局を務める技術支援ユニットに世銀関係者が含まれていることは,世銀が緑の気候基金の暫定的なトラスティを務めることとの関係から利益相反に該当するとして,何らかの措置が必要であるとの意見があった。これに対して,同様な問題は世銀のみならず技術支援ユニットに加わっている国連チームやさらには交渉に参加している途上国政府にも該当する問題である,世銀から派遣された職員の公平性,独立性は十分に担保されているとの反論が出され,本件については引き続き議論されることとなった。
  2. (2)第1作業部会(範囲,原則及び分野横断的問題)
     主として基金の位置づけ,原則,目的,範囲,基金がカバーする費用負担の範囲,ウィンドウ(基金内部に設置される資金の出入口)等について議論が行われた。先進国側より,実務的な基金とすべき,民間資金へのレバレッジが重要,2度目標実施のための基金とすべき,途上国の抱える貧困削減,開発目標とのシナジーをはかるべき等の意見,途上国側より,共通だが差異ある責任や途上国のオーナーシップを重視すべき,ウィンドウについて緩和・適応間のバランスが重要,資金源は予測可能なものでなければならず公的資金を重視すべき,特に脆弱国向け支援を重視すべきなどの意見が出された。
  3. (3)第2作業部会(ガバナンス,制度的枠組)
     先進国側から,現時点では基金に法人格を付与するのは不要(又は要検討),基金はCOPの権威の下に置かれるべきではない,理事会は先進国,途上国それぞれで選出すべきなどの意見が出された。途上国側から,途上国が基金に直接の資金アクセスができるようにするため等の理由から,基金に法人格を付与すべき,国連のガバナンスを参考にすべき,理事会は地理的にバランスのとれた議席配分とすべき,ウィンドウについては様々な意見が出されたが,まずは各国間で共通理解のある緩和・適応からはじめ,追って付加する方式をとるべきとの意見も出された。
  4. (4)第3作業部会(運営形態)
     民間資金の動員の重要性に関しては概ね認識は一致したが,資金源として公的資金が中心であるべき,民間資金の動員の方策については民間セクターの知見も活用しつつ具体的に議論を行うべきとの指摘があった。また,資金の拠出方法について,無償資金に限定すべきとの意見や他の選択肢も排除する必要はないとの意見があった。また資金アクセスの方法として途上国が実施機関を経由せず直接アクセスする方法(ダイレクト・アクセス)について多くの国が重要である旨指摘しつつも,いかなる方法論で行うべきか各国から様々な意見が出された。
  5. (5)第4作業部会(モニターと評価)
     既存の基金のモニター・評価方式も参考にしつつ議論が進められた。評価については実施機関自身で行うことや第三者機関に任せるべき,各国の開発政策との関係を評価すべき,別途設立に向けて交渉中の常設委員会が評価を行うべきなど意見が出された。

3.事務局主催のワークショップ

 本ワークショップにおいては,地球環境ファシリティ(GEF),気候投資基金(CIF),国際開発協会(IDA),モントリオール議定書多国間基金及び適応基金など既存の基金の特徴や問題点について意見交換が行われた。特に,基金への法人格付与問題,基金理事会の意思決定方式(コンセンサス方式か投票方式か),民間資金の動員方法,NGOの参加形態,緑の気候基金ができたときの他の基金との役割分担,途上国における国内調整プロセス,基金へのアクセス問題(地方政府レベルのアクセス),途上国のオーナーシップをいかに高めるか等について議論が行われた。

4.外務省主催のサイドイベント

 緩和分野と比較して民間資金の動員が難しいといわれている適応分野において,現在事業を展開ないし計画しているJICA,JBIC,日本企業(天候インデックス保険について損保ジャパン,水分野においてオリックス),国連大学,世界銀行から,官民連携の取組事例や能力構築に向けた教育などそれぞれの取組が紹介され,移行委員会への有益なインプットとなった。

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