地球環境

気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)
京都議定書第4回締約国会合(COP/MOP4)等
(12月1~12日)
-概要と評価-

平成20年12月13日
日本政府代表団

I.全体の概要

  1. 気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)・京都議定書第4回締約国会合(COP/MOP4)を始めとする一連の国連気候変動関連会議は、12月1日~12日の日程で、ポーランドのポズナンで開催された。我が国からは、斉藤鉄夫環境大臣、西村六善内閣官房参与、古屋昭彦外務省地球環境問題担当大使、鈴木正徳経済産業省産業技術環境局長、竹本和彦環境省地球環境審議官他が出席した。
  2. 2013年以降の枠組みについては、昨年のバリでのCOP13で条約の下に設置された特別作業部会(AWG-LCA)と、京都議定書の下の特別作業部会(AWG-KP)において、2009年末の合意に向けて、2009年の作業計画、共有のビジョン等に関する議論が行われた。
  3. 斉藤環境大臣は、閣僚級会合に出席し、長期目標の共有、セクター別アプローチ、国の経済発展の段階等に応じた行動の必要性(差異化)等の我が国の立場を説明するとともに、金融危機下においてこそ気候変動の対策を経済成長のバネとすべきとの主張を行った。また、米国、中国、欧州委員会、ポーランド、デンマーク、スウェーデン、英国、南アフリカの計8か国・地域及び米国ケリー上院議員との間で会談を実施し、我が国の立場を説明するとともに各国との協力等につき意見交換した。
  4. ポーランド経済省が主催した産業大臣会合には、各国の産業担当大臣(我が国からは谷合経済産業大臣政務官が出席)、産業界関係者等が参加し、セクター別アプローチの有用性について理解を深めた。本会合の成果として、産業界を含めた意見交換の場として「ワルシャワ対話」が立ち上げられ、この一環として我が国が3月に開催するセクター別アプローチに関するワークショップの提案が歓迎された。
  5. ポーランド財務省が主催した財務大臣会合には、各国の財務大臣、グリアOECD事務総長等が参加し、我が国からは三ツ矢財務大臣政務官が出席した。

II.主な成果と概要

1.2013年以降の枠組みについて主に以下の2つの場で議論が行われた。

(1)条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第4回会合(AWG-LCA4)

 「共有のビジョン」「リスク・マネジメント」「技術研究開発協力」の3つのワークショップが開催され、我が国からも「共有のビジョン」及び「技術研究開発協力」のワークショップで基本的考えを発表し、G8議長国としてG8の合意である2050年までに世界全体の排出量を少なくとも50%削減するという長期目標の共有や革新的技術開発の国際連携の必要性を主張した。バリ行動計画の5つの構成要素(共有のビジョン、緩和、適応、技術、資金)につき各国の意見交換が行われるとともに、各国の見解を議長がとりまとめたペーパーが作成された。

 来年本格的な交渉に入ることを踏まえ、議長に対し、第5回会合(2009年3~4月)での検討用に、主要論点を整理した文書を作成すること、またこれを踏まえ第6回会合(同6月)の検討用に交渉テキストの作成を要請する等の作業計画が策定された。

(2)京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会第6回再開会合(AWG-KP6.2)

 1)附属書I国の削減ポテンシャル・削減幅、2)附属書I国の更なる約束の検討、3)附属書 I 国が排出削減目標を達成する手段の分析(議定書の下での柔軟性メカニズム、土地利用・土地利用変化及び林業部門(LULUCF)、対象とする温室効果ガス等)等、4)附属書 I 国がとる政策・手段等による環境・経済・社会面での潜在的影響(波及効果)、5)2009年の作業計画に係る議論が行われた。

 先進国の削減ポテンシャル及び削減幅についてはワークショップが開催され、我が国から、1)先進国の目標を決定するためには世界全体の必要削減量と削減ポテンシャルを考慮する必要があること、2)先進国間の比較可能性が重要であることなどを主張した。先進国の削減幅に関する結論文書では、「IPCC第4次評価報告書が『最も低い濃度水準を達成するためには附属書I国全体として2020年までに1990年比25~40%削減が必要』と指摘していることを認識する」という昨年12月のバリ会合での結論を再確認した。

 柔軟性メカニズムについては、会合直前に事務局より各国の提案をまとめたものが配布されたが、その包括性、位置づけを巡り議論が行われ、各国が柔軟性メカニズムの改善点に関する追加の意見を述べることとなった。

 LULUCFの取扱については、我が国より、森林経営以外の議定書3条4項活動(農地管理、植生回復等)についても議論を早急に開始すべきこと、また、これらの活動について、国や地域によって異なる多様な手法を考慮すべきこと、将来枠組み全体の議論との議論の整合性を図るべきこと等について主張した。来年3月の第7回会合以降、森林以外の3条4項活動も含め、算定オプションに関する議論を継続することで一致した。

 波及効果については、検討対象としてその否定的・肯定的影響双方について考慮すること等につき議論された。

 2009年の作業計画については、附属書I国全体の削減レベル、国ごとの削減レベルに加え、約束期間、基準年を含む数量削減目標のあり方、削減ポテンシャル等につき各国の意見提出などを踏まえ検討していくことで合意した。また、附属書I国全体の削減レベル及び国ごとの削減レベル等については、締約国や国際機関からの関連する技術的な分析結果を受けて、3~4月の次回会合中またはその前にワークショップを開催することとなった。また、締約国間で情報交換を行うことが奨励され、締約国が開催するワークショップも活用することとされた(なお、我が国は来年3月にワークショップを開催することを会合において紹介した。)。

2つの特別作業部会について、来年は4回8週間の会合が予定されているが、追加的会合の必要性については引き続き検討することとなった。

2.個別議題

(1)京都議定書第9条に基づく議定書の第2回見直し(9条レビュー)

 適応原資(JI及び排出量取引への課金拡大)、附属書B改正手続、特権免除、京都メカニズムの改良、悪影響の最小化等につき議論された。適応原資に関し、資金調達の在り方全体の検討の中で議論すべきとする先進国と、今次会合でJI及び排出量取引への課金拡大を決定すべきと主張する途上国の間で意見がまとまらず、第2回9条レビュー全体がパッケージとして結論なしとして終了することとなった。

(2)技術の開発及び移転

 技術移転促進のためにGEFが作成した「戦略プログラム」がCOPにおいて歓迎され、早期の実施を求めることで一致し、「ポズナン戦略プログラム」と名付けられた。また、条約4条1(c)及び5に基づく技術移転の実施状況のレビューをCOP15で行うことで合意し、これに向けて各国及び関連機関から意見提出を求めることとなった。さらに、技術移転に関する専門家グループ(EGTT)において検討中の技術移転の進捗の指標等については、AWG-LCA第5回会合へインプットすることとなった。

(3)適応

 途上国支援のための基金として、2001年のCOP7で設立が合意された京都議定書の下での適応基金についてはCOP/MOP3で組織の骨格(理事会、事務局等)が合意されるとともに、基本的な業務規則案を適応基金理事会がCOP/MOP4に対して提出することを求めていた。今次会合においては当該規則案と今後の運営方針につき議論が行われ、合意に達した。今後、適応基金理事会が詳細な業務規則等を検討する予定。

 適応に関するナイロビ作業計画については、今までの実施から得られた情報と助言が提供され、専門家グループの設置についてはSB32において引き続き検討することとなった。

(4)京都メカニズム

 CDMに関しては、各国より制度改善に関する事項が提案された。特にCDM理事会をはじめとした組織体制の在り方、CDMプロジェクトの地域偏在改善に関する論点を中心に議論が行われた。CDMにおけるCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の活用については、今後CDM理事会にてその影響を分析することとなった。

 また、黒木昭弘氏(財団法人日本エネルギー経済研究所)がCDM理事会メンバー、工藤拓毅氏(財団法人日本エネルギー経済研究所)がJI監督委員会メンバーとして選出された。

(5)森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)

 次期枠組みの中に位置づけるため、本年6月の東京ワークショップなどにおける方法論的課題の検討成果についてCOPに報告するとともに、これらの成果を踏まえ、未解決の方法論的課題(森林面積や炭素変化量の基準の考え方・推計方法など)の解決に向けたCOP15までの検討スケジュール等について一致した。

 なお、12日午後、我が国を含む関心国20か国から、REDDの取組みの強化に関する閣僚級共同声明を発表し、斉藤大臣が署名を行った。我が国からは、共同声明の発表の場において、今後各国の協力の下に、信頼性ある測定・報告・検証の仕組みを構築する必要性について強調した。

(6)国際航空・海運からの排出

 国際航空・海運からの排出については、AWG-KPの2009年作業計画の中で、議定書の枠組みを踏まえて、引き続き議論を行うこととなった。

(7)研究及び組織的観測

 GCOS実施計画に基づく地球観測衛星委員会(CEOS)における進捗状況及び全球陸域観測システム(GTOS)における陸域の気候必須変数の標準化の検討状況について報告が行われた。これらは次回のSBSTA30においてGCOS実施計画の進捗とともに評価することとされ、各国に対してGCOS実施計画の進捗状況の提出が促された。

III.評価

(1)今次会合は、国際的金融危機のなかにあっても気候変動問題に積極的に取り組んでいくという各国の強い決意の下で議論が行われた。我が国は、北海道洞爺湖サミットの議長国としてその成果を国連における成果につなげるべく長期目標の共有を訴え、またセクター別アプローチの考え方、国を経済発展段階等により分類する(差異化)や、発展段階に応じて上位の分類に移行する仕組み(卒業)等について各国の賛同を得るべく議論に積極的に参加した。

(2)附属書Ⅰ国の削減目標の検討に関しては、IPCC等の科学的知見及び削減ポテンシャルやコストなどの要素に基づくべきとの日本の考えが反映された結論文書が採択された。

(3)今回の合意で、適応基金を用いた途上国支援の基本的条件が整ったことは今次会合の成果。

(4)今次会合で作業計画を策定し来年の交渉の道筋を示すことができたこと、2013年以降の国際枠組みに対する各国の見解について幅広い議論を真剣に行ったことは、来年の交渉の準備として有益なものとなった。我が国としては、すべての主要排出国が責任ある形で参加する実効性ある2013年以降の国際枠組みを来年のコペンハーゲンでのCOP15で合意することを目指し、引き続き積極的に国際交渉に貢献していく考え。

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