
違法伐採専門家国際会議(概要と評価)
(3月5~6日、於:三田共用会議所)
平成19年3月7日
議長サマリー(英語)(PDF)
1.会合の概要
本件会合は、日本(西村外務省・地球環境問題担当大使)とインドネシア(サルマン外務省経済開発・環境局長)の共同議長の下、世界の主要木材生産国・消費国政府(合計17カ国及びEC)の政府及び国際機関等の違法伐採問題に関する責任者計55名の参加を得て行われた。
各国の政府レベルでの違法伐採対策に係る今後の取組に関し、率直で自由な発言を促すため、発言内容は必ずしも公式の見解ではないとの前提で意見交換を行った。
2.議論の概要
(1)違法伐採対策に係る取組の現状
- 違法伐採は、様々な主体が関与する複雑な問題であるとともに、森林減少、政府歳入の減少、持続可能な森林経営に対する負のインセンティブを与えるものであること等の悪影響をもたらす深刻な問題であることが再認識された。
- 違法伐採問題を考える上では、統計のみを額面通りに受け入れるのではなく、現状を正確に評価する必要があるとの指摘がなされた。
- 違法伐採に対処するための戦略は、持続可能な森林経営というより広い文脈で考慮されるべきとの意見があった。
- 違法伐採問題への対処に関して、市場メカニズムに基づくアプローチを支持する意見と関係する機関の強化を重視すべきとの意見の相違が見られた。
(2)各国間の協力
- 違法伐採対策へのアプローチに関し、多くの参加者より、地域的プロセスの重要性を認めつつも、木材・木材製品が世界的レベルで取引されている点を考慮に入れれば、世界的アプローチも有用、地域的プロセスには多くの初期投資と継続的な取り組みが必要、との発言があった。また、本件会合のような場が、違法伐採問題に世界的に対処するための青写真を描く上での一歩となりうるとの指摘があった。
- インドネシアで見られる国内木材価格の上昇に関して、国内で森林法施行がうまくいっているとの兆候を示すものと考える意見が出される一方、木材価格の上昇が違法伐採を誘発するインセンティブになるのではないか、との懸念も示された。
- 違法伐採問題に対処するための二国間協力に関しては、特定の問題に対処する上で有意義との意見が出された。一方、インドネシアが様々な国と行っている二国間協力については、その内容や有効性等につき検証されるべきとの意見も表明された。
(3)政府調達制度
- 政府調達制度の影響評価を行うことは、各国の取り組みから教訓を得ることができる点から有用との意見が出された。また、既存の政府調達制度の強化及び他の主要な消費国も同様の制度を導入する必要がある点が強調された。
- 政府調達制度の課題として、モニタリングの重要性、合法性・持続可能性の確保を業界に強く依存していること、木材の合法性・持続可能性を証明するための費用発生によって、他の原料に切り替えられる可能性があること等が指摘された。
(4)合法/持続可能な方法で伐採された木材・木材製品の貿易促進
- EUがFLEGT(Forest Law Enforcement, Governance and Trade)の下、木材生産国との間でVPA(Voluntary Partnership Agreement)交渉を開始したことを歓迎しつつ、消費国間同士でも同様の制度を構築すべき、との意見が出された。これに対し、消費国間同士では違法伐採木材が取引される危険性は低く、優先度は低いとの考えも示された。また、多国間による証明制度構築は現時点では非現実的との見解も示された。
- VPAによる証明制度のWTO整合性に関し、EUの想定している制度はVPAという二国間協定を通じてその国からの木材のみが取引の制限対象となる、との説明があった。但し、証明制度については、これまではWTOで争われた事案はないことも付言された。
- FLEGTでは合法性の定義が記述されていない点に関し、合法性の定義については、様々な要素が考慮されるべきであること、また各国の多様な文化・価値の差異を反映して策定されるべきであるとの認識が共有された。
- VPAについては、EUが木材生産国のガバナンスの改善及び対話を促進するためのパートナーシップととらえる意見がある一方、FLEGTは、木材納入業者が合法性を証明することによってプレミアムを期待することができる仕組みになっており、一義的には貿易措置ではないかとの意見も表明された。
- 多くの参加者の間で、森林認証は違法伐採問題を解決する万能薬ではないが、持続可能な森林経営の証明や合法性の証拠として活用することは有用である点で見解が一致した。他方、世界全体における認証材の総量等のデータ整備の必要性、認証に必要な費用に関する問題点が指摘された。
3.評価
- 本件会合は、地域の枠を超えて、世界の主要木材生産・消費国政府及び国際機関関係者が一堂に会し、違法伐採問題を議論する初の機会を提供した。
- 違法伐採対策をめぐる各国の協力やVPAによる証明制度、森林認証制度の有効性等につき、参加者より活発な意見交換がなされた。また、違法伐採問題に関しては、引き続きG8プロセスでの議論が行われるべきとの認識が得られた。
- 今回の会議の成果を基に、明年初頭に第2回会合を開催し、議論を掘り下げ、その成果を日本サミットに報告すべく今後調整していくこととなった。
- わが国としては、気候変動問題の文脈で、吸収源としての森林の重要性に対する関心が高まりつつある中、わが国としても、引き続き国際社会の場において違法伐採問題に関する議論を主導していくとともに、国内における取り組み及び生産国による違法伐採対策に向けた努力に対する支援を継続していく考え。
Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータのOS用のソフトウェアを入手してください。