軍縮・不拡散
第1回ワシントン核セキュリティ・サミットにおけるナショナル・ステートメント(骨子)
平成22年4月12日
(日本語・英語)
1.総論
- 我が国は、唯一の被爆国であるとともに、資源小国として、発電の約3割を原子力発電で賄っており、核軍縮、核不拡散、原子力平和利用のいずれも重視。積極的な役割を果たす。
- 現在、「原子力ルネッサンス」の下、約60ヵ国が原発新規導入を検討しているほか、核軍縮の将来的な進展に伴い、防護の対象となる核物質の量が飛躍的に増加する見込み。核解体、原子力の平和的利用を進める上で、核セキュリティの確保が重要。
- 「4年以内に脆弱な管理下にある核物質の管理を徹底する」とのオバマ大統領のイニシアティブを支持。
2.核テロの脅威
- 9.11米国同時多発テロ事件以降、国際社会によるテロ対策は一定の前進。他方で、世界ではテロ事件は多発しており、テロ発生の懸念は依然高い。我が国も、「地下鉄サリン事件」を経験。テロの脅威について絶えず警鐘を鳴らすことが重要。
- 近年、テロリスト活動はネットワーク化しており、核セキュリティの強化は、国際社会が全体として取り組むべき重要かつ喫急の課題。今次サミットで47ヵ国の首脳が結集した意義は大きい。
3.国内措置
- 核物質の管理徹底は、一義的に国家の責任であるので、核物質防護について実際の適用を行う産業界の意識向上が必要。
- 我が国は、核セキュリティ強化のため、特に9.11以降、以下の措置を実施。
- (1) 原子力施設の警備体制の強化(発電所などを陸海共24時間体制で警備)
- (2) 核物質防護体制の強化(最新の国際基準に沿った防護措置を取るべく、国内法令を改正)
- (3) 核テロ防止条約の締結(核テロの犯罪化)
- (4) テロ対策技術の開発(核物質探知等の技術開発を開始)
- (5) 放射線源の管理の強化(放射線源登録制度導入のため、国内法令を改正)
- (6) 研究炉の低濃縮度化の進展(米国起源の高濃縮ウランを米国に返還)
- (7) 核物質・放射性物質の輸出管理強化(試験的に横浜港でコンテナ内の放射性物質の検知を行う、メガポート・イニシアティブを実施)
4.国際措置
(1) 我が国のこれまでの取組
- テロリズムは国境を越えて国際ネットワーク化。従って国際社会全体の取組が不可欠。
- このため我が国は、1)国際的なルールの作成と普遍化、2)人材育成を含むキャパビルの強化、3)専門家、実務者間のネットワークの構築、4)先進技術の開発を重視し、主に以下の国際協力を実施。
- (イ) 核物質防護条約等、国際規範の普遍化に向けた取組
- (ロ) 安保理決議1540号の履行促進(非国家主体による大量破壊兵器を使ったテロへの対応)
- (ハ) 「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」への参加(各国の経験の共有。)
- (ニ) アジア地域等におけるキャパビルとネットワークの構築(アジア諸国における核セキュリティ強化のための国際会議の開催等)
(2) 今後の取り組み(今次サミットに際して発表するイニシアティブ)
(イ) アジアの核セキュリティ強化のための「総合支援センター」の設置
- 本年、日本原子力研究開発機構に、アジア諸国を始めとする各国の核セキュリティ強化のためのセンター(「アジア核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(仮称)」)を設置。人材育成、キャパビル、人的ネットワーク構築に貢献。
(ロ) 核物質の測定、検知及び核鑑識に係る技術開発
- 核物質計量管理の高度化に資する測定技術や不正取引等された核物質の起源の特定に資する核検知・核鑑識技術の開発に関し、日米で研究協力を実施。今後、3年後を目途に、より正確で厳格な核物質の検知・鑑識技術を確立し、国際社会と共有することにより、国際社会に対して一層貢献。
(ハ) IAEA核セキュリティ事業への貢献
- IAEAの核セキュリティ事業に対して一層の財政的・人的貢献を実施。当面、 IAEAと協力して、計610万ドルの支援事業の実施を検討すると共に、 IAEAに専門家の派遣も実施。
(ニ) 世界核セキュリティ協会(WINS)会合の本邦開催
- 核セキュリティの重要性についての産業界の認識の向上に貢献すべく、ベスト・ プラクティスを共有するため、WINSの国際会議を本年中に日本で開催。
5.IAEAの役割
- 核セキュリティ強化のためのIAEAの活動(規範作成、包括的なレビューの実施、人材育成、キャパビル等)を支持。IAEAにおける必要な人材、財源等の確保が重要。
- 我が国は、IAEAによるガイドラインの作成等に積極的に参加するとともに IAEAと協力して、旧ソ連諸国やアジア諸国における核セキュリティ強化のための諸事業を実施。今後とも、IAEAの事業に積極的に貢献する所存。