
G20カンヌ・サミット最終宣言【骨子】
“我々の共通の未来の建設:全ての人の利益のための新たな集団的行動”
平成23年11月4日
世界経済が直面する喫緊の課題に対処するため,行動と政策を調整することにコミット。
雇用及び社会的保護の促進
- 若年者の雇用に焦点。雇用についてのG20タスクフォースの設置を決定。社会的保護の床への投資と,グローバリゼーションの社会的側面の強化を決意。B20とL20サミットを歓迎。9月に行われた労働雇用担当大臣会合の結論を承認。来年再び会合することを求める。
より安定的かつ強じんな国際通貨システムの構築
- 資本フロー管理の結論と現地通貨建て債券市場の発展・深化の行動計画を採択。
- 為替の柔軟性向上,通貨の競争的切り下げを回避するコミットメントを確認。
- SDRの構成通貨要件は,通貨の役割・特性を反映し調整すべき。2015年以前に構成の見直しを期待。
- ユーロ圏の包括的計画を歓迎,迅速な具体化と実施を要求する。ユーロ圏が信認と金融の安定の回復に向けて自らのあらゆるリソースと能力を投入する決意を歓迎。
2009年以来既に実質的な資本が動員されていることを踏まえ,IMFが全加盟国の利益のために資本を持ち続けることを確保する。時宜に適った方法で追加的な資金を確保するとともに,IMFへの二国間の貢献,SDR,IMFの特定の構造のための自発的貢献を含む,様々な選択肢を次回の財務大臣会合までに検討するよう財務大臣に指示する。2010年のIMFのクォーター改革等を完全且つ早急に実施する。
- グローバルな資金セーフティ・ネットの更なる強化に合意。IMFが提案した予防・流動性ライン(PLL)と,単一の緊急ファシリティを支持。サーベイランス強化に向けた取組みの改善を歓迎。IMFに対し,為替レートの評価を引き続き改善し,その評価を適切に公表することを要求。
- 各国・地域に対し,バーゼルII,II-5,IIIの自己資本と流動性基準を実施するコミットメントの達成を要求。店頭デリバティブ市場の改革は,強じんな金融システムのため重要。外部信用格付への依存低減のコミットメントを再確認。金融規制改革のモニタリング強化に合意。
- グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)のリストを本日公表。シャドーバンキング・システムへの規制・監視を強化。G20スタディ・グループの報告を歓迎。商品デリバティブ市場規制と監督に関するIOSCOの報告書と共通原則を承認。金融消費者保護のハイレベル原則を承認。単一で質の高い国際的な会計基準を実現に向けた目標を再確認。
- グローバル・フォーラムに対し,レビューの進捗を要請。次回サミットで確認。不備を是正。租税情報交換を継続。多国間税務執行共助条約への参加を奨励。金融安定理事会(FSB)の作業につき,非協力的な国・地域に必要な行動をとるよう求める。FATFのリストに関し,不十分な国・地域に対策強化を促す。FATFとOECDに法人格のある事業体の濫用を抑止する更なる作業を求める。
- FSBには法人格とより自立した財政を含む必要な組織基盤を与えるべき。運営委員会には,重要な関係者が含まれるべき。他の基準設定主体との調整を強化。次回サミットでレビュー。
食料価格変動への対処・農業生産及び生産性の増大
- 水,食料及び農業に関する共同行動計画の完成と実施報告を国際開発金融機関(MDBs)に要請。農業生産性の研究・発展に投資。
- 「農業市場情報システム(AMIS)」と「世界農業地理モニタリング・イニシアティブ」を立ち上げ。農産物に関する金融市場の規制・透明性は,現物市場の機能改善及び危機管理の鍵。
- リスク管理手段の発展を通じ,過度の食料価格変動を緩和。WFPが人道目的で購入する食料への輸出制限等を撤廃,年末の閣僚会合で宣言の採択を慫慂。「迅速対応フォーラム」を立ち上げ。
エネルギー市場の機能向上
- 市場の透明性を改善。共同石油データ・イニシアティブ(JODI)の適時性等を向上。証券監督者国際機構(IOSCO)に財務大臣への提言を準備するよう要請。
- 非効率な化石燃料補助金の段階的廃止を再確認。国別の進捗報告書とIEA,OPEC,OECD,世銀の共同報告書を歓迎し,財務大臣に来年報告することを要請。
クリーン・エネルギー,グリーンな成長及び持続可能な開発
- 低炭素開発戦略を推進。クリーン・エネルギー技術の革新及び展開の促進政策を奨励。
気候変動に対する闘い
- 気候変動に関するダーバン会議の成功にコミット。カンクン合意の実施と全ての交渉分野で更なる進展を要請。緑の気候基金の実現を支援する用意あり。
- 先進国は,コペンハーゲンにおいて,途上国支援のため,2020年までの年間1000億米ドルの動員にコミット。革新的資金源を含む官民等の幅広い種類の資金で構成されることを再確認。
貿易
- 保護主義を抑止し,多角的貿易体制の価値を強調。2013年末までに新規の輸出規制を含むスタンドスティルのコミットメントを再確認。新たな保護主義的措置を是正。WTOに対し,状況監視を要請。
- 従来通りの取組では,ドーハ開発ラウンド(DDA)の目的を達成しないことは明白。2012年の間に斬新で信頼性のあるアプローチが必要。来る閣僚会合でそのようなアプローチにつき議論するよう,閣僚に指示。メキシコ・サミットに報告を求める。
- WTOの強化を支持。本年末までにロシアがWTOに加盟することを期待。
開発
- 閣僚会合を初開催。食料安全保障,インフラに焦点。地域の緊急人道食料備蓄(ECOWAS及びASEAN+3)や,熱帯農業プラットフォーム,農産物価格リスク管理手段を支持。責任ある農業投資の原則(PRAI)を支持。
- ハイレベル・パネル(HLP)の報告書とMDBs行動計画を歓迎。MDBsに11プロジェクトの実施を要請。送金費用を2014年までに5%削減。金融包摂報告書の提言を支持。
- 途上国の国内資金動員を支持。先進国の援助コミットメントは達成されるべき。ゲイツ氏の革新的な財源の選択肢を議論。一部の国における開発支援のための金融セクターへの課税(金融取引税)のイニシアティブを認識。
- アジア開発基金と国際農業開発基金の増資成功に期待。
腐敗
- G20腐敗対策行動計画の実施に重要な進展。国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准・実施とOECD贈賄作業部会への積極的参加にコミット。参加を決定した国を歓迎。
ガバナンス
- キャメロン英首相の報告書を歓迎。G20は国際経済協力の第一のフォーラム。首脳が政治的に主導する非公式なグループ。トロイカの公式化。G20の運営のあり方につき,シェルパで引き続き議論。非メンバー国等との関与を追求。
- 2011年12月より墨が議長国となり,2012年6月にロス・カボスで次回G20会合を開催する。2013年は露,2014年は豪,2015年はトルコで開催する。2016年は,中国,インドネシア,日本,韓国からなるアジアグループから選ばれる。