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アーシフ・アリ・ザルダリ・パキスタン・イスラム共和国大統領の訪日(概要と評価)
平成23年2月23日

(写真提供:内閣広報室)

I 日程概要
- (1)ザルダリ大統領は,実務訪問賓客として,2月21日から2月23日の日程で訪日。ビジュラニ産業・生産大臣,シャハブッディーン繊維業大臣等の閣僚が同行した。
- (2)22日夕刻より菅総理との日パキスタン首脳会談及び夕食会が行われ,二国間関係や地域及び国際的課題に関し意見交換が行われた。会談後,両首脳は「包括的パートナーシップに関する共同声明」へ署名。また,緒方JICA理事長とハリーム経済省次官との間で,「ハイバル・パフトゥンハー州緊急農村道路復興計画」円借款貸付契約の署名式が行われた。同日の首脳会談前には前原外務大臣,海江田経済産業大臣及び緒方JICA理事長による表敬が行われた。
- (3)22日には日パキスタン経済委員会主催昼食会に出席。23日には日パキスタン議連主催昼食会に出席するとともに,財界人による表敬が行われた。
- (4)23日には,天皇陛下による御会見が行われた。23日の離日時には羽田空港にて菊田外務大臣政務官が見送りを行った。
II 首脳会談概要
1.日・パキスタン関係総論
- (1)菅総理から,ザルダリ大統領の訪日を歓迎し,アフガニスタンの安定のためにパキスタンの果たす役割は非常に重要である旨述べた。
- (2)ザルダリ大統領から,これまでの日本の支援への深甚なる感謝を表明。また,来年の外交関係樹立60周年に向けて二国間関係を更に強化していきたいとの希望を表明。
2.地域の安定・テロ対策(アフガニスタンを含む)
- (1)菅総理から,パキスタン経済の持続的発展には治安の安定と強固な経済基盤の構築が不可欠と述べ,主体的な経済改革へのザルダリ大統領のリーダーシップを期待。
- (2)ザルダリ大統領から,アフガニスタン政府とも協力しつつ,国際社会からの支援を得て,テロとの闘いを継続している旨説明。
3.経済
- (1)ザルダリ大統領から,パキスタンの地政学的重要性,経済的潜在性を指摘しつつ,日本の投資家・企業の進出への強い期待感を表明。また,二国間経済関係の発展に向けた政府間のタスクフォース設置を提案。さらに,有能なパキスタン人若年労働者の育成・活用への希望を表明。
- (2)菅総理から,日本企業の進出促進のため,邦人の安全対策強化,治安改善や行政手続きの簡素化,基礎インフラの整備を希望。また,パキスタンがパキスタン産マンゴウの輸入解禁措置を最大限活用することへの期待を表明。また,菅総理は,投資・貿易等の二国間経済関係を強化するための方途に関して実務者間での協議を指示。
4.経済協力
- (1)菅総理から,昨年の洪水対策支援に言及。経済改革努力に応じ,パキスタン支援を継続する用意がある旨表明。貧困削減支援借款(PRSC)への協調融資やインフラ,水管理やエネルギー,教育・人材育成,防災,保健分野における協力を重視する旨表明。
- (2)ザルダリ大統領から,日本の支援継続が要請されるとともに,エネルギー分野における更なる協力への期待を表明。
5.北朝鮮
- (1)菅総理から,国際的な義務に違反する北朝鮮のウラン濃縮活動に重大な懸念を表明。その上で,北朝鮮に対し非核化等のため具体的行動をとるよう求めていく上で,パキスタン側の協調した行動に対する期待を表明。
- (2)ザルダリ大統領より,核兵器の存在しない朝鮮半島及び緊張の緩和を支持するとのパキスタン政府の立場を表明。全ての問題の平和的手段による解決を希望する旨述べた。
III 前原外務大臣によるザルダリ大統領表敬概要
- (1)前原外務大臣から,ザルダリ大統領の訪日を歓迎し,テロ事件の犠牲者と御遺族にお悔やみを述べるとともに,断固としてテロ対策を継続しているパキスタンに敬意を表した。また,2012年が国交樹立60周年であり,今次訪日を契機に,二国間関係が強化されることを期待した。
- (2)ザルダリ大統領から,最大10億ドルの支援の着実な実施及び洪水被害に対する日本の支援に深甚なる謝意を表明。また,国内経済改革にふれつつ,日本のような進歩的で商業的な国を目指す旨言及。さらに,日本企業の更なる進出を通じて両国間の経済関係を強化するため,投資環境整備に尽力したいと述べ,両国間でかかる協力のための枠組み作りを提起。前原外務大臣から,二国間経済関係の強化のため,治安改善や行政手続の簡素化,インフラ整備を通じたパキスタン政府による投資・ビジネス環境の改善の努力を要請。
- (3)ザルダリ大統領から,中東情勢とパキスタンへの経済的影響,テロとの闘いについて説明。前原外務大臣から,中東情勢に関し,日本としては国の将来はその国の人々が決めるべきとの立場であり,他国とも連携して必要であれば協力していく旨言及。国内で多くの困難に直面する中,テロ対策や地域の安定化への努力等,重責を果たしていることに敬意を表した。
IV 評価
- (1)菅総理とザルダリ大統領の間で,首脳会談及び夕食会において,非常に和やかな雰囲気の下,率直な意見交換が行われたことは,両国間の関係を包括的パートナーシップへと強化していく上で,極めて重要。
- (2)ザルダリ大統領から,テロ掃討作戦の継続及び経済改革への取組に対する説明がなされたことを評価するとともに,これらの取組が継続され,進展するよう,我が国として引き続き同国の取組を促していく必要がある。
- (3)ザルダリ大統領がパキスタンにおける投資環境の整備に積極的に取り組む意向を示したこと,両首脳が経済関係強化の方途の検討を指示したこと,また,今次訪日に先立つ形でパキスタン産マンゴウの日本への輸入解禁措置を実施したことなどは,両国間の経済関係を更に強化する契機となるものと評価される。
- (4)経済協力分野においては,菅総理からインフラ,水管理やエネルギー,教育・人材育成,防災及び保健分野を重視する旨表明したことは今後の協力の方向性を示すものであり,今次訪日の機会に,ハイバル・パフトゥンハー州緊急農村道路復興計画(洪水災害対策)円借款貸付契約(約147億円)への署名が実施されたことと相まって,我が国のパキスタンに対する支援を強く印象づけることとなったと思われる。
- (5)2012年の国交樹立60周年を1つの契機として,二国間関係の強化や人的交流の拡大を目指すことで両首脳は一致した。日本・パキスタン友好議員連盟主催行事の開催は国会議員の交流を更に拡大させる契機となるものと期待される。