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行動計画
スペイン語版(PDF)
日本国内閣総理大臣と中米統合機構(SICA)加盟国のコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア及びパナマ並びにSICA準加盟国のドミニカ共和国(以下「SICA諸国」という。)の大統領及び副大統領は、日本・中米首脳会談の際に発出された「東京宣言:日本と中米、未来に向けた友情」にしたがって、双方の国民及び政府の間の一層の緊密化を促進するために政策対話、経済関係、開発協力、文化交流等を拡充するとの共通の関心により、以下の行動計画を採択した。
1.対話と協力
(1)日・中米フォーラム
双方は、1995年に設置された日・中米フォーラムを通じて政策対話を更に強化するとともに、2004年に合意されたメカニズムを活用し、同フォーラムの着実なフォロ-アップに努める。
(2)首脳・外相級の対話
双方は、適切な機会を利用しつつ、首脳、外相級の対話を強化するよう努める。
(3)東アジア・ラテンアメリカ協力フォ-ラム(FEALAC)
- 日本は、東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)において主導的な役割を果たしていく意図を表明しており、将来の適当な時期に同フォーラムの外相会合を主催する考えである。
- FEALACに加盟していないSICA諸国は、同フォーラムへ加盟し、日本のみならず、アジア諸国との協力関係を強化するとの関心を表明する。
2.平和と民主主義の定着
(1)民主主義の定着に対する支援
- 日本は、選挙支援、行政機能の近代化支援及び中米諸国が行っている腐敗撲滅の戦いにおける努力に対する支援を通じ、中米の民主主義制度の強化及び平和の定着に貢献してきており、今後ともこのような貢献を継続する。
- 日本は、グアテマラにおける和平合意に関し、2004年8月に派遣 された調査団の報告を踏まえ、民主化の定着のためのプロジェクトの具体化につき検討する。
- ニカラグア及びG8諸国は、2004年6月、米国シーアイランド・サミットにおいて採択した「透明性向上と腐敗との闘いに関する協約」を通じた協力を表明した。日本は、他のG8諸国と共に、ニカラグアの改革・近代化計画の実施に対する協力を積極的に検討する。
- 日本は、SICA諸国における司法制度近代化に寄与するため、国連ラテンアメリカ犯罪防止研修所(ILANUD)を通じた各種協力を継続する。
(2)治安の改善・強化
- 日本は、中米高等警察研究所(ICESPO)に対する協力を継続する。
- SICA諸国において危険な状況にある青少年又は法律違反を犯した青少年に係る問題が深刻化している現状に鑑み、日本は、地域社会が裨益するプログラムを通じて青少年による犯罪の予防に貢献する用意がある。
(3)対人地雷除去
日本は、米州機構(OAS)が実施する中米地域における対人地雷除去活動に対し、重要な貢献を行ってきている。日本は、コスタリカ及びホンジュラスの地雷除去達成に貢献してきており、さらに、グアテマラが2005年中に、ニカラグアが2006年中に対人地雷除去を達成することを期待する。
(4)小型武器の削減
日本は、SICA諸国における小型武器の不法取引及び使用の削減のための支援を検討する用意がある。
3.経済、開発、観光及び防災における協力
(1)経済社会開発協力
日本は、ミレニアム開発目標(MDGs)達成も念頭に置きつつ、道路、橋梁、空港、港湾、上下水道施設、病院、教育施設等の建設・改善を通じ、SICA諸国の経済・社会インフラの維持・整備、貧困削減、平和の定着、持続可能な開発に積極的に協力してきており、このような支援を継続する意思を再確認する。
(2)人材育成、キャパシティ・ビルディング
日本は、研修員の受入れ、専門家の派遣、セミナーの開催等の技術協力を通じ、人材育成及びキャパシティ・ビルディングを継続する。
(3)広域協力
- SICA諸国は、文化的に緊密につながった共同体であり、共通の開発課題の目的の達成に向けて具体的な成果及び実質的な進展を実現していることに鑑み、日本は、広域協力の効果を認識し、SICA諸国が広域開発協力のモデルとなるように取り組む用意がある旨表明する。
- 広域協力の柱の一つとして、日本は、これまでの技術協力の実績も活用しつつ、「中米域内協力網構想」を発展させるとの意思を表明する。右構想においては、特定の開発課題に関する地域拠点に指定される国に対して、同課題に関する二国間協力も強化しつつ、域内支援拠点として支援を実施し、他のSICA諸国に対して成果を共有し伝搬する。
- 具体的には、シャーガス病対策はグアテマラ、警察支援及び廃棄物処理はエルサルバドル、算数教育はホンジュラス、リプロダクティブヘルスはニカラグア、生産性向上及び司法改革支援はコスタリカ、防災はパナマ、医学教育はドミニカ共和国を拠点とすることを想定する。
- 日本は、「中米域内協力網構想」と並ぶもう一つの柱として、「中米特設地域研修」を推進する。具体的には、日本の教育制度、職業訓練、地域医療サービス改善、早期胃癌診断、生活廃棄物処理及び防災に関する本邦研修を実施する。
- SICA諸国は、「中米域内協力網構想」及び「中米特設地域研修」を通じた日本の協力が、地域統合促進に資するとともに、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成にも貢献することを確信し、このような協力を最大限に活用するとの関心を表明する。
- SICA諸国は、SICA事務局に派遣された日本の広域協力案件形成アドバイザ-の貴重な功績を評価する。これに対し、日本は、同専門家派遣は中米統合支援に対する日本の関心の高さを示すものであることを踏まえ、同分野の専門家を新たにSICA事務局に派遣する。
- 日本は、SICA諸国に対する広域協力を補完するため、日本・メキシコ・パ-トナ-シップ・プログラム(JMPP)、日本・チリ・パ-トナ-シップ・プログラム(JCPP)等の枠組みも活用する。
- 二国間技術協力の効果を高め、広域協力を効率的かつ効果的に実施するため、日本と技術協力協定を締結していないSICA諸国は早期締結に向けて一層の努力を行う。
- 中米は、開発目標を達成し、国際協力によりもたらされる資源を一層効果的かつ効率的に活用するための戦略の策定を可能とする必要かつ根本的な一歩として、「広域協力の協調と調和プロセス」の実現に向けてイニシアティブを発揮しており、日本はこれを歓迎する。日本は、このプロセスに協力する可能性を検討する。
(4)中米統合の促進
- 日本は、2004年9月に「日・中南米 新パートナーシップ構想」において表明したとおり、地域統合を補完するプロセスとしてプエブラ・パナマ計画の進展に引き続き関心を有する。日本は、既に道路、橋梁、港湾等の交通網統合の分野において総額240億円以上の協力を実施し、同計画の目的の実現に貢献してきており、今後も同計画に対する支援に積極的に取り組む。
- 日本は、プエブラ・パナマ計画の促進に貢献するため、同計画事務局に専門家を派遣する。
- SICA諸国は、日本の政府及び企業関係者にプエブラ・パナマ計画の重要性及び同計画がもたらす機会につき説明するため、同計画各国代表及び関係省庁技術グループにより構成される合同代表団を近々派遣する。
- 日本は、域内物流の効率化のため、特に国際貨物輸送のための地域交通網統合に対する支援を引き続き重視しており、「ホンジュラス・エルサルバドル間のアマティージョ国境におけるゴアスコラン国際橋の設計・建設計画」に関する調査団を派遣するほか、「ラ・ウニオン県港湾再活性化計画」(エルサルバドル)を支援すると共に、「コスタリカ国幹線道路網29橋梁に基づく橋梁復旧計画・維持管理能力向上支援調査」及び日本貿易振興機構(JETRO)により策定された「主要幹線橋梁耐震整備計画(グアテマラ)」を中米諸国が積極的に活用することを期待する。
- 双方は、SICA諸国にとり優先度が高く意義の大きいプロジェクトに融資を行う中米経済統合銀行(BCIE) の重要性を認識する。そのうちのいくつかのプロジェクトは国際協力銀行(JBIC)と協力して実施される。これに関し、双方は、2004年7月に締結された、日本からの中米5ヶ国向け輸出を支援するための1億ドルの融資契約に特に言及した。また、SICA諸国は、重債務貧困国を支援するための譲許的融資の必要性につき言及した。
- JBICは、2004年、「中米ITマスタ-プラン策定及び政府電子化に係る発掘型案件形成調査」を終了した。日本は、この重要な分野における協力を拡大する可能性を検討する。
- JBICは、「プエブラ・パナマ計画に繋がる再生可能エネルギ-を活用 した基盤整備事業」調査を実施した。日本は、同計画参加国が地域の経済社会発展のため、同調査の提言を有効利用することを期待する。
- 日本は、本年2月の「コスタリカ・ニカラグア国境地域開発計画」の署名を歓迎し、同計画への支援を検討する。
(5) 経済交流活発化のための施策
- SICA諸国は、東京にて本年11月に予定されている中米展を日本市場への進出の可能性がある輸出品を紹介する機会と捉えている。
- SICA諸国は、2006年に中米のいずれかの国において、日・中米ビジネス・フォーラムを実施することが重要であると認識する。このフォーラムは、SICA諸国にて日本企業が投資を増加させる足掛かりとなり、各国の社会経済発展に貢献する貿易及び技術移転を促進する。
- JETROは、日本とSICA諸国双方の企業のニ-ズを踏まえつつ、FOODEX JAPAN(国際食品・飲料展)への出展支援、中米展、対日投資ビジネス・サポ-ト・センタ-、トレ-ド・タイアップ・プロモ-ション・プログラム等を通じて対日輸出振興のためSICA諸国と協力する。また、JETROサンホセ事務所及びパナマ事務所は、SICA諸国への日本の貿易及び投資の促進業務を引き続き行う。
- 双方は、企業間の交流を促進する意向を表明し、経済ミッションの可能性を検討する。
- 双方は、日本・中米間の貿易投資促進共同計画の策定及び実施に向け協力して取り組む。
(6)零細・中小企業及び裾野産業の育成
日本は、技術協力を通じて、零細・中小企業及び裾野産業の育成支援を継続し、SICA諸国の生産性の向上に貢献する旨改めて表明する。
(7)観光振興
- 中米諸国は、日本に地域の多様性を紹介するために、観光戦略の一環として「中米」ブランドの定着を推進する。世界旅行博、その他の関連フォ-ラム等の様々な事業にSICA諸国が参加することにより、この目的は達成される。
- SICA諸国は、宣伝資料及び中米観光地図の作成を含む、日本に中米を紹介し宣伝する戦略を策定し、日本の旅行会社等を対象とした企画を実施する。日本は、このイニシアティブを歓迎する。
- SICA諸国は、土地用途指定計画、観光開発計画及び中米観光地理情報システムの策定及び実施を優先的に進める。日本は、当該分野における協力の可能性を検討する。
(8)防災分野の支援
- 日本は、日本の経験及び中米地域で支援してきている案件を踏まえ、防災に関する人道的・技術的支援を継続する。
- 双方は、2005年1月、国連防災世界会議で採択された「災害に強い国・コミュニティーの構築:兵庫行動枠組2005-2015」の履行に向けて可能な努力を行う。
- 双方は、防災分野における人材育成の重要性について一致した。日本はSICA諸国がこの課題に対処する能力を強化することに貢献するために、経験と技術を共有する。
(9)漁業と養殖
中米諸国は、漁業と養殖が中米地域の発展にとって重要な経済的社会的影響を有している部門であることに鑑み、漁業資源の持続的な利用を達成するため、共通の開発戦略を段階的に推進することを決定した。日本は、この分野において中米諸国に対する協力の可能性を検討する。
4.教育、文化交流、スポ-ツ交流、青少年交流
(1)教育分野の協力
- 日本は、小中学校の建設及び教育機材供与を継続する。
- 日本は、ホンジュラスにおける「算数教育法改善計画」が大きな成果 を収めていることに鑑み、同様の計画を中米域内へ拡大する支援を行う。
- さらに、日本は、産業部門の人材育成を目的とした教育分野での支援を推進する。
(2)青少年交流
日本は、今後5年間に留学生、研修生の受け入れ等により約1000人のSICA諸国の青年を招聘する。
(3)文化交流
- 日本は、文化無償協力及び日本文化紹介事業を通じ、相互理解を引き続き促進する。
- 双方は、中米で上演されている日本の戯曲「米百俵」が人材育成の観点からの教育の重要性を明らかにしており、相互理解の進展に貢献することを強調し、このようなメッセ-ジを持つ本件上演を促進する。
- 日本は、講師派遣、日本図書寄贈、日本語講座等を通じた日本研究及 び日本語に関する協力を継続する。
- 双方は、SICA諸国文化人セミナ-の開催に向けて協力する。
(4)スポ-ツ交流
- 日本は、青年海外協力隊や国際交流基金を通じたスポ-ツの普及・振興への貢献を継続する。
- 日本は、2005年12月にグアテマラで開催される中米オリンピックの機会に剣道のデモンストレーションを実施する。
5.国際場裡における協力
(1)国連改革
- 双方は、本年9月のミレニアム宣言に関する首脳会合に向け、国連の効率、効果及び透明性を高め、国際社会の諸課題により有効に対処できることを目指す改革のため引き続き協力する。
- SICA諸国は、日本の常任理事国入りを支持する。また、国連総会にて採択される決議に従い新常任理事国の選挙が実施される際、日本に投票する。
(2)人間の安全保障
- 日本は、2005年度に、人間の安全保障基金を通じて、「中米3ヶ国(エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)における貧困・未成年女性支援プロジェクト」を実施する。SICA諸国は、同様のプロジェクトが他のSICA諸国に拡大されることを支持する。
- 日本は、SICA諸国に対し、人間の安全保障の理念に基づく社会分野のプロジェクトを検討し、国連の然るべき機関に提示することを提案する。SICA諸国は、この分野の優先課題を定める努力を行う。
(3)環境保護に対する協力、資源の持続的な利用
- JBICと中米経済統合銀行(BCIE)は、中米諸国におけるクリ-ン開発メカニズム(CDM)プロジェクトを促進し、これらのプロジェクトから創出される排出権の日本企業による円滑な獲得を支援するために、2004年7月、業務協力に関する取決めに署名した。この具体策として、本日、JBIC とBCIEは、中米地域における再生可能エネルギ-を利用した発電プロジェクト等に代表されるCDMプロジェクトを支援するため、総額1億ドルの融資契約に署名した。
- 双方は、2006年メキシコにおいて開催予定の第4回世界水フォ-ラムの成功に向けて協力する。
- 国際捕鯨委員会(IWC)及びワシントン条約(CITES)の加盟国は、資源の持続的な利用の観点から協力する。
(4)世界貿易機関(WTO)
双方は、2005年12月に香港で開催される閣僚会議の成功を通じたド-ハ開発アジェンダ交渉の早期妥結に向け、協力して交渉に取り組む。
6.フォロ-アップ
双方はこの行動計画を日・中米「対話と協力」フォーラムを通じてフォロ-アップする。