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平成20年6月23日
(写真提供:内閣広報室)
ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領は、6月18日~23日まで、我が国の招待(公式実務訪問賓客)により訪日したところ、訪問の概要及び評価以下のとおり。
資源大国カザフスタンと高い技術力を有する我が国との互恵的・相互補完的な協力の発展、貿易・投資の拡大に向け、主として以下の成果があった。
6月19日、天皇陛下御会見、河野衆議院議長との会談、江田参議院議長との会談、甘利経済産業大臣による大統領表敬など。20日、日・カザフスタン友好議連(中川昭一名誉会長)主催昼食会、夕刻に福田総理との首脳会談、両首脳間の共同声明(骨子・本文)ほか2文書(注)の署名式、共同記者発表を行い、その後、総理主催夕食会。21日は京都、22日三重県長島を訪問し(私的プログラム)、23日に離日。
(注)
・日・カザフスタン租税条約に関する覚書 (高村外務大臣及びタジン外務大臣署名)
・経済産業省とカザフスタン産業貿易省との間の貿易投資拡大のための協力に関する覚書(甘利経済産業大臣及びシコリニク産業貿易大臣署名)
(1)両首脳は、資源の豊富なカザフスタンと高い技術力を持つ日本との間に互恵的・相互補完的な協力の余地が大きいとの認識で一致。特に、原子力の平和的利用の分野において、ウラン鉱山の共同開発に加え、核燃料加工、研究開発等の分野でも協力が進展していることを歓迎し、原子力協定交渉の早期妥結に努めることで一致した。
(2)福田総理より、その他の鉱物資源に関する協力も有望であり、レアメタルに関する共同調査を実施していく旨、また、我が国企業も参加するカシャガン油田開発プロジェクトの円滑な進展に向け、カザフスタン側とコンソーシアム側の協力の進展を期待する旨述べた。ナザルバエフ大統領より、日本企業がタングステン等のレアメタルに関心を有していることは承知しており、カズアトムプロムと東芝が協力に合意したところである旨、カシャガン油田については採掘の遅延に懸念があるが、技術的に困難な問題があることも承知している旨述べた。
(3)両首脳は、両国経済関係の一層の発展に不可欠な租税条約の交渉が基本合意に達したことを確認し、今後、二国間投資協定の交渉も開始することで一致。また、ナザルバエフ大統領より、既存の両国経済委員会(注:日本側は民間企業のみで構成)のステータスを再検討願いたい旨述べ、福田総理より、貿易・投資の拡大に向けた環境整備や経済分野の協力を包括的に協議する官民合同の枠組みを構築する意向を表明した。
(5)総理より、我が国が開発に取り組む環境面ですぐれた小型旅客機(三菱リージョナル・ジェット:MRJ)の貴国への導入に協力願いたい旨述べたのに対し、大統領より、次世代の航空機導入に際してはMRJにも関心を持っている旨述べた。
(6)大統領より、世界的な食糧危機が生じている中で、広大な国土を有するカザフスタンに日本のすぐれた農業技術を導入したい旨述べ、総理より、食料生産力の増強に我が国の技術が役に立つ可能性もあり、必要に応じ政府の関与も考えたい旨述べた。
(1)気候変動について、大統領より、福田総理のイニシアティヴであるクールアース構想を支持する旨述べ、両首脳は、全ての主要排出国が参加する温暖化対策の実効的な国際的枠組みを構築するため協力していくことで一致した。その関連で、ナザルバエフ大統領より、カザフスタンは近く京都議定書を批准する予定であり、今後、温暖化ガス排出削減のため、日本と協力して省エネや再生可能エネルギー活用の共同プロジェクトを進めたい旨述べた。これに対し福田総理より、京都議定書を批准するとの貴国の意向を歓迎する旨、この分野での貴国との協力の可能性を追求していきたい旨述べた。
(2)大統領より、改めて我が国の安保理常任理事国入りに対する支持が表明され、総理より謝意を表した。
(3)両首脳は、地域の安定と発展にとり重要な中央アジア諸国の地域協力を推進するため、「中央アジア+日本」対話の下で引き続き緊密に協力していくことで一致した。
(4)北朝鮮問題については、非核化措置の実施と拉致問題の早期解決が不可欠であるとの認識で一致した。
豊富なエネルギー・鉱物資源を有し、経済力の著しい伸張及び巧みなバランス外交を背景に国際的存在感を高めつつあるカザフスタンは、我が国にとって中央アジアにおける重要なパートナーであり、9年ぶりとなるナザルバエフ大統領の訪日は、両国間政治対話の深化、二国間関係全体の発展に大きく資するものとなった。
既にカザフスタンとの間ではウラン鉱山開発等原子力平和的利用分野における協力が進展しているが、今次大統領訪日に際し、租税条約の基本合意確認、投資協定交渉の開始決定、経済関係全般を協議する官民合同枠組みの構築、原子力協定交渉の早期妥結に一致するなど、一連の合意・文書署名を達成したことは、資源外交の更なる展開および両国貿易投資関係の拡大に向けた布石を打つものとなった。