10月25日,菅総理とマンモハン・シン・インド首相との間で日インド首脳会談が行われたところ,概要以下のとおり(先方:クリシュナ外相,メノン国家安全保障顧問,ラオ外務次官他,当方:仙谷官房長官,前原外務大臣,大畠経産大臣,古川官房副長官,福山官房副長官他同席)。同会談後,両首脳により次なる10年に向けた日印戦略的グローバル・パートナーシップのビジョン(「仮訳/英語)」と題する共同声明及び「日印包括的経済連携協定締結に関する両首脳間共同宣言(仮訳/英語)」への署名が行われた。また,両首脳立ち会いの下,別所外務審議官とラオ外務次官による査証手続の簡素化に関する日本国政府とインド共和国政府との間の覚書(仮訳/英語)への署名が行われた。
1.二国間関係
(1)安全保障
2009年12月に首脳レベルで合意された「行動計画」が着実に実施されていることを歓迎するとともに,地域の安定・繁栄において両国の協力は重要であり,安全保障分野において協力を強化することで一致。
(2)経済・経済協力
ア.日インド包括的経済連携協定(CEPA)
CEPA交渉が成功裡に完了したことを歓迎するとともに,CEPA発効により貿易・投資の拡大を期待。
イ.閣僚級の経済対話
日本からの閣僚級の経済対話を新設する提案に対し,シン首相より賛意が示された。
ウ.民生用原子力協力
両首脳は,民生用原子力協力に向けた協議の進展を歓迎。菅総理が協定交渉の決断は,唯一の被爆国である日本にとり極めて重いものである旨述べたのに対し,シン首相より,日本が交渉開始を決断したことへの謝意が示された。
菅総理より,インドの「約束と行動」の実施を重視しており,インドの核実験モラトリアム維持を評価する旨述べるとともに,日本の核軍縮・不拡散に対する強い思いに理解を求めた。シン首相より,唯一の被爆国である日本の思いを理解する,インドは一方的な核実験モラトリアム宣言に加え,核軍縮についても強い立場で臨んでいる,また,核不拡散にも努力を払っている,核不拡散防止条約(NPT)の締約国ではないが,NPTの内容については強く支持している,原子力協定交渉において意義ある結果が出ることを期待する旨の発言があった。
エ.インフラ整備
菅総理より,日本として引き続きインドの経済成長及び持続的な発展に協力していく予定であり,インド貨物専用鉄道建設計画(DFC)及びデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)の進展を重視している旨発言。シン首相より,日本のODAに対する感謝が述べられるとともに,インフラ整備に更なる投資が必要であり,官民連携(PPP)に対する期待が述べられた。また,DFC及びDMICは二国間の協力の象徴であり成功に導きたい旨発言。
オ.資源・エネルギー
両首脳は,エネルギー協力の分野での協力の進展を観迎するとともに,更なる協力で一致。レアアースの開発等についても協力を深化させることとなった。
カ.人の交流
菅総理より,インド工科大学ハイデラバード校(IITH)及びインド情報技術大学ジャバルプル校(IIITDM・J)への支援を継続する旨発言したのに対し,シン首相より謝意が示された。また,両首脳は査証手続き簡素化の覚書への署名を歓迎。
キ.
シン首相から菅総理に対して,来年のインド訪問招請があり,菅総理からも是非お伺いしたいとして謝意を述べた。
2.地域情勢・国際的課題
(1)中国
菅総理より,尖閣諸島を巡り緊張が高まったが,温家宝国務院総理との懇談をきっかけに,日中関係は改善しており,大局的観点から「戦略的互恵関係」の推進に取り組む考えについて説明し,シン首相からも印中関係の現状につき説明があった。
(2)国連安保理改革
菅総理より,9月のG4外相会合を踏まえ議論を行い,首脳レベルの協力を確認し,具体的な改革案について,作業を進めたい旨発言。シン首相からは,インドは常任・非常任理事国の拡大が必要と考えている,他国を説得する方法について両国で協力したい,改革は実現しなければならない時期に来ており,両国の協力を強化したいと述べた。
(3)その他,軍縮・不拡散,気候変動,生物多様性,アフガニスタン・パキスタンについて意見交換を実施した。