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安倍総理の東アジア・サミット等出席(概要と評価)
平成19年1月
1月14日及び15日に、フィリピンのセブにおいて、第2回東アジア・サミット(EAS)、第10回ASEAN+3首脳会議、第10回日ASEAN首脳会議及び第7回日中韓首脳会議が開催され、安倍総理が出席したところ、概要と評価以下のとおり。
<全体的評価>
- 安倍総理は、一連の会合で、オープンで活力がありイノベーションに富む東アジアの構築に向け、普遍的価値の共有を基礎に地域協力を進めるという基本理念を表明。
- また、そのため、具体的な東アジア協力案件(アジア・ゲートウェイ、エネルギー安全保障、東アジア青少年大交流構想、防災、ASEAN統合支援等)を表明。特に、EASでは、地域のエネルギー安全保障問題に対処するための包括的取組を表明し、出席国が歓迎。こうした議論を通じ、EASを具体的協力の場へと育てていく気運が首脳レベルで確認。
- 北朝鮮問題に関し、安倍総理から、日本の立場に対する支持を強く訴え、各国からは、これに対する理解と支持が相次いで示された。また、EAS、ASEAN+3、日ASEANの各議長声明で、拉致問題を明示しつつこうした認識を明記(一連の会議終了後のアロヨ大統領の記者会見でも拉致問題に言及)。日中韓首脳共同プレス声明でも、「人道上の懸念」として、日中韓の文書としては初めて、拉致問題を意味する言及がなされた。
<各会議の概要と評価>
1.東アジア・サミット(15日。ASEAN、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドが出席。)
- 会合の前半で地域のエネルギー安全保障について、後半でその他地域の課題やEASの将来について、各国首脳が大局的に議論した。
- エネルギー安全保障に関し、安倍総理は、1)省エネの推進、2)バイオマスエネルギーの推進、3)石炭のクリーンな利用、4)エネルギー貧困の解消からなる協力イニシアティブを表明(別添1(PDF)
)し、各国の高い評価を受けた。また、省エネ目標・行動計画の設定、バイオ燃料の利用促進等を内容とする「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」を採択した。さらに、次回会議までに閣僚級会合や作業部会等を開催し、同宣言に盛り込まれた協力措置をフォローアップしていくこととなった。
- その他の事項については、エネルギー以外のEAS協力優先分野である教育(インドでのナーランダ大学再興構想等)、防災、鳥インフルエンザ、金融につき、各国の取組が紹介されたほか、今後の協力のあり方について議論した。安倍総理は、EASを地域の重要課題について具体的成果をあげる場としていくため、今次会議の成果を閣僚・実務者にフォローアップさせることを提案。また、日本の具体的な東アジア協力として、別添2(PDF)
の取組を表明した。
- 安倍総理より、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験は、国際社会及び地域の平和と安全に対する脅威であり、拉致を含め問題の早期解決を図るためにも、EAS参加国が北朝鮮に連携して圧力をかけるべきである旨訴えた。
- 首脳会議後に発出された議長声明は、日本のエネルギー協力イニシアティブを歓迎し、EASの優先5分野すべてにおける具体的協力の開始に言及。EASを具体的協力の場へと育てていく気運を首脳レベルで確認できた。また、経済連携に関するEAS16か国の民間専門家による研究の開始と、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の設立にも言及。北朝鮮に対し核及び拉致問題への対処を強く求める等、日本の主張が全面的に反映された。
2.ASEAN+3首脳会議(14日。ASEAN、日本、中国、韓国が出席。)
- ASEAN+3協力の中長期的方向性、個別分野の協力、本年11月の次回首脳会議で採択する「東アジア協力に関する第二共同声明」の方向性、北朝鮮問題等につき議論した。
- 安倍総理から、引き続きASEAN+3協力を推進していく意志を示すとともに、特に、地域協力の将来の方向性として、「東アジア協力に関する第二共同声明」の中で、1)開放性・透明性・普遍的価値を基礎とした協力を推進、2)ASEAN+3、EAS、APEC、ASEAN+1等すべての地域協力を進める意志を確認し、地域内外のすべての協力パートナーの指示を確保していくことを確認、との基本的考え方を表明した。
- 北朝鮮問題に関しては、安倍総理から、拉致・核・ミサイルを含む諸問題の解決に向けた国際的な圧力の必要性を訴えた。この結果、首脳会議の議長声明では、北朝鮮に対し核及び拉致問題への対処を強く求める等、日本の主張が全面的に反映された。
3.日ASEAN首脳会議(14日。ASEAN及び日本が出席。)
- 中長期的な日ASEAN協力の方向性、個別分野の協力、北朝鮮問題等につき議論した。
- 安倍総理から、1)「バランスのとれた経済発展」、2)東アジア域内協力の深化、3)域内の平和と安全の確保、4)基本的価値の共有と深化、5)アジア・ゲートウェイ構想の5本柱に沿って、別添2の各協力イニシアティブを表明。これに対し、ASEAN側から、日ASEAN関係の戦略上の重要性に言及し、日本のこれまで30年間余りにわたる重要な貢献に対する感謝の念が相次いで示された。また、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)に関し、本年春までの実質交渉終了に向けて努力することを再確認した。
- 安倍総理から、日ASEAN協力の中長期的方向性について議論するため、日ASEAN賢人会議を設置し、2008年(次々回)の首脳会議に報告させることを提案し、合意された。
- 北朝鮮問題については、安倍総理から、日本の立場を強く訴えた。これに対し、アロヨ大統領の冒頭発言を含め、六者会合を通じ朝鮮半島の非核化を実現していくことが重要との各国共通の発言があった。拉致問題についても、複数国から日本の懸念への理解が示された。こうした認識は、拉致問題を明示しつつ、議長声明に明記された。
4.日中韓首脳会議(14日)
- 各国首脳が、未来志向の日中韓三国間協力の大局的方向性について議論するとともに、北朝鮮問題をはじめとする地域・国際情勢について議論し、その成果を「共同プレス声明」として発出した。
- 三国間協力については、首脳間の交流強化と外交当局間のハイレベル協議設置、日中韓投資協定の締結交渉の開始に合意するとともに、その他様々な分野での協力強化に合意し、日中韓外相会合(「外相三者委員会」)や外交当局間ハイレベル会合でフォローアップしていくこととなった。
- 北朝鮮問題については、安倍総理から、日本の立場を強く訴えた。その結果、安保理関連決議1695及び1718の完全履行の必要性を再確認し、9月19日共同声明の完全履行を要請することで一致した。また、拉致問題については、共同プレス声明において、「三国の首脳は、国際社会の人道上の懸念に係る問題への対処の重要性を強調した」と言及。日中韓の文書で拉致問題を意味する言及がなされたのは初めてである。
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