1 国際文化交流の促進
【人物・教育分野での交流】
人物交流は、異なる文化間の相互理解を増進し、諸外国との関係を強化する上で重要な基盤であることから、日本は、諸外国の政府要人や有識者から青年までの多様なレベルを対象とした各種の招聘プログラムを実施し、日本の政府・民間関係者との交流、産業施設の視察や伝統文化体験等を通じて、日本に対する正しい理解の増進に努めている。そのほか、教育の分野における取組を通じた知日家・親日家の育成を積極的に推進している。

ソフト・パワー
「ソフト・パワー」は最近よく耳にする言葉ですが、これを明確な概念として最初に提示したのは、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授です(1990年:著書名「不滅の大国アメリカ」)。彼によれば、国際政治において軍事力や経済力によって他国をその意に反して動かす力が「ハード・パワー」であるのに対し、良い理念や文化によって相手を敬服させ、魅了することによって自分の望む方向に動かす力が「ソフト・パワー」です。民主主義が広がって市民が一層政策決定に参画するようになるにつれて、またIT化によって情報伝達手段が発達するにつれて、このソフト・パワーが国際関係で果たす役割が急速に増してきたというのです。ナイ教授はその例として、アメリカの民主主義の理念というソフト・パワーがソ連を崩壊に導いたことを指摘しています。
軍事力を国際紛争解決の手段として使わぬことを誓い、かつ伝統的な文化のみならず最近のポップ・カルチャーなど世界に誇る文化をもつ日本には、このソフト・パワーの潜在力があり、それをさらに引き出し、顕在化させることで、世界における日本の地位を向上させようという議論が、最近日本でも行われつつあります。
ただ、ここで注意すべき点は、軍隊や財政力がハード・パワーで、文化はソフト・パワーであるというように自動的に定義するのは慎むべきであり、何がハード・パワーで何がソフト・パワーかは、あくまでその力の源泉の使い方次第で決まるということです。例えば政府開発援助(ODA)自体は経済的手段ですが、相手国に特定の経済発展のあり方を押しつけるのではなく、日本がこれまでやってきたように、相手の話をよく聞き、相手の望むように助けていくことによって、結果的に日本への感謝の念や好感を生んだことは、まさに日本のソフト・パワーであるということができます。イラクに派遣されている自衛隊も、何かを強制するのではなく、人道・復興面でイラク人の努力を支援し、感謝されているのですから、限りなくソフト・パワーに近いと言うことができるでしょう。
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(1)JETプログラム
日本の中学・高校における外国語教育の充実や、青年交流による地域レベルでの国際交流の発展を図ることを目的として、「語学指導等を行う外国青年招致事業(The
Japan Exchange and Teaching Programme)」
(注3)が1987年より開始され、2004年には、米国、英国をはじめとする41か国から6,103人の外国青年を招致した。招致者累計は4万人を超えるなど青年交流の大きな柱となっており、日本は、同窓会組織への支援等を通じて帰国後の外国青年が日本との関係を維持するような施策も行っている。
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(2)留学生交流
外国から日本への留学生受入れ総数は、2004年5月現在、117,302人に達した。留学生の受入れは、日本の高等教育の国際化、また、相互理解の促進や人材育成を通じた諸外国との友好関係の増進に大きく寄与している。日本は、日本留学に関する情報提供(日本留学総合ガイド:http://www.studyjapan.go.jp)、国費留学生の募集、入学前の予備教育等の施策を通じて、質の高い留学生の確保に努めている。また、留学生が帰国後も母国と日本との架け橋として活躍できるよう、世界中で200以上ある「帰国留学生会」(元JICA研修員等も含む元日本留学者の同窓会)に対する支援を行っている。
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(3)スポーツ交流
8月にアテネ(ギリシャ)で開催された第28回オリンピック競技大会が世界中の注目を集めたように、スポーツは国や民族の違いを超えて広く楽しまれている。日本は、柔道や剣道といった日本発祥の種目を中心に、各国より指導者を招聘して研修を行う等、スポーツ交流を通じた友好関係の増進と日本の精神文化への共感を広めることに努めている。
(4)
海外における日本語普及
日本の政治、経済、社会、文化を海外に発信し対日理解を深めるためには、日本語の普及が重要である。海外での日本語教育は、民間では採算ベースにのりにくい場合が多いことから、日本は、国際交流基金を通じて、日本語教育専門家の派遣、海外日本語教師の日本における研修、日本語教材の寄贈、日本語能力試験の海外実施等の事業を行っている。

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