第3章 分野別に見た外交 |
第5節 文化外交と海外広報戦略
【総論】
文化交流と海外広報は、国際社会に対して日本の外交政策や諸事情、文化・思想の魅力を広く発信することにより、諸外国国民の日本に対する理解と信頼を高め、外交政策を推進する上での環境を整備することを目的としている。特に、近年、グローバル化の進展により、政府以外の多くの組織や個人が様々な形で外交に関与するようになり、政府として日本の外交努力やその背景にある考え方を自国民のみならず各国の国民に説明し、理解を得る必要性が増している。さらに近年、軍事力や経済力といった相手の政策変更を促すことができる力(ハード・パワー)に加え、その国がもつ価値観や文化の魅力で相手を惹きつける力、いわゆるソフト・パワーが、国のイメージを高め、外交力の向上と広義の安全保障、海外での邦人の安全性の向上につながるとの認識が広がっている。こうしたことから、パブリック・ディプロマシー(注1)という考え方が注目されており、外務省においても、8月に広報文化交流部を発足させ、海外広報と文化交流をより有機的に組み合わせ、それを官民が連携して実施するための体制整備を行った。また、日本文化の潜在力を効果的に活用することを通じて日本外交に幅と奥行きを持たせるための方策を議論するため、12月より、小泉純一郎総理大臣は、有識者の参加を得た「文化外交の推進に関する懇談会(注2)」を開催している。さらに、外務省は地方自治体や民間の交流団体との間でのネットワークを構築するべく種々の働きかけを始めた。
また、国際文化交流には、海外の頭脳や才能を日本に招き入れることを通じて日本社会を活性化させたり、対日イメージの向上を通じて日本製品の販売促進につながるといった経済的な効果も期待できる。このような観点から、日本は、様々な人物交流、文化・芸術交流、文明間対話を含む知的交流、さらには開発途上国に対する文化協力を通じ、中長期的観点から諸外国における日本のイメージ、親日感の向上に努めている。
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