4. アフリカ(サブ・サハラ)
< 実績 >

  日本のアフリカに対する2006年の二国間政府開発援助は、約25億5,819万ドルで、二国間援助全体に占める割合は34.2%です。

図表II-35 アフリカにおける日本の援助実績

図表II-35 アフリカにおける日本の援助実績

< アフリカ地域の特徴 >

  アフリカは、深刻な貧困、飢餓、紛争、HIV/エイズ、結核、マラリアなどの感染症、累積債務などの課題が集中しており、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成度が極めて低い地域です。日本はMDGsの達成のためには安定的な制度・政策環境の整備、人材育成、良い統治(グッド・ガバナンス)、健全なマクロ経済政策運営、国内資金の動員などといった開発途上国の自助努力(オーナーシップ)がかぎになると考えています。そして、オーナーシップを支えるのが、二国間の援助国、国際機関やNGOも含めた国際社会における協調(パートナーシップ)です。
  後述する日本のアフリカ開発会議(TICAD (注16))プロセスを通じた取組を受け、アフリカ側の具体的取組としても、国際社会の援助に依存せず、自身の責任でアフリカの貧困削減、持続可能な成長と開発、世界経済への統合を目指しており、アフリカ主導で2001年に「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD (注17))」が策定されました。現在、NEPADの重要な柱の一つとして、アフリカ諸国同士による、政治、経済、民間企業活動におけるガバナンスに関する、相互評価、経験共有のためのメカニズム(APRM (注18))も進展しています。また、アフリカ諸国・諸国民間の一層の統一性・連帯の達成やアフリカの政治的、経済・社会的統合の加速化等を目的として2002年、「アフリカ統一機構(OAU (注19))」を発展改組した「アフリカ連合(AU (注20))」が設立されました。AUは各地における平和維持に関しても、スーダン・ダルフールにおける停戦監視団(AMIS (注21))、国連と地域機関の初の合同ミッションとなるダルフール国連・AU合同ミッション(UNAMID (注22))、およびソマリアにおけるAUソマリア平和維持部隊(AMISOM (注23))など、地域の問題にオーナーシップを持って活動を展開しています。

< 日本の取組 >

  日本は1993年以来、5年ごとに開催しているアフリカ開発会議(TICAD)プロセスを通じて、アフリカ諸国のオーナーシップとそれを支援する国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきました。このような日本のアフリカ問題に対するイニシアティブは、アフリカ開発に対する国際社会の取組の強化へとつながり、また、2000年のG8九州・沖縄サミットでのG8首脳とアフリカ首脳(南アフリカ共和国、ナイジェリア、アルジェリアの大統領)との対話は、その後のG8サミット・プロセスで定例化するようになりました。それ以降、2002年6月のG8カナナスキス・サミットでの「G8アフリカ行動計画」の採択、2005年7月のG8グレンイーグルズ・サミットでの一連の新たなアフリカ支援策の合意、さらに、2007年6月のG8ハイリゲンダム・サミットでのアフリカの持続的成長のための支援策の合意など、アフリカ問題は近年のG8サミットの主要議題の一つとなっています。
  2003年9月に開催された第3回アフリカ開発会議(TICAD III)では、小泉純一郎総理大臣(当時)が「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」、「平和の定着」を三本柱とする日本の対アフリカ支援方針を表明するとともに、「人間の安全保障」の視点や、比較的開発の進んでいる開発途上国が開発の進んでいない開発途上国に対して援助を実施する「南南協力」を重視していくことも明らかにしました。その後、「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」(2004年11月、於:東京)、「TICAD平和の定着会議」(2006年2月、於:エチオピア)、「TICAD持続可能な開発のための環境・エネルギー閣僚会議」(2007年3月、於:ケニア)を開催し、アフリカ側の抱える課題ごとに議論を深化させる取組を行ってきました。
  また、日本の対アフリカ支援の一層の強化を図るべく、小泉総理大臣(当時)は2005年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において、2008年に第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を日本で開催することおよび今後3年間での対アフリカ政府開発援助を倍増すること、アジアの生産性運動のアフリカへの伝播を推進することを発表しました。これを受け、小泉総理大臣は、2006年4月から5月にかけてエチオピアおよびガーナを訪問し、エチオピアにあるAU本部では、平和の定着や保健分野などでのアフリカの努力を積極的に支えることとし、ダルフール問題の解決に向けた支援、小型武器対策支援、テロ対策支援、NEPAD支援、対アフリカ感染症行動計画等の支援策を表明しました。生産性運動の伝播については、アジア生産性機構(APO (注24))を通じた事業を展開しており、2006年には南アフリカ共和国でアフリカ7か国(注25)の円卓会議を開催し、各国の生産性向上のための全体計画を採択しました(注26)

< MDGs達成に向けて >

  日本はMDGs制定に先んじて第二回アフリカ開発会議(TICAD II)(1998年)の際に、水・教育・保健医療の分野で900億円の協力を表明し、TICAD III(2003年)までの5年間で、人間の安全保障の観点を重視しつつ、約460万人の人々に衛生的な水へのアクセスを、約260万人の子どもに教育へのアクセスを、約2億4,000万人の人々に保健医療サービスを提供しました。2007年7月に公表されたMDGs報告によれば、MDGs達成に向けた進ちょく状況はサブ・サハラ・アフリカにおいて遅れが最も顕著であり、例えば、一日1ドル未満で生活する人の人口比は、2004年で41.4%で、他の地域と比べて突出しています(開発途上国全体では、19.2%)。また、サブ・サハラでは、16人に1人の母親が処置・予防が可能である妊娠・出産にかかわる疾病の困難な状態により死亡しています(先進国では、3,800人に1人)。アフリカにおけるMDGs達成に向けて、引き続き国際社会全体での取組が求められています。

< 南南協力の進展 >

  南南協力については、アフリカ域内の協力の拠点を活用して周辺国を対象とした第三国研修を実施しているほか、アジア諸国と協力して技術協力を推進しています。特に日本の経済協力によって成長を遂げたアジア諸国の経験をアフリカにおいて活用するアジア・アフリカ協力は、日本ならではの協力として高い評価を得ています。具体的には、マダガスカルにおけるインドネシア人専門家による農業指導、ザンビアにおけるマレーシア人による投資環境整備提言、また、アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムなどを通じた民間貿易投資の促進など、特色のあるプロジェクトが実施されています。

< アフリカにおける援助協調の進展 >

  アフリカでは、ウガンダ、エチオピア、ガーナ、ザンビア、モザンビーク、タンザニアをはじめとして援助協調の動きが活発に進展しています。援助協調とは、複数の援助国・国際機関が開発途上国政府と開発戦略を共有し、援助国・機関同士が援助手法を調和させて協力を行うというもので、日本も積極的にこうした枠組みに参加しています。

→ 援助協調の動きについては、第I部のこちら第II部のこちらこちらも参照してください

< 最近の動き >

  2005年6月、日本とアフリカ開発銀行グループは、投資環境整備、金融セクター強化、経済・社会インフラ整備、中小零細企業支援、貿易・直接投資促進を主要5分野として、アフリカの民間セクター開発を包括的に支援することを目的とする「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA for Africa (注27))」を発表しました。このEPSA for Africaの下、これまで、セネガル、タンザニア、モザンビークにおいて主要幹線道路の整備支援を行ってきているほか、アフリカ開発銀行に対する円借款の供与を通じて、民間企業支援も実施してきています。
  また、貧困地域や紛争後、復興から開発に移行しつつある地域や国において、選定される地域社会が抱える課題や需要(基礎的教育環境の改善、安全かつ衛生的な水の供給、保健・衛生環境の改善、食料事情の改善、給食事業や栄養改善など)に応じて、必要とする協力を分野横断的に複数組み合わせて行うことで、地域社会全体の発展に貢献していくことを目指すべく、2005年2月、日本は「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI (注28))」を発表し、セネガル、ルワンダ、シエラレオネといった国々で同イニシアティブに合致する支援を実施しています。
  さらに、アフリカ地域には、重債務貧困国(HIPC (注29))として認定されている41か国のうち33か国が集中しており、日本はこれらの国々に対して債務削減問題でも、拡大HIPCイニシアティブ(注30)の枠組みにおいて最大級の貢献を行っています。

→ 債務問題への取組については、こちらも参照してください

(C)三井昌志
(C)三井昌志

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