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(3)水と衛生~第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議
水と衛生の分野については、近年、急速に国際社会の関心が高まっています。その背景には、水と衛生分野が人間の健康や福祉にとって不可欠であるとともに、多様な側面を持っているため、地球的規模での総合的な取組が必要となっていることがあります。
2002年のWSSDでは、ヨハネスブルグ実施計画の中で、MDGsの1つである「安全な飲料水」に加え、衛生分野について「基本的な衛生施設を利用することができない人の割合を2015年までに半減する」との目標が新たに盛り込まれました。
こうした中、2003年に行われた一連の国際会議においても、水と衛生分野の国際協力は重要な議題として取り上げられました。6月に開催されたG8エビアン・サミットにおいて、日本とフランスが中心となって「G8水行動計画」を策定したことは既述の通りです(I部2章1節2-(5)参照)。
囲みII-3 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)
以下では、2003年3月、日本が主催し、京都、大阪及び滋賀において開催した第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議について概説します。
■第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議
第3回世界水フォーラムには、183の国・地域から24,000人以上が参加しました。日本政府は今回のフォーラムに際し、第3回世界水フォーラム運営委員会と共同で「フォーラム参加者と閣僚の対話」を開催した他、NGO担当大使を中心として、準備段階からフォーラム期間中まで多くのNGOと連日対話を行いました。
日本政府が主催した閣僚級国際会議には、170の国・地域と47の国際機関から約130名の閣僚級参加者を含む約1,300名が参加しました。本会議において「閣僚宣言―琵琶湖・淀川流域からのメッセージ」が採択されました。同宣言は、安全な飲料水と基本的な衛生施設に関する目標の達成に向け、官民を含む様々な資源を動員して努力するという力強い政治的意思を表明しています。日本からは、家庭や近隣のコミュニティからの取組の強化、いわば草の根レベルからのガバナンスの強化について強く主張し、その結果、これらの点が閣僚宣言に盛り込まれることとなりました。その他、閣僚宣言は5つの分科会のテーマに応じ、[1]水資源管理と便益の共有、[2]安全な飲料水と衛生、[3]食料と農村開発のための水、[4]水質汚濁防止と生態系の保全、[5]災害軽減と危機管理の各課題への取組を示しています。例えば環境の面では、水質汚濁防止のための教育、生態系が持続可能な形での水利用、適切な法制度、緑化や持続可能な森林経営などについて、日本の主張を踏まえた形で盛り込まれることとなりました。

設置された井戸を利用する少女(ザンビア)
また、行動志向の観点から、閣僚宣言において、世界の水問題解決に向けた各国・国際機関の自発的な取組をまとめた「水行動集」の着実な実施を図っていくためのフォローアップの仕組みとして、新たにウェブサイトを使ったネットワークを設立することについて合意しました。このネットワークについては、その定着までの間、日本政府が責任をもって管理することとし、既にその運用が開始されています(注)。
図表II-3 水分野に関する協議が行われた主な国際会議(2003年)

なお、第3回世界水フォーラムの機会に、世界水パートナーシップ、世界水会議及び第3回世界水フォーラム運営委員会の主導によりカムドゥシュ前IMF専務理事が主宰する「水施設への資金調達に関する世界パネル」が報告書を取りまとめ発表しました。本報告書は、MDGsを達成するためには、毎年、水インフラへの資金の流れを倍増する必要があり、増額分はあらゆる資金源から調達する必要があること、援助国や国際金融機関から地方自治体への融資を可能にすること、民間水道供給業者が為替リスクの影響を受けずに現地で資本調達できるよう現地資本市場を促進すること、持続可能なコスト回収を可能にする適正な水道料金水準を確保することなどを提言しています。
これらの提言を踏まえて、世界銀行は、あらゆる資金源によるインフラ投資を最大化するための新たな制度や既存の融資・保証制度の組合せ、地方自治体への融資、外国為替リスクの軽減などについて検討しており、こうした検討の内容については、2003年9月に発表された「インフラ行動計画」に含まれています。(「インフラ行動計画」については、II部2章2節1参照。)
日本は、従来、飲料水と衛生分野への世界最大の援助供与国であり、今回のフォーラム及び閣僚級国際会議で、主催国として上述のような役割を果たすなど、水分野での国際協力に積極的に取り組んでいることを踏まえ、閣僚級国際会議の機会に、日本の水分野の経済協力における包括的な貢献策として「日本水協力イニシアティブ」を発表しました。また、日米水協力イニシアティブ「きれいな水を人々へ」(注)の進展について、協力の対象となる地域や分野について、米国と共同発表し、新たにフランスと「水分野における日仏協力」を進めることで合意し、発表しました。
(上記イニシアティブ等の詳細、水分野に対する日本の援助実績(2002年度)については、III部2章1節1-(4)~を参照。)