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(2)保 健
(イ)世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)
 日本は他の援助国に先駆けて2000年のG8九州・沖縄サミットにおいて感染症の重要性を取り上げ、沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI:Infectious Diseases Initiative)を発表し、二国間・多国間の援助を通じた包括的な取組を行ってきています。
 その流れが2001年の国連エイズ特別総会やG8ジェノバ・サミットに繋がり、2002年1月の世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の設立に至りました。このように、感染症対策に対する国際的関心は高まっており、2003年のエビアン・サミットで採択された行動計画でも世界エイズ・結核・マラリア対策基金(以下、世界基金)への支援が再確認され、世界基金に対する支援を増加するよう呼びかけが行われました。
 世界基金は世界規模での感染症対策において中心的役割を果たすことが期待されており、2003年10月の第6回理事会までに、3次にわたり121か国において計228案件、金額にして約20.5億ドルの案件を承認しています。
 日本は世界基金に対し、その設立に主要な役割を果たした国として2002年から2004年度中に2億6,500万ドルの資金的支援を行うことを誓約している(2003年12月時点)他、世界基金の最高意思決定機関である理事会の理事国として参加しています。
 日本は世界基金におけるアジア唯一の援助国として理事会で影響力を行使し、世界基金の安定的かつ持続的運営のための厳格な資金管理の必要性、支援が特定の地域や特定の疾病などに偏ることのないよう、支援の地域間バランス、三大感染症間のバランス、予防・治療・ケアのバランス、この3つのバランスが重要であることを主張しています。感染症対策には各国の人々の認識・自覚に根ざした広範な取組が必要であり、政府のみならず民間セクターも世界基金に資金やその他の方法で貢献を行い、感染症対策に向けた緊密なパートナーシップが構築されることが重要です。

(ロ)保健・栄養・人口に関するMDGsについての調和行動会合
 2003年5月に、世界銀行、カナダ、英国の共催で「保健・栄養・人口に関するMDGsについての調和行動会合」がオタワで開催されました。この会合は、国際社会がMDGsに向かってどのような行動を取っていくべきかを、保健・栄養・人口分野の目標について具体的に議論するために開催されたもので、援助国・国際機関、途上国の双方からハイレベルの代表が出席しました。
 日本からは、[1]途上国政府自身のオーナーシップとリーダーシップがより一層必要とされること、[2]保健医療システムの構築や保健行政改革などが必要なことから国別のアプローチが基本となること、一方、[3]感染症は国境を越える問題であり、地域としての対応も必要であることから地域別アプローチと南南協力の推進が重要であること、[4]各国・各地域の実情に即した多様な援助方法の活用が重要であること、の4点を基本として調和行動の枠組みを策定するべきであるとの考え方を主張しました。
 他の出席者からは、援助資金の増大を求める意見や、民間部門の役割の重要性、保健医療分野での研究開発の役割、途上国間及び国内における格差の問題などを指摘する意見が述べられました。
 この会合のフォローアップとして、2005年のMDGsのレビューに向け、保健分野のMDGs達成に向けた進捗状況をレビューし、今後の行動を促進するための方策を話し合う場として、2004年1月にジュネーブにおいて「保健分野のMDGs ハイレベル・フォーラム」が開催されました。日本からは、援助資金を有効に活用するための現場のキャパシティを向上させていくこと、とりわけ、少なくとも10年以上の長期的な計画に則って保健分野の人材育成を推進していくことの重要性を強調しました。本件会合は、2005年まで継続される見込みですが、貧困削減に直接関連する保健分野の援助を重視している日本としては、今後とも本件会合にも積極的に参加することにより、国際社会との協調を図っていく方針です。


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