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3.分野別の国際会議、取組

 MDGsは、教育、保健(特に感染症)、環境といった分野の目標で構成されています(図表II-2参照)。MDGsの達成に向けた努力の重要性が開発分野における国際社会の共通認識となる中で、MDGsに掲げられている目標の達成に向け、個別分野毎にどのような取組を行うべきかについての議論が活発化しています。以下では、主要な分野に関連する国際会議、取組について説明します。

(1)教 育
(イ)「万人のための教育(EFA:Education for All)」
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 国際社会における教育協力では、「万人のための教育(EFA)」の推進が大きな流れとなっており、二国間援助の推進のみならず、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連児童基金(UNICEF)、世界銀行といった教育関連の支援を行っている国際機関との連携がますます重要になってきています。EFAの推進機関であるUNESCOは、松浦事務局長のリーダーシップの下、EFAの達成に向けた途上国の現状と課題を確認し、EFA推進の政治的モメンタムを維持する目的から、毎年ハイレベルグループ会合を主催しています。
 2003年11月、インドのニューデリーで第3回会合が行われ、「女子教育」について幅広く意見交換が行われました。「女子教育」に関してEFAは、2015年までの教育現場における男女平等の達成とともに、2005年までに初等・中等教育における男女間格差の是正を求めています。UNESCOが発表したモニタリング・レポート*2によると、途上国の初等教育における男児の純就学率(注1)の平均は85.1%、女児のそれは78.9%で、男女間平等比率(注2)は0.93と、1990年のデータと比較して0.07ポイント改善されています。しかしながら、依然として途上国には約5,700万人の未就学の女児が存在し、未就学児童全体の約6割を占めています。特に、女児の純就学率が低い地域はサブ・サハラ・アフリカ地域で、未就学人口も約2,300万人にのぼります。



UNICEFを通じた学用品供与(イラク)
UNICEFを通じた学用品供与(イラク)

 同会合では、女子の就学を妨げている様々な要因を分析しつつ、「女子教育」が初等教育の完全普及、教育の質的向上のみならず、ひいては女性のエンパワーメントを通じた貧困削減に貢献することを再認識するとともに、2005年の目標達成に向けた更なる支援の強化を確認しました。
 日本は、このハイレベルグループ会合に、2002年にナイジェリアで開催された第2回会合より正式メンバーとして参加しています。第3回会合においては、女子教育の推進について、日本の経験(注3)から、[1]女子教育推進のための国及び地方自治体の予算の拡大、[2]各コミュニティにおける学校建設や通学路の安全確保等の環境整備、[3]女子教員の養成、[4]家庭科等実生活に役立つ科目の導入及び卒業後の進路、就職の斡旋、が重要である点を指摘しました。

(ロ)ファスト・トラック・イニシアティブ(FTI:Fast Track Initiative)
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 2002年4月、世界銀行はMDGsのひとつである「2015年までの初等教育の完全普及」を達成することを目的としたファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)を立ち上げました。FTIは、2002年3月のモンテレイ合意(途上国側のパフォーマンスを基に援助国による応分の支援をコミットする)を実現する最初のイニシアティブと位置付けられています。
 2003年3月にパリで開催された第2回FTI援助会合では、FTIを通じた支援のプロセスをまとめた「枠組み文書」を確定するとともに、ギニア、ニジェール、モーリタニア、ブルキナファソ、ガイアナ、ホンジュラス、ニカラグアの支援対象7か国への支援について議論が行われ、総額1億9,630万ドルの支援が表明されました。日本は、ギニア、ホンジュラス、ニカラグアの3か国に対して計1,520万ドルの支援を発表しました。また、イエメン、モザンビーク、ガンビアが新たな対象国として承認され、計10か国がFTIの対象国となっています。
 同年11月にオスロで開催された第3回援助会合では、発足から16か月経過したFTIのこれまでの経験と今後の課題について整理を行い、他の低所得国への支援対象の拡大、UNESCOとの連携強化、FTIプロセスの更なる明確化等につき議論されました。FTIへの支援については、必要とされている資金と、援助国側が表明している支援との間の資金ギャップに焦点が当たってきたため、このようなFTIのアプローチに対して、援助国間でも支持の度合いに濃淡が見られます。
 日本はFTIについて、[1]EFAが初等・中等教育、成人識字教育等6つの目標を掲げているのに対し、FTIは「初等教育の完全普及」のみに焦点を当てており、そのアプローチには改善の余地があること、[2]既に貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)に基づいて、現場レベルで行われている教育支援との連関性が十分図られていないこと、[3]資金の供与に議論が集中し、被援助国の援助吸収能力の十分な見極めがなされているかが疑問であること等の問題があると考えており、こうした点を援助会合において指摘してきています。

(ハ)国連持続可能な開発のための教育の10年
 2002年のWSSDにおいて、日本はNGOからの提案を受け、「国連持続可能な開発のための教育の10年」(以下、「教育の10年」)を提唱しました。この結果、同会議に出席していた各国政府及び関係国際機関の賛同が得られ、「教育の10年」の採択を国連総会に勧告する内容が実施計画文書に盛り込まれました。「教育の10年」とは2005年から2014年の10年間で、先進国及び途上国双方が持続可能な開発に貢献する教育を推進することを目的としています。これを受け日本は、「教育の10年」の提唱国として、2002年に引き続き2003年も国連総会において本件に関する決議案を提案し、40か国以上の共同提案国を得て満場一致での採択を実現しました。
 UNESCOは、「教育の10年」の推進機関として、このイニシアティブのガイドラインとなる国際実施計画を2004年6月に発表する予定です。日本は、国際実施計画の策定に対する支援を行うため、UNESCOに対して10万ドルを拠出することを決定しました。(教育分野における日本の援助の実績(2002年度)については、III部2章1節1-(1)~を参照。)


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