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第2章 開発問題を巡る主要な論点と日本の主張

 第2章では、第1章で説明した国際会議の他、国際社会において行われている議論を含め、開発を巡る主要な論点について、日本の考え方とともに説明します。

 第1章で説明したとおり、2003年の開発に関する国際会議では、国際的な合意等の実施に向けた具体的な取組のあり方について議論が行われました。特にMDGsについて、その達成に向け、国際社会として様々な議論、努力が行われています。
 日本としては、MDGsは、人類の将来の繁栄に向けての基礎的条件を整えるための重要な開発目標であり、その達成のため、被援助国、援助国、国際機関が一致団結して取り組むことが急務であると考えています。新ODA大綱においても「我が国もこのような動きに参加して主導的な役割を果たすよう努める」とするとともに、貧困削減を重点課題の筆頭に掲げています。
 その一方で、日本は、MDGsに直接含まれない分野への国際協力も重要な課題であると認識しています。そうした課題として、開発の前提になる治安・安全の問題があり、そのためには、平和構築、テロ対策が重要です。また、中等・高等教育を含む人づくり、ITを含む経済社会インフラ、水以外の環境問題等も重要です。そして、こうした取組はMDGs達成の観点からも重要であると考えています。
 また、2003年の新たな潮流として、経済成長、特にインフラ整備が、投資環境の改善等を通じて、持続的経済成長とMDGs達成に果たす役割の重要性に再び焦点が当てられることとなりました。これまでも日本は、経済成長を通じた貧困削減が重要との考え方に立って、教育や保健医療といった貧困層が直接裨益する分野に加え、経済インフラ整備といった経済セクター支援に対する援助を通じた貿易・投資の活性化、法制度整備、人材育成、民間セクターの育成及び技術移転の促進のための支援を行ってきています。そして、こうした考えに基づき、ODA、民間資本、貿易等の連携の好循環を通じた成長の重要性を国際場裡で主張してきており、東アジア開発イニシアティブ(IDEA)などを打ち出してきました。また、こうした貧困削減における経済成長の重要性に関する日本の主張、役割については、OECD-DACにおける対日援助国審査においても、高く評価されました。
 途上国の開発問題が国際社会の主要課題となる中で、2002年に欧米主要援助国は開発援助増大を発表しましたが、国際社会においては更なる開発資金が必要であるとの問題提起がなされています。日本としても、開発資金は重要であると考えていますが、そうした資金の確保のためには、ODA、途上国の国内資金に加え、投資や貿易などのあらゆる資金源を動員することが必要であり、また、そうした限られた資金が効率的・効果的に使用されるためには、途上国のガバナンスの改善、援助吸収能力の向上が必要であると考えています。
 日本は、上述のような考え方に立ちつつ、MDGs等の国際的に共有された開発目標等の達成に向け、開発資金の確保、他の援助国・国際機関や被援助国との協調と連携、貧困削減文書(PRSP)をはじめとする途上国における開発戦略の策定、援助手法や手続きの調和化といった援助効果の向上の問題、政策の一貫性、途上国における債務問題への対応など、国際社会における開発問題に積極的に取り組んでいます。

 サマルカンドの農業高校のクラスの様子 ウズベキスタン(写真提供:国際協力銀行(JBIC))
ODA写真館[4] サマルカンドの農業高校のクラスの様子 ウズベキスタン(写真提供:国際協力銀行(JBIC))

Point
第1節
・MDGsは、重要な国際的な目標。一方、平和構築、テロ対策、中等・高等教育などの人づくり、ITを含む経済社会インフラなどMDGsに直接含まれない分野への協力も重要な課題。
・日本は、経済成長を通じた貧困削減が重要との考え。経済セクター支援等を通じた貿易・投資の促進にも協力。

第2節
・2003年の国際社会の議論では、経済成長、特にインフラ整備が、貧困削減、持続的経済成長、MDGs達成に果たす役割の重要性に焦点。
・途上国の開発のためには、あらゆる資金源の動員が重要。
・貧困削減戦略文書(PRSP)の効果的実施のためには、セクター・プログラムとの整合性、被援助国の公共財政管理能力の強化などが必要。また、PRSPでは、現地化されたMDGsが反映されるとともに、政策が優先順位付けされていることが重要。
・援助の効果的実施のため、日本は、他の援助国・国際機関や被援助国との協調と連携を推進。
・日本は、手続きの調和化の議論等に積極的に参加。調和化を進める上で、日本は、「オーナーシップの尊重」、「国別の実情に応じたアプローチ」、「多様な援助手法の尊重」を重視。
・日本は、開発を統合的な視点から捉えるべきであるとの考え方。ODAとOOFの連携強化による経済成長の促進、政策意思決定における関係各省間の協議など、一貫した政策に努力。
・債務問題に関し、日本は拡大HIPCイニシアティブにおける最大の貢献国。




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