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(2) 国際的関心の高まるアフリカ問題

アフリカ連合(AU)とアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)
アフリカは、世界で最も貧困人口の割合が高く、紛争や飢饉、感染症(特にHIV/AIDS)、さらには累積債務など困難な課題が集中している地域であり、開発に関し最も深刻な課題を抱えた地域です。また、グローバル化の進展により加速しつつある世界経済統合の流れから取り残され、他の地域との格差は益々拡大しています。こうしたことから、G8サミットやヨハネスブルグ・サミットにおいて、アフリカ開発問題は国際的関心を集め、G8サミットでは「G8アフリカ行動計画」が策定されたことはすでにご紹介した通りです(第1章第2節(1))参照)。
一方で、アフリカ諸国は、2002年、地域の政治的・経済的統合をより強化するためアフリカ統一機構(OAU)からアフリカ連合(AU)へ移行しました。AUは紛争予防・解決と開発を最大の目標に掲げており、具体的な開発哲学・指針として「アフリカ開発のための新たなパートナーシップ」(NEPAD)が策定されています。NEPADは、アフリカにおける貧困の撲滅、持続可能な成長と開発、世界経済への統合を目指すアフリカ指導者達の政治的決意を具体化しており、グローバル化の中で周縁化と低開発からアフリカを救出しようとするアフリカ人自身の決意を原動力としています。初めてアフリカ自らが紛争解決と良い統治の開発における重要性を指摘し、これらを開発の前提条件とした上でミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた年平均7%の経済成長の達成を始めとする具体的目標とその手段を盛り込んでいます。さらに、NEPADの推進を確実なものとするため、「アフリカン・ピア・レビュー・メカニズム」と呼ばれる政治、経済に関する各国のガバナンスの状況についてアフリカ諸国が相互に審査するシステムの導入に向け準備をしており、アフリカによる「良い統治」の実践という観点から国際社会の関心が集まっています。NEPADは、まだ誕生したばかりであり、今後、アフリカ諸国によるNEPADに基づく取組の具体化が必要です。わが国としても、アフリカ諸国による取組を見守りつつ、必要な支援を行っていく考えです。

囲みI-14.NEPADの概要


アフリカ開発会議(TICAD)プロセス
上記のように国際社会のアフリカ開発への関心は高まりを見せていますが、わが国はこうした流れに先駆けて90年代初頭から、積極的にアフリカ開発のイニシアティブを取ってきました。具体的には、わが国は90年代、東西冷戦終焉に伴い国際社会のアフリカへの関心が低下する中、93年、98年と2度のアフリカ開発会議(TICAD)を開催し、アフリカ諸国の自助努力(オーナーシップ)と、それを支援する国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきました。特に98年に開催された第2回アフリカ開発会議(TICADII)では、包括的なアフリカ開発戦略である「東京行動計画」を採択し、その行動計画に基づき様々な協力を行ってきています。わが国は、教育・保健医療・水供給分野で98年10月から向こう5年間を目途に総額約900億円の無償資金協力を行う旨表明し、2002年10月までに合計約700億円の支援を実施しました。こうした分野に加え、現在、新たな重点分野としてHIV/AIDSを始めとした感染症対策と「アジア・アフリカ・フォーラム」に代表されるようなアジア・アフリカ間の南南協力やアフリカ域内の協力の推進、更にはアンゴラに代表される紛争終結後の平和の定着に向けた支援注)に取り組んでいます。

囲みI-15.TICADの経緯


アフリカに対する新たな支援策の発表とTICADIIIの開催
2002年は、G8サミット等でアフリカ問題が最重要課題の一つになったことを踏まえ、また次回のアフリカ開発会議(TICADIII)が2003年9月に控えていることから、わが国は、現在、TICADIIIまでの期間を「対アフリカ協力飛躍の年」として、アフリカ問題に積極的に取り組んでいます。
具体的には、2002年6月、わが国は開発支援と紛争予防・平和の定着を車の両輪とする「日本のアフリカとの連帯-具体的行動-」を発表し、開発に関しては「人間中心の開発」を重視し、教育、LDC産品に対する市場アクセスの改善、農業(ネリカ米)などに関する具体的な協力策を打ち出しました。これを踏まえ、9月の小泉総理の南アフリカで行われたヨハネスブルグ・サミットへの出席やそれに先立つ川口外務大臣のエチオピア、アンゴラ、南アフリカ訪問の機会を捉え、各国にわが国の考え方(当該具体的行動の着実な実施やG8アフリカ行動計画のフォローアップ等)を伝え、今後の具体的な協力の方策について各国の首脳・外相レベルを含む政府要人との意見交換を行いました。

囲みI-16 日本のアフリカとの連帯(概要)
コラムI-6 ネリカ米


2003年9月末には、わが国は第3回アフリカ開発会議(TICADIII)を開催し、[1]NEPADとの連携、[2]国際社会とのパートナーシップ、[3]わが国の対アフリカ支援イニシアティブ、[4]市民社会と民間セクターの参加を4本の柱として幅広く議論していく予定です。特にTICADIIの際に採択した東京行動計画のフォローアップ及び成果の発表を行うとともに、これまで10年にわたりわが国がTICADプロセスを通じて国際社会において確固たる地位を確立してきたアフリカとの協力をまとめた「10周年宣言」を発表する予定です。

コラムI-7 川口外務大臣のアフリカ訪問


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