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町村外務大臣演説
第162回国会における町村外務大臣の外交演説
2005年1月21日
(英語版はこちら) 第162回国会の開会にあたり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。 まず、今般のインドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波により犠牲となった方々、ご家族を亡くされた方々に深く哀悼の意を表します。また、いまだご家族の行方が判明しない方々のお気持ちは察するに余りあります。政府としては、引き続き、安否不明となっている邦人の確認に全力を挙げるとともに、インド洋沿岸諸国に対し、資金、人的貢献、知見の三点で同じアジアの一員として最大限の支援を実施してまいります。また、現在、神戸で行われている国連防災世界会議において、今般の津波も教訓にしつつ、全世界の自然災害による被害の軽減を目指す21世紀の新しい防災指針の策定とインド洋地域における津波早期警戒メカニズムの速やかな構築に努めてまいります。 (序) 本年は終戦60年という節目の年であります。振り返れば、我が国は、戦後の荒廃の中から奇跡的な経済発展を遂げ、国力に相応しい国際貢献を通じ、平和を希求する国家として国際的地位を占めるに至りました。この背景には、我が国国民自身の努力はもちろん、我が国が友好国及び近隣国と築き上げてきた良好な関係があります。特に、湾岸戦争を契機に我が国の国際平和協力のための活動も質量共に拡大し、国際的な評価も高まりつつあります。 一方、我が国をめぐる国際安全保障環境においては、東アジアで朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題等の不安定な要素が存在していることに加えて、テロや大量破壊兵器等の拡散を始めとする新たな脅威が顕在化しています。現在、国際社会は、新たな国際秩序を模索しています。我が国は、こうした国際環境を踏まえた安全保障政策の推進のため、新たな防衛計画の大綱を策定するなど、時代に即した対応をとりつつ、平和で安定した国際秩序が形成されるよう積極的な外交を展開してきています。我が国が平和国家として還暦を迎えた今、まさにその外交の真価が問われています。 (国連改革と我が国の安保理常任理事国入り) 戦後、我が国は国連への加盟をもって国際社会に復帰しました。我が国は、平和主義と国際協調という方針に基づいて、一貫して国連を重視し、国連を通じて国際貢献を行ってきました。国連も還暦を迎える本年は、21世紀の世界を反映し、山積する課題に効果的に対処できる機関へと進化するための歴史的な転換期にあります。安保理改革の必要性が叫ばれる中、我が国としては、様々な課題への着実な取組を通じて、常任理事国入りの実現に向けて最大限努力してまいります。 我が国が常任理事国となることは、主要な国際問題に関して国連の政策決定過程に深くかつ恒常的に関わることが可能となり、我が国の国益をより一層効果的に確保することに繋がります。また、安保理におけるアジアの代表性が高まることでその信頼性を高め、我が国の国際貢献を一層強化させることを通じ、安保理の実効性を高めることになります。 我が国は、本年より非常任理事国として活動していますが、今後二年間の任期では、PKO作業部会の議長国として、特に平和の構築の分野で種々尽力していく考えです。 (日米関係の強化) 日米関係は我が国外交の要であり、政治・経済等幅広い分野での同盟関係の一層の強化は、アジア太平洋の平和と安定に資するのみならず、我が国が世界の平和と繁栄のために外交を展開していく上でも不可欠です。我が国としては、日米安保体制の信頼性の向上を目指すとともに、国際協調の下で「世界の中の日米同盟」により諸課題に日米が協力して取り組んでまいります。現在、米国は、新たな脅威に対応すべくグローバルな軍事態勢の再編に取り組んでいます。我が国としては、在日米軍の兵力構成の見直しに関し、21世紀の国際情勢に適応した我が国の安全保障の確保の観点から米国との協力を進め、米軍駐留による抑止力を維持するとともに沖縄等の地元の過重な負担の軽減を促進すべく、引き続き米国と協議してまいります。同時に、普天間飛行場の移設・返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告については、引き続きその着実な実施に努めていく考えです。 (近隣諸国及び主要国等との関係の増進) 我が国の安全と繁栄のためには、中国や韓国との関係、「共に歩み共に進む」パートナーであるASEAN諸国、さらにはインド、豪州といった近隣諸国並びに欧州や中南米等との関係を強化していくことが不可欠です。 本年は初の東アジア・サミットが開催される予定ですが、現在、アジア諸国の地域協力が東アジア共同体を視野に深化しつつあります。アジア近隣諸国との経済連携協定の締結や、国境を越える諸問題についての機能的な協力を様々な分野で重層的に推進することは、域内で同じ価値観を共有する土台を築き、平和と繁栄を確保していく観点からも望ましく、我が国としても積極的に貢献していきたいと考えています。また、本年は、「日EU市民交流年」でもあり、5月にはASEM第7回外相会合を京都で開催する等、欧州と我が国を含むアジアとの間の対話と協力の強化を図ります。 アジア地域内の経済活動や地域協力が進展する一方で、我が国の経済安全保障の観点から、我が国の海洋権益の確保に努めることも重要であり、我が国周辺の海洋資源や大陸棚の調査を進めつつ、これに万全を期してまいります。 我が国は、中国との関係を最も重要な二国間関係の一つとして重視しています。中国は我が国にとり将来に向けての大きくかつ貴重な「機会」です。中国との間で経済関係や人的交流が急速に進展していることは、アジア太平洋の安定と繁栄の観点からも歓迎すべきことであり、今後とも貿易・投資・文化交流の拡大等を推進していく考えです。同時に、東シナ海における資源開発をめぐる問題、海洋調査船の問題等、日中間に存在する種々の懸案にも適切に対応してまいります。個々の分野で意見の相違があっても、真剣な対話を深めることを通じてそれら諸課題を解決し、未来志向の関係を確立していく考えです。 近年、関係が顕著に緊密化しつつある韓国とは、「シャトル首脳会談」の継続開催等、先の盧武鉉大統領訪日の成果を活かして、未来志向の関係を更に深化させてまいります。国民レベルでの相互理解と交流の促進の観点から、「日韓友情年2005」を成功させるとともに、羽田・金浦間の国際チャーター便の増便等についても具体化を進めたいと考えています。 北朝鮮に関しては、引き続き「対話と圧力」の基本方針の下、日朝平壌宣言に則って諸懸案の包括的な解決を図るべく粘り強く取り組んでいく考えです。拉致問題は、国民の生命と安全に関わる重大な問題です。昨年末、これまでの一連の北朝鮮の不誠実な対応について、政府は、北朝鮮側に対し、誠に遺憾である旨厳重に抗議した上で、迅速かつ誠実な回答がない場合には厳しい対応をとる方針であることを通告し、生存者の帰国と真相の究明に向けた速やかな対応を求めているところです。また、我が国の安全保障にも直結し得る北朝鮮の核やミサイルをめぐる問題については、具体的進展の見られない現在の膠着状態を解消すべく、六者会合の早期開催を目指し、本件問題の解決に向けて全力を注いでいく考えです。 ロシアとの関係では、本年は日露修好150周年に当たりますが、戦後60年を経た今日に至っても領土問題をめぐって双方の主張が未だ平行線を辿っている現状を打破することが必要です。先般の私とラヴロフ外相との会談では、両国の立場の隔たりを埋めるため真剣な話し合いを続けていくことで意見が一致しました。引き続き、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、精力的に交渉を進めるとともに、幅広い分野で両国間の協力を進め、プーチン大統領の訪日及びその後の交渉に繋げていきたいと考えています。 (中東地域の平和と安定への取組) 中東地域は、我が国の国益にとって戦略的に重要であり、その平和と安定に向けた協力を一層進めていくことは、我が国外交の重要な課題です。今月末イラクにおいて国民議会の選挙が行われる予定ですが、イラクがイラク人自身の手で新しい民主主義国家として復興を果たせるよう、国際社会と協力しつつ、昨年末に派遣延長を決定した自衛隊による人的貢献とODAによる支援を「車の両輪」として引き続き復興支援を進めていく考えです。 中東和平問題については、先般の選挙で選出されたアッバース・パレスチナ自治政府長官及び新たに成立したイスラエル連立政権の下で和平プロセスを前進させる歴史的な機会が存在しています。私は、先般のイスラエル及びパレスチナ自治区訪問で、双方の関係者に「ロードマップ」に沿った和平努力を働きかけるとともに、我が国が積極的役割を果たす用意がある旨伝えてきたところです。 さらに、着実に成果が出ているアフガニスタンの復興についても、引き続き平和構築の努力をNGOや国際機関等とも協力しながら継続していく考えです。 (開発問題とアフリカ支援) 本年は、G8サミットや国連ミレニアム宣言のレビューに関する国連サミットで開発問題に大きな焦点が当てられます。我が国としても貧困削減を始めとする途上国の開発問題に積極的に取り組む考えであり、その際、効率的かつ戦略的にODAを実施し、諸課題の解決に尽力いたします。 中でも、アフリカ支援については、これまでも「アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄なし」との考えの下、我が国独自のTICAD(アフリカ開発会議)プロセスを通じて取り組んでまいりました。「アフリカの年」と言われる本年、政府としては、アフリカ連合等による自助努力を重視しつつ国連とも協力しながら、その発展に向け、更に本腰を入れていく考えです。 (地球的規模の問題への取組) エイズ等の感染症や環境問題といった地球的規模の問題は、特に途上国の発展にとって大きな阻害要因となっています。これらの問題には人間の安全保障の視点から取り組んでまいります。また、本年は、京都議定書が発効し、さらにG8サミットでも気候変動が主要な議題となりますが、政府としては、同議定書に定められた温室効果ガス排出量のマイナス6%の削減を達成するとともに、すべての国が参加する共通ルールの構築に向けて努力してまいります。 (人身取引への対策の推進) 人身取引は、津波の被災国における子どもたちの被害にも現れているとおり、極めて深刻な問題です。政府は、昨年12月に政府が決定した人身取引対策行動計画を踏まえつつ、その防止・撲滅と被害者保護に全力で取り組んでおり、その一環として、現在、国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書の締結につき今国会でご承認を頂くべく、作業を行っております。 (国際社会の発展と繁栄のための取組) 国際社会が安定的かつ持続的に発展することは我が国の繁栄のための前提です。我が国は、国際社会における多角的自由貿易体制の維持・強化のため、12月に行われる香港閣僚会議の成功、ひいてはWTOドーハ・ラウンド交渉の最終合意に向けて尽力いたします。 経済連携の促進についても、現在交渉中のフィリピン、タイ、マレーシア、韓国に加え、ASEANやその他の東アジア諸国との将来の締結をも視野に入れつつ、積極的に取り組んでまいります。自由主義経済の理念の下、我が国及び相手国の構造改革の推進に資するような形で、双方の市場や社会が更に開かれたものとなるよう一層努力していく考えです。 (軍縮・不拡散のための取組) 現下の不安定な安全保障環境において軍縮・不拡散体制の強化に努めることは、我が国の安全保障上重要です。特に、大量破壊兵器の拡散の問題に対処することは喫緊の課題であり、5月のNPT運用検討会議やG8サミット等も活用しつつ、積極的に取り組んでまいります。 (魅力ある日本の対外発信) グローバル化の進展に伴い、今や世界中で日本人が様々な分野で活躍していることは極めて望ましいことです。政府としても、我が国の政策や文化、価値観、魅力等を積極的かつ効果的に対外発信し、これらを大いに活用して「幅と奥行き」のある外交を展開していきたいと考えています。また、ビジット・ジャパン・キャンペーンを進めるとともに、本年開催される「愛・地球博」等も活かしつつ、市民レベルでの相互理解の増進に努めてまいります。 (対外情報収集・分析能力の強化) 我が国が、国際社会における様々な課題に迅速に対応しつつ、戦略的な外交を展開していくためには、優れた対外情報収集・分析能力が必要不可欠です。対外情報収集の機能と体制のあり方についても、大局的見地からその着実な強化を進めてまいります。 (結語) 内閣制度が発足した120年前、初めてグローバリズムの嵐に晒された明治政府は、国際社会の中で生き抜くために、経験もノウハウも情報も不十分の中で、あらゆる努力と工夫を重ねていました。 60年前は、我が国は、未曾有の混乱の中から、厳しく険しい国際社会への復帰の道を歩み始めました。 今日、我が国が持てる力を発揮し、アジアに、世界に貢献するための新たなる60年の外交へ向けての環境は、先人達の苦難、苦悩の時代に比べれば遙かに恵まれております。「セルフ・ヘルプ(自助論)」で有名なスマイルズは「空高く飛ぼうとしない精神は、やがて地に墜ちる」と言っております。私は、国民のご理解を頂きつつ、創造的で志の高い外交を展開する決意です。国民の皆様と議員各位のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。 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町村外務大臣演説 / 平成17年 / 目次 |
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