小泉総理大臣演説
アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理演説補足資料
(注)本資料は、小泉総理の演説内容等を補完し、詳細に明記したものであり、アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理のイニシアティブとして活用して頂いて結構です。なお、*が付いている箇所は小泉総理が直接言及したものの詳細です。
I. 開発支援
日本のODA
- 小泉総理より、「ミレニアム開発目標(MDGs)に寄与するためODAの対GNI比0.7%目標の達成に向け引き続き努力する観点から、我が国にふさわしい十分なODAの水準を確保していきます」と表明。
(参考1)我が国の対アジア・アフリカODA
我が国は、1978年以降、アジアに対するトップ・ドナー国。1960年からこれまでのアジア向けODAの累計は1,000億ドルを越える。我が国のODAはインフラ整備から人造りまで、アジア各国の経済発展及び貧困削減に大きく貢献。特に、97年のアジア通貨危機の際には、総額800億ドルの支援を表明し、アジア諸国の危機の克服と成長軌道への復帰に貢献。
対アフリカODAは、1960年からこれまでの累計約240億ドル。TICADプロセスを通じ農業、水、教育、保健分野の他、紛争地域での人道・復興支援等を実施。
防 災
- 先のスマトラ沖地震及びインド洋津波被害に対する復旧・復興や津波早期警戒システムの構築を含め、防災・災害復興対策については、アジア・アフリカ地域を中心として今後5年間で25億ドル以上(無償資金協力15億ドル以上を含む)の支援を行う。
「日本の支援により10年かけて完成した護岸計画により、マレの人々に安全が提供された。」 |
(ガユーム・モルディブ大統領 05年2月2日) |
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(参考2)インド洋津波被害に対する我が国の支援
05年1月、5億ドルの緊急人道支援を供与。この他、被災国に自衛隊を含む緊急援助隊を派遣。
同月18日、神戸において「国連防災世界会議」を開催し、早期警戒システムの構築への協力を表明。
(付属資料1)
(参考3)3月末のスマトラ沖大地震における早期警戒システムの暫定運用
神戸の「国連防災世界会議」で合意されたインド洋における早期警戒システムが本格的に構築されるまでの間、気象庁はホノルルの太平洋津波警報センターと協力して暫定運用を開始。3月末のスマトラ沖大地震に際し、インドネシア及び周辺10ヵ国に津波監視情報を提供。
(付属資料2)
後発開発途上国(LDC)産品に対する市場アクセスの拡大
- 小泉総理より、「後発開発途上国の自立を支援するため貿易面でも、これらの途上国産品に対する市場アクセスの拡大に努めます」と表明。
(参考4)LDC産品に対する市場アクセスの拡大
途上国の人材育成を通じて市場アクセス拡大の努力を支援することなどがある。
アジア向け支援
アジアにおける新たなパートナーシップの構築
- アジアの途上国の底上げや能力強化等開発格差の是正、経済連携の推進、貿易投資を通じた持続的成長等のための具体的支援策を12月までに検討し、アジアにおける新たなパートナーシップ構築を後押し。
(参考5)アジアにおける開発格差
カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムのASEAN新規加盟4カ国のGDPは、ASEAN全体のそれのわずか8%。2003年のミャンマーの一人当たりGDP(約195ドル)はシンガポールのそれ(約2万ドル)と100倍以上の開き。南アジアでもネパール(約240ドル)、バングラデシュ(約380ドル)と低い。
国境を越える犯罪対策
- テロ、海賊、人身取引、薬物などの国境を越える犯罪は、地域への重大な脅威であり、経済発展の阻害要因。
- 同問題の対処のため、能力強化、機材供与等の支援を強化。
(参考6)国境を越える犯罪に対する我が国の取り組み
2002年のバリ島爆弾事件では約200名が死亡。マラッカ海峡の海賊事件は増加傾向(2002年21件→2004年45件)。
テロについてはAPECやASEAN地域フォーラム(ARF)の取り組み、海賊についてはアジア海賊対策地域協力協定、人身取引についてはバリ・プロセスなど地域・国際枠組みがある。我が国は、こうした枠組みを活用・連携を図りつつ、海上保安、税関等の法執行面の能力強化や金属探知器、鑑識機材等の機材供与を実施。
アフリカ向け支援
「日本のアフリカ開発へのコミットは開発問題について協議する重要なフォーラムとなっているTICADからも明らかである。」 |
(ムベキ南ア大統領) |
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TICAD IV開催(2008年)
- 小泉総理より、我が国が「2008年にTICADIV(第4回アフリカ開発会議)を開催する・・・」旨正式に表明。
(参考7)TICAD(アフリカ開発会議)
93年に開始されたアフリカ開発のための包括的なフォーラム。日本、国連等が共催し、93年、98年、03年に首脳級会合を東京にて開催。アフリカ、欧米ドナーに加え、アジアの新興ドナーも含む100ヶ国近くが参加する世界最大級のアフリカ開発フォーラム。
対アフリカODA倍増
- 小泉総理より、「今後3年間でアフリカ向けODAを倍増し、引き続きその中心を贈与(grant aid)とする考えである・・・」旨表明。
<支援例>
農業
- 「緑の革命」をアフリカで実現すべく、ネリカ米の事業の拡大を始めとする農業生産性の向上、農村開発への支援を拡大。
(参考8)ネリカ米は高収量のアジア米と病害虫や干ばつへの耐性の高いアフリカ米の交配種
貿易投資(04年11月に開催した「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」のフォローアップ
- 対アフリカ貿易投資促進のための政策支援や技術協力などサプライ・サイドに焦点を当てた支援。
- 貿易投資促進のための研修や情報発信のための体制整備
アフリカ開発銀行との連携によるアフリカ支援
- アフリカの民間セクター開発や投資環境整備のため次の支援策を提案。アフリカ開発銀行等と調整中。1)アフリカ開発銀行に多数国の拠出による特別基金を5年間で2億ドル規模を目指し設置(我が国は2割相当の貢献の用意あり)、2)アフリカ開発銀行を活用して、我が国の円借款を5年間で10億ドルを上限として供与。
アフリカ債務問題への取り組み
- 多くのアフリカ諸国を含むHIPC(重債務貧困国)イニシアティブにおいて、我が国は全債権国の中で最大の貢献(G7の約4分の1)をしており、同イニシアティブを積極的に推進していく。
アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI)
- 人間の安全保障の考えに基づき、地方農村の自立のための基盤整備や能力強化等を組み合わせ、地域社会の開発を支援するイニシアティブ。(付属資料3)
「「人間の安全保障」において重要なのは、地域社会が自ら学校、給水、保健施設等を運営する能力を身につけ、オーナーシップを獲得することです。」 |
(緒方貞子JICA理事長) |
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<支援策例>
セネガル・タイバンジャイ村の実例
タイバンジャイ村では、日本のODAによる給水塔を管理する組合活動を通じて地域社会の能力を強化。さらに強化された地域社会のオーナーシップを基礎として、養鶏・畜産等の収益事業を実施したり、公共施設に水を無料で配布したりするなど、地域社会の基盤整備への投資を行ったりといった自発的取り組みが行われている。
蚊帳の供与(マラリア対策)
- アフリカにおいては現在約4,000万人がマラリアに罹患、毎年約100万人が死亡。5歳以下の子供がその大半。我が国は、ミレニアム・プロジェクト報告書のクイック・ウィンへの迅速な対応として、07年迄に1,000万張の長期残効型の蚊帳の供与を決定(2月)。
(参考9)長期残効型蚊帳の特徴
蚊帳に防虫剤を練り込んであり、洗浄しても落ちず、防虫剤が徐々に放出されるので、最低でも5年は効果が持続。耐久性、安全性、効力の高さから世界保健機構(WHO)に認可されており、国連児童基金(UNICEF)、WHOが普及を推進。
アジア・アフリカ(AA)協力
- AA協力推進の枠組みとして国際的に高い評価を得ているTICADを軸として、AA協力を制度的に強化・推進。
- AA協力などを通じ、アフリカに対し今後4年間で一万人を目標として人材育成を実施。
「アジア青年海外協力隊」の創設
- AA協力の新たな推進役として、アジアの若者をアフリカに派遣し、青年交流と人造りを同時に推進。
- 国連ボランティア計画(UNV)の派遣枠組みを活用して派遣。現場で青年海外協力隊を含む日本の青年との連携も図る。
(参考10)国連ボランティア計画(UNV)
1971年以降、開発支援や紛争地域での緊急援助、その後の平和構築活動などに貢献する意思のある国連ボランティアを世界中から募り、近年では年間5,000人以上を世界各国(2003年142ヵ国)に派遣。我が国も1994年以降任意拠出によりUNVを支援。
(参考11)アフリカにおける日本の青年海外協力隊
1965年以来、アフリカ諸国22ヵ国に対して派遣した青年海外協力隊は累計で7,980名(うち女性2,524名)。2005年2月末現在669名(293名)を派遣中。
アジア生産性運動のアフリカへの伝播
- 生産性運動は、日本を含むアジアの持続的経済発展の原動力。この生産性運動をアフリカにも伝播し、官民挙げて経営技術の定着等を支援。
(参考12)アジア生産性運動の概要
1955年に設立された日本の社会経済生産性本部及び、その後1961年に設立された国際機関・アジア生産性機構が中心となり、アジア国民に自立意識を根付かせるとともに、「KAIZEN(日々の創意工夫の習慣づけ)」や「5S(「整理」、「整頓」、「掃除」、「清潔」、「しつけ」)」をはじめとする生産管理等の経営技術を定着させることに成功。アジア生産性機構は、1961年から2001年までの40年間で、専門家派遣、各種訓練コース、セミナー等の能力開発事業等、約5,000件を実施し、計約37,000名が関連事業に参加。
TICADエクスチェンジ
- アジア・アフリカ間の貿易・投資は、過去10年間で2倍に成長。TICADでは、両地域間のビジネスを一層活性化させるべく、ITを活用して貿易・投資関係の情報交換、官民両レベルの交流促進のためのネットワークを提供。
(参考13)アジアとアフリカの貿易
92年から02年までのサハラ以南アフリカの東アジア(含む大洋州)向けの輸出の伸びは、年平均27.6%(対世界8.8%)。同様に東アジアからアフリカは年平均15.8%(対世界11.2%)の伸びを示している。(04年世界開発指標)
II. 「平和の構築」支援
「紛争に苦しむ国々に対し平和の定着や国づくりのための協力を強化し、国際協力の柱とする」 |
(小泉総理、02年5月) |
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スーダン南北和平
- 1月の南北包括的和平合意成立を受け、ODAを通じ当面1億ドルの支援を実施する。
- PKO参加のアフリカ諸国部隊に対し、国連を通じ四輪駆動車、トラック、地雷探査装置、発電機、テントを供与(現在国連との間で調整中であるが、現時点で試算する限り200万ドルに相当すると見込まれる)。
- スーダンPKO(国連スーダンミッション)へ文民政府職員の派遣を予定。
中東和平
- パレスチナ新政権の基盤強化のため、2004年度支援を9,000万ドルに増額(前年度比約3倍)。
- 今後、1)民生安定に資する人道支援、2)財政改革等の改革支援、3)紛争当事者間の信頼醸成措置支援、4)中長期的なパレスチナ経済の自立化支援を積極的に行う。
アフガニスタン
- 9月の議会選挙実施など本格的な国造りが進むよう、元兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰(DDR)や地方の復興開発などを積極的に支援。
(参考14)これまでの日本の貢献
02年1月、アフガニスタン復興支援東京会議を主催。和平プロセス支援、DDRを含む治安改善支援、インフラや地方開発などの復興支援など、これまでに8.7億ドルの支援を実施。
アフリカ
- アフリカにおいて多くの紛争が和平に向けて大きく前進していることを受け、3月、アフリカの14ヶ国を対象に約6,000万ドルの支援を実施。(付属資料4)(PDF)
- 今後も紛争直後から切れ目ない支援を実施し、復興そして開発支援につなげる。
「平和構築基金」構想への協力
- 「平和構築のための任意の常設基金」設置構想について、主導的役割を果たす用意あり。。
(参考15)3月20日のアナン事務総長報告付属文書第2章パラ6に「平和構築のための常設基金」の設置と支援に同意する旨言及。
III. 文化協力
「多様な文化と歴史的経験を育て、大切にし、支援することは不可欠である。文化的継続性なしに単に開発を考えることはできない。」 |
(ウォルフェンソン世銀総裁) |
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世界文明フォーラムの開催
- 7月に東京において、世界文明フォーラムを開催。参加者は、各文明(地域)を代表する学識関係者、ビジネスリーダー、政治家、ジャーナリスト、文化人。
- 文明間の平和的な知的対話の推進を通じ、伝統を維持しつつ近代化に取り組む各国の経験を共有し、文化の多様性を踏まえたパートナーシップを強化
<アジア・アフリカに対する文化支援>
- 文化無償資金協力
- アジア・アフリカ向けは、過去5年間で、172件約5,600万ドル
- 「王家の谷」(エジプト)、「ミーソン遺跡」(ベトナム)、「バム遺跡」(イラン)等の保存・修復・整備
- ユネスコ日本信託基金を通じて、アジア・アフリカの有形、無形文化遺産の保存・振興に貢献。
- 有形遺産(AA諸国支援額:約4,428万ドル)
→アンコール遺跡(カンボジア)、ガンダーラ遺跡(パキスタン)、アボメイ王宮(ベナン)、サンセバスチャン砦(モザンビーク)他
- 無形遺産(AA諸国支援額:約487万ドル)
→イフガオ族の歌(フィリピン)、ワヤン人形芝居(インドネシア)、ソソバラ文化空間(ギニア)、ザフィマニリ彫木技術(マダガスカル)他
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