7. 大洋州地域

実績

日本の大洋州に対する2007年の二国間政府開発援助は、約7,029万ドルで、二国間援助全体に占める割合は約1.2%です。

大洋州地域の特徴

大洋州地域の島嶼国・地域は、日本にとって太平洋を共有する隣人であるとともに、歴史的に深いつながりがあり、良好な友好関係を有しています。また、これらの国々は広大な排他的経済水域(EEZ注177))を擁し、日本の遠洋漁業の重要な漁場を提供するとともに海上輸送の要衝でもあり、この地域の平和と繁栄は日本にとって極めて重要です。

大洋州地域は、比較的新しい独立国が多く、社会・経済的に自立した国家の構築が急務となっています。加えて小規模経済、第一次産業依存型経済、国家の地理的拡散性、国際市場へのアクセス困難、自然災害へのぜい弱性、国土喪失の危機など島嶼国特有の共通問題を有しています。このほか、フィジーにおける政変や、ソロモンにおける政情不安など民族・部族間の対立を基礎とする問題、トンガにおける暴動などといった民主化にかかわる問題も抱えています。日本は、このような事情を踏まえ、大洋州諸国の良きパートナーとして各国の個々の事情および地域共通の問題を考慮した援助を実施しています。

日本の取組

大洋州における政治的安定と自立的経済発展のためには、社会・経済的なぜい弱性の克服や地域協力が不可欠です。日本は、大洋州諸国の首脳で構成される地域協力の枠組みである太平洋諸島フォーラム(PIF注178))との協力を進めてきており、1997年以降、3年ごとに日本とPIF諸国との首脳会議である太平洋・島サミットを開催しています。

2006年に気候や海洋性などの点で大洋州諸国と共通の特徴を持つ沖縄にて開催された第4回太平洋・島サミットでは、日本とPIF間の新たな協力の枠組みである「沖縄パートナーシップ」を採択しました。このなかで、「経済成長」、「持続可能な開発」、「良い統治」、「安全確保」、「人と人との交流」という5つの重点政策目標の下、太平洋島嶼国の自助努力に向けて、2006年から3年間で総額450億円規模の無償資金協力などを行うこととしています。

日本は、第4回太平洋・島サミットで発表された5重点政策目標を踏まえ、各国の国家開発計画や発展段階に応じた需要、各国それぞれの諸事情に配慮した援助を行っています。太平洋島嶼国は多数の島からなり、経済活動や生活を送る上で海上輸送は不可欠なことから、例えば、日本は、バヌアツの玄関口であるポートビラ港の改善を支援し、経済発展を後押ししています。また、燐鉱石の枯渇により経済が破綻状態にあるナウルについては、経済構造改善のため、ノン・プロジェクト無償資金協力による支援などを行い、住民生活の基盤の構築を支援しています。

さらに、大洋州島嶼国は、気候変動の影響に最もぜい弱です。2008年3月には、ツバルに対して「クールアース・パートナーシップ」に基づき、気候変動問題への対策に関する協力可能性を調査するための調査団を派遣し、この調査結果等に基づき、海岸保全施策、防災、代替エネルギーの3分野における支援を検討しています。

「クールアース・パートナーシップ」の取組については、こちらを参照してください。

広域的な支援と他機関との連携

各国ごとにきめ細かな支援を行う一方、地域の共通課題に対しては、広域的な支援が有効です。大洋州島嶼国は教育や環境、保健分野などにおいて共通の開発課題を抱えています。これらの国々の持続可能な発展のためには、各国個別への協力のみならず、大洋州地域全体への広域的な利益を勘案した地域協力を行う必要があります。例えば、フィジーに本部がある南太平洋大学(USP注179))は、日本の無償資金協力により、大学内に情報通信技術に関する研究などを行うセンターの建設および関連機材の供与を行うことが決定(注180)しています。各国には、USPへの遠隔教育ネットワーク施設の支援を通じて、島嶼国の人々に広く高等教育を受ける機会を提供しています。また、廃棄物対策の広域的協力も実施しています。例えば、サモアにある地域国際機関の南太平洋地域環境計画(SPREP注181))への専門家派遣や廃棄物対策研修などを通じて、廃棄物対策マスタープランの作成を実施することによって地域の環境問題解決に貢献しています。感染症対策では、域内の予防接種事業強化のため、ワクチン供与、低温流通体系の保守、医療廃棄物の安全廃棄を含む安全注射を中心とした予防接種拡大計画の協力をWHOUNICEFなどと共に実施し、地域のはしかおよびB型肝炎に対する予防接種率の向上、フィラリア撲滅、HIV/エイズ予防に向けた支援を行っています。

国際機関との協力という面では、2007年に創設された「ADBとの円借款協調融資促進枠組み(ACFA注182))」による最初の案件がサモアで実施されることとなりました。この枠組みは、アジア開発銀行(ADB)との間で打ち上げた「アジアの持続的成長のための日本の貢献策(ESDA注183))」の下で投資促進および省エネルギー(省エネ)促進を目的として創設されたものです。日本は、投資や省エネなどの促進のための共通計画を策定し、大洋州および中央アジアを主な対象として、5年間で20億ドルの円借款を実施する予定です。2007年12月、サイクロンなどによる停電や原油価格高騰による電力料金の値上げなどにより、不安定な電力事情が続いているサモアに対して、高効率の発電所の建設や改修、電線の地中化による災害対策、効率性の高い送配電線の整備などを対象とした円借款の供与を決定しました。

図表III-21 大洋州地域における日本の援助実績