気候変動の影響を最も受けやすい大陸の一つといわれているのが、アフリカ大陸です。アフリカは、コンゴ盆地という世界で2番目に大きな熱帯林を擁する一方で、世界最大のサハラ砂漠も抱えています。そして、気候変動の影響による干ばつ、食料生産の減少、豪雨の増加や海面上昇による洪水、生物多様性の損失、マラリアなど疾病の分布の変化などに対し、概して極めてぜい弱であり、またこれらに適応する能力が十分に備わっていません。
気候変動への適応策は、アフリカの成長への障害を除去することにつながるため、アフリカにおける開発を進める上で重要な課題になりつつあります。第I 部で述べたように、日本は、アフリカのみならず開発途上国の排出削減への取組を支援し、気候変動による悪影響を受ける途上国を支援するため、「クールアース・パートナーシップ」を発表し、途上国との連帯を強化して、地球規模の温室効果ガス削減を目指していく考えです。
日本は、この「パートナーシップ」をアフリカ諸国との間で積極的に構築していくことを通じて、アフリカ諸国の深刻な気候変動対策を積極的に支援していきます。TICAD IV開催に先立ち、アフリカ諸国に対し、「日・アフリカ・クールアース・パートナーシップ」への参加を呼びかけました。このような取組について、TICAD IVでは、「議長サマリー」において、「日・アフリカ・クールアース・パートナーシップ」を歓迎するとの言及がありました。
また、この「パートナーシップ」に基づく具体的な支援の一環として、日本とTICAD IVの共催者の一つである国連開発計画(UNDP)は、TICAD IVにおいて、「アフリカの気候変動対策に関するパートナーシップ構築のための『日・UNDP共同枠組』」の構築を発表しました。この共同枠組は、温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させ、自ら気候の安定化に取り組むアフリカ諸国の気候変動対策のために、日本とUNDPが共同で総額1.2億ドル以上の支援を行うものであり、具体的には、気候変動の適応に関する国家の能力開発支援、気候変動の経済評価に基づく貧困削減戦略の見直し、気候変動対策の研修などを実施するものです。
このような取組の下、日本は、2008年10月現在、アフリカ大陸の約20か国との間で、「クールアース・パートナーシップ」に基づく取組を進めており、具体的には、セネガルおよびマダガスカルに対し、それぞれ8億円および9億円のノン・プロジェクト無償資金協力を行うことを決定したほか、ナミビアおよびニジェールに対しては、UNDPを通じ「コミュニティ・ベースによる気候変動への適応プロジェクト」に対し40万ドルを拠出することとしています。日本としては、これらの支援がアフリカ諸国の気候変動へのぜい弱性の克服の一助となり、また実効的な次期枠組みの構築に向けた積極的関与の促進につながることを期待しています。