2. 水・衛生分野の支援

(1)現状

ミレニアム開発目標(MDGs)が掲げている目標7「環境の持続可能性の確保」には、「安全な飲料水および基礎的な衛生施設(トイレなど)を継続的に利用できない人々の割合を2015年までに半減する」とのターゲットが設定されています。これについては、特にサブ・サハラ・アフリカにおける進捗が最も遅れており、国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書2006」によると、このまま進捗状況に変化がなければ、同地域の目標達成まで、安全な水へのアクセスについては2040年、衛生施設へのアクセスについては2076年までかかってしまうという試算がなされています。

このような状況にあるアフリカに対し、日本は飲料水・衛生の分野において、村落給水事業などを中心に、二国間援助国による援助の約19%(2001年〜2005年)に当たる支援を実施しています(ドイツ(約23%)に次いで第2位)。

(2)日本の基本的な考え方と具体的支援策

2008年2月、高村外務大臣(当時)は「貴重な水の有効利用のために〜安全な水と衛生施設へのアクセス拡大に向けて〜」と題する政策演説を行い、①循環型水資源管理を通じて水資源の持続的利用を追求すること、②日本が有する水分野における高い技術と知見を世界の人々と共有していくこと、③人間の安全保障の実現のために安全な飲料水や基礎的衛生施設の利用、また手洗いのような生活習慣を改善すること、④水の問題への地球規模での取組を強化すること、⑤中央と地方の連携や官民連携など国内的にも国際的にも全員参加型の協力を推進すること―を提起し、水と衛生問題への世界的な対応を呼びかけました。

(3)TICAD IVおよびG8北海道洞爺湖サミット

このような考え方を踏まえて、TICAD IVでは、安全な水を安定的に供給することができないアフリカ諸国に水に関する日本の技術者などを「水の防衛隊(W-SAT:The Water Security Action Team)」として派遣し技術協力を行うことを発表しました。具体的には、国際協力機構(JICA)により青年海外協力隊やシニア海外ボランティアの派遣を行い、深井戸などの村落給水施設管理や既存の配水管の漏水対策など水関連施設の適切な維持管理に関する技術指導を行うことが想定されています。TICAD IVの横浜行動計画では、水・衛生アクセス改善を通じた感染症対策、教育機会向上、灌漑施設などの水関係インフラの整備といった取組に加え、有効な水資源管理のための循環型水資源管理計画の策定支援や水資源管理に関する技術と知見の移転促進、水・衛生システムの管理者および利用者の能力向上支援が盛り込まれました。日本としては、これらの取組を通じ、今後5年間でアフリカの650万人に対し安全な飲料水を提供するとともに水資源の管理者および利用者5,000人の人材育成を実施することなどを目指しています。

2008年7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいても、サミット首脳宣言の「開発・アフリカ」の中で水・衛生が取り上げられ、良い循環型水資源管理の重要性が確認されるとともに、水・衛生に関するG8専門家会合を設置し、アジア・太平洋とともにサブ・サハラ・アフリカに特に焦点を当て、必要な行動をとることなどについて協議することが合意されました。