2008年1月、福田総理大臣(当時)は、スイスにおいて開催されたダボス会議における講演の中で、7月のG8北海道洞爺湖サミットの最大のテーマは気候変動問題とし、日本の「クールアース推進構想」を提示しました。また、もう一つの重要議題、開発・アフリカについては、「人間の安全保障」の観点から、保健・水・教育に焦点を当てる考えを表明しました。
G8開発大臣会合で記者会見をする高村正彦外務大臣(当時)
2008年4月5日から6日まで、東京においてG8開発大臣会合が開催され、新興援助国やアジアの主要国(ブラジル、中国、インド、インドネシア、マレーシア、メキシコ、韓国、南アフリカ)、国連機関、世界銀行、アジアやアフリカの国際機関の代表も参加しました。G8の開発大臣がサミットの準備プロセスでG8開発大臣会合を開くのは2002年から始められ、日本が同会合を開催するのは今回が初めてでした。この会合では、TICAD IV、G8北海道洞爺湖サミットの開発分野の課題の方向性について、G8諸国間でおおむね合意が得られ、G8各国が開発援助の取組を強化する決意を再確認しました。また、会合ではアジアを中心に新興援助国の参加を得て、先進国だけでなく新興国も含めた国際社会全体で開発の成果を高めていくことが重要であることが確認されました。
2008年5月28日から30日まで横浜で開催されたTICAD IVには、41名の国家元首・首脳級(ジャン・ピン・アフリカ連合(AU)委員長を含む)をはじめとするアフリカ51か国の代表、34か国の援助国およびアジア諸国、77の国際機関・地域機関の代表などのほか、民間セクター、市民社会、著名人など、合計3,000名以上が参加しました。
福田総理大臣(当時)は、開会式における基調演説で、海外経済協力会議で一致した2012年までのアフリカに対する政府開発援助の倍増や対アフリカ民間投資の倍増支援(注2)などを表明しました。続いて、AU議長国を務めるタンザニアのキクウェテ大統領をはじめ、アフリカ各国の首脳は、日本のアフリカ支援に対するコミットメントを評価しつつ、日本との貿易・投資拡大への期待を表明しました。
TICAD IVでは、アフリカ諸国の自助努力(オーナーシップ)と国際社会のパートナーシップに基づき、持続的で加速化されたアフリカ開発という目標が達成されるためには、国際社会全体の知識と資源を結集することが重要であるとして、会合の成果文書として「横浜宣言」が採択されました。また、TICADプロセスの具体的な取組を示すロードマップである「横浜行動計画」、およびプロセスの実施状況を検証するための「TICADフォローアップ・メカニズム」が発表されました。
また、会議初日の5月28日には、天皇皇后両陛下御臨席の下、野口英世アフリカ賞第一回授賞式が行われ、医学研究分野で貢献したブライアン・グリーンウッド博士と、医療活動分野で貢献したミリアム・ウェレ博士が受賞しました。この賞はアフリカにおける感染症などの疾病対策のため、医学研究や医療活動の分野において優れた功績を上げた者を顕彰する制度で、2006年にガーナを訪問した小泉総理大臣(当時)が発表したものです。野口英世アフリカ賞は、TICAD IV参加者からもアフリカにおける医学研究と医療・保健活動の推進に貢献するものとして歓迎され、賞の一層の発展に期待が寄せられました。
34回目を迎えた主要国首脳会議(サミット)は、2008年7月7日から9日まで北海道洞爺湖にて、福田総理大臣(当時)の議長の下、開催されました。
サミットの初日には、アフリカ諸国首脳との拡大会合が開催され、アフリカ諸国7か国、AU、関係国際機関の間で、アフリカにおける開発問題、TICAD IVの成果、MDGsや食料価格高騰を含むグローバルな課題に関する議論が行われました。2日目のG8のみの会合では、「開発・アフリカ」を取り上げ、「G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言」においてMDGsに向けた中間年に当たって、G8が目標達成に向けたコミットメントを新たにし、G8グレンイーグルズ・サミットにおける政府開発援助増額のコミットメントを再確認するとともに、アフリカに対する政府開発援助を2011年以降も増加させる必要性にも言及しました。また、人間の安全保障の向上、ガバナンスの向上、民間主導の経済成長、全員参加型の国際協力など、日本が重視するアプローチの重要性が議論されるとともに、MDGs達成に向けた議論の中で保健、水および教育に焦点が当てられました。特に、保健分野については、行動原則を盛り込んだ「洞爺湖行動指針」が発出されました。TICAD IVについては、首脳宣言において「横浜宣言を採択したTICAD IVの重要な貢献を歓迎し、アフリカ諸国の意見をG8の今後の協力に反映する」とされ、G8諸国の間でTICAD IVの成果が共有されました。
G8北海道洞爺湖サミットにおけるアフリカ開発に関する議論についてはこちらを参照してください。
ミレニアム開発目標(MDGs)ハイレベル会合(国連本部)
で演説する中曽根弘文外務大臣(2008年9月)
これらの会議を受け、2008年9月には、アフリカ開発とMDGsに関連した二つの会議が開催されました。一つは、アフリカに対して表明された様々なコミットメントの実施状況をレビューし、MDGsなどの開発目標の達成に向けアフリカ開発のための具体的な行動を特定するための「アフリカ開発ニーズに関するハイレベル会合」、もう一つは途上国全体のMDGsの進捗状況および達成に向けた取組について議論するための「国連MDGsハイレベル会合」です。これらの会合に先立って潘基文国連事務総長が発表した報告書では、MDGsの達成状況には2007年から改善が見られるが、各国のコミットメントの実施はいまだ不十分で、目標達成の期限に遅れており、グローバルなパートナーシップの強化が必要であることが指摘されています。アフリカにおけるMDGsの達成のためのグローバルな取組の強化について、国際社会の議論がさらに深まることが予想されます。
図表II-4 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成状況(国連「MDGs2008 進ちょく図表」等から)(クリックすると拡大されます。)