第1章 世界の関心を集めるアフリカ

世界では、貧困や感染症など従来の開発課題に加え、近年は気候変動の深刻な影響といった地球規模の新たな開発課題も生まれてきています。その解決のためには、国際社会が一致して取り組まなくてはなりません。そのため開発問題は、主要国首脳会議(G8サミット)など、近年の主な国際会議の主要議題の一つとなっています。

開発課題の多くは、アフリカが抱える諸問題と重なっています。アフリカ大陸は、世界で最も貧困人口の割合が高く、紛争や飢饉、感染症(特にHIV/エイズ)、気候変動、さらには累積債務など困難な課題が集中している地域であり、開発について多くの深刻な課題を抱えた地域です。近年アフリカの一部の国々では、政治的安定によって高い経済成長や海外直接投資の増加などの前向きなきざしも見られますが、アフリカ大陸の真の意味での持続的発展のためには、国際社会がアフリカ開発の課題に取り組み、アフリカ自身の努力を後押しすることがますます重要です。

2008年は、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)およびG8北海道洞爺湖サミットの議長国として、日本のリーダーシップが問われる極めて重要な年でした。ここでは、国際社会がアフリカの開発を重視するようになった背景に目を向けるとともに、TICAD IVおよびG8北海道洞爺湖サミットを中心に、これらの会議においてアフリカ開発の問題が具体的にどのように議論されたかについて取り上げます。

第1節 アフリカ開発に対する国際的な取組

1. アフリカの問題は世界の問題

1990年代初め、東西冷戦の終結と、いわゆる「援助疲れ」の広がりもあって、国際社会のアフリカへの関心は相対的に低下しました。

こうした状況の下、日本は当時の世界一の援助供与国として積極的にアフリカ開発支援のイニシアティブをとり、その重要性を国際社会に訴えかけてきました。1993年、日本は国連、国連開発計画(UNDP)および世界銀行などと協力し、第1回アフリカ開発会議(TICAD I)を開催しました。TICAD Iは、アフリカ諸国48か国を含む計79か国、ECおよび国際機関(26機関)の参加を得て、薄れていた国際社会の関心を再びアフリカに向ける契機となりました。

アフリカが抱える貧困や感染症、食料問題などは、国際社会の不安定要因ともなり得ます。また、気候変動問題やテロリズム、エネルギー安全保障といった地球規模の課題を解決するためには、アフリカを除外して考えることはできません。2001年サブ・サハラ・アフリカを日本の現職の総理として初めて訪問した森総理大臣(当時)が述べたように、「アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄はない」といえます。

2001年に国連ミレニアム開発目標(MDGs)が策定されたことも、国際社会のアフリカ開発への関心を高めました。MDGsが、2015年を達成期限とする具体的数値目標として設定され、援助国の側では、援助資金の集中と選択を図る努力が行われ、MDGsの達成が困難といわれるアフリカに対して、重点的に援助を配分していく国際的な機運が高まりました。一方、アフリカ諸国の側では、「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」(注1)に代表されるように、アフリカの人々が自助努力(オーナーシップ)により開発課題の特定と解決に取り組む姿勢が定着していき、先進国を中心とした援助国は、国際社会のパートナーとしてそれにこたえるべきであるとの強い意志を示すようになりました。

この結果、サブ・サハラ・アフリカ向けのDAC諸国の政府開発援助は、2001年の約81億6,207万ドルから、2007年には約207億7,258万ドル(暫定値)に増加しています。