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3.インドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波災害に対する支援
2004年12月26日にインドネシアのスマトラ島沖で発生したマグニチュード9.0と推定される大地震と、それに伴う大規模な津波により、インド洋沿岸諸国は未曾有の被害を受けました。アジアとアフリカの被災国で被災者(注1)は120万人、死者及び行方不明者(注2)は21万人にのぼり、37名の邦人のほか欧米を含めさまざまな国・地域の人々が犠牲となり、被災国の経済社会基盤も深刻な打撃を受けました。さらにその後も余震が続き、2005年3月29日には再びスマトラ島沖でマグニチュード8.5の地震が発生し、915名の死者(注3)を出しました。
この深刻な被害に対し、日本は同じアジアの一員として迅速な対応をとりました。津波発生直後の12月28日には、当面の緊急措置及び復興のため、必要に応じて3,000万ドル程度の支援を行うことを表明しました。また、国際緊急援助隊の救助チーム、医療チーム、専門家チーム及び自衛隊部隊を現地に派遣し、延べ1,913名の隊員が救援活動を実施しました。
2005年1月1日、小泉総理大臣は資金、人的貢献、知見の3点で最大限の支援を行うこと、資金面では緊急支援措置として当面5億ドルの支援を関係国及び国際機関などに対し無償で供与することを発表しました。1月6日、小泉総理大臣は町村外務大臣とともにジャカルタで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of Southeast Asian Nations)主催緊急首脳会議に出席し、犠牲者への哀悼の意及び日本自身の被災経験から発する特別な同情の念を示すとともに、国連の緊急支援アピールへの最大限の協力を表明したほか、日本として資金、知見、人的貢献の3点で最大限の支援を実施していくことを改めて強調しました。
(イ)資金協力
日本は地震発生直後から、インドネシア、スリランカ、モルディブに対して、計302万ドルの緊急無償資金協力を実施しました。また、これら3か国にタイを加えた4か国に対しテント、浄水器、毛布、発電機、医療品など6,000万円相当の緊急援助物資を供与しました。さらに、日本はパリクラブ(注4)各国とともに、要請のある国に対し2005年中の適格な債務の支払いを猶予することに合意し、インドネシア、スリランカに対し、当該措置を実施することとしています。
緊急支援措置として日本が表明した5億ドルの無償支援については、2億5,000万ドル相当を深刻な被害を被った国々に対する二国間の無償資金協力として、さらに残る2億5,000万ドルを国際機関経由の緊急人道支援として拠出することを決定しました。前者については、1月19日に、後者については、1月21日に全額拠出を完了し、累次具体的な案件を実施に移しています。誓約額の実際の拠出は、支援表明国の中で最も早く、被災国や国際機関から高い評価を受けました。
緊急支援措置のうち二国間の無償資金協力については、インドネシアに約146億円、スリランカに約80億円、モルディブに約20億円、それぞれノン・プロジェクト無償を供与し、具体的には医薬品、給水車、発電機などの購入や、小中学校の再建、警察署修復などに活用されています。

UNDPを通じた津波被害への支援(スリランカ)
column II-1 UNDPアジア・大洋州局ハフィス・パシャ局長へのインタビュー
国際機関に対しては、国連児童基金(UNICEF:United Nations Children's Fund)に対して、子どもの保護と生存への支援を念頭に7,000万ドル、世界食糧計画(WFP:World Food Programme)に対して、緊急食料配布及び支援物資輸送などに6,000万ドル、国際移住機関(IOM:International Organization for Migration)に対して、被災者登録、仮設住居の建設及び輸送サービスなどに2,500万ドルの拠出を行うなど、15機関に拠出しています。
また、日本は5億ドルの資金協力以外に、復旧・復興支援として、1月11日に、世界銀行・日本社会基金(JSDF:Japan Social Development Fund)、アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)に設置した貧困削減日本基金(PHRD:Japan Policy and Human Resorce Development Fund)を活用して、それぞれ2,000万ドルの合計4,000万ドルを津波被災支援にあてることとしました。2005年3月末までに被災者の生計立て直しのための支援など6件、約830万ドルを承認しています。さらに6月8日には、スリランカに対し、小規模インフラ及び小企業復興のために、約100億円の円借款の供与を決定しました。これは、津波の被害を受けた同国の沿岸地域の経済インフラの復旧・整備、ならびに漁業・観光業などの被災した小企業への経済活動再開などのための融資の提供を通じ、津波被災地域の経済復興に寄与するものです。
津波被災支援のためには、ジャパン・プラットフォーム*1傘下のNGOをはじめ、被災地にて迅速に活動できる日本のNGOなどとの協力も欠かせません。日本はジャパン・プラットフォームに対して2001年度より毎年度資金の拠出を行ってきていますが、今回の津波被災に際して、傘下のNGOは同資金を活用し、避難民への緊急支援物資配布、緊急医療支援、仮設住居の設置、被災児童の心のケアなどを行っています。また、インドネシア、スリランカ、タイ及びインドにおいて、よりきめ細かく迅速な支援を実現するために、日本NGO支援無償資金協力により、その他の日本のNGOに対して支援を行っているほか、被災者への瓦礫除去機材の供与や仮設住宅、学校、トイレ建設のための資材供与などを草の根・人間の安全保障無償資金協力により実施しています。

津波被害者の支援にあたる緊急援助隊 (写真提供:JICA)
(ロ)人的貢献
日本はインドネシア、スリランカ、タイ、モルディブに対し、国際緊急援助隊の医療チームを派遣したほか、一部の国には警察庁、消防庁、海上保安庁などから構成される救助チーム、DNA鑑定、捜索技術分野などの専門家チーム247名を現地に派遣しました。
(ハ)日本の知見の活用
知見の活用としては、災害直後の2005年1月に行われた国連防災世界会議において、インド洋津波早期警戒メカニズム構築のために、国際機関及び二国間協力を通じた積極的な貢献を行っていく旨表明するとともに、ODAを活用した日本の防災分野の援助方針である「防災協力イニシアティブ」を発表しました(防災協力イニシアティブについては、囲み II-2参照)。また、タイ・プーケットで開催されたタイ政府主催の津波早期警戒アレンジメントに関する地域協力閣僚会議では、閣僚宣言において日本からの提案に基づいて、気象衛星などから得られる観測データを活用した暫定的な津波早期警戒システムの運用に向け、各国・機関が協力する旨、表明されました。
また、日本は国連防災世界会議で発表されたインド洋災害に関する特別会合の「共同の声明」を踏まえ、国連(国際防災戦略(ISDR:International Strategy for Disaster Reduction)事務局)を通じた拠出金を活用した国連主催の被災国政府高官との政策対話やJICA主催の津波防災対策に関する地域別研修を日本で開催し、内閣府や気象庁をはじめとする関係省庁やアジア防災センターの協力を得て、津波防災に関する知識や技術を最大限活用した国際協力を進めています。
今回の地震及び津波で被災国の経済・社会基盤は深刻な打撃を受けており、一刻も早い復旧・復興が求められています。そのためには、短期的な緊急支援のみならず、国際社会が一丸となって中長期的にも継続して支援を行い、被災地が災害に強い地域として再生されるよう支援していくことが不可欠です。小泉総理大臣は、2005年4月のアジア・アフリカ首脳会議の機会に、防災・災害復興対策について、アジア・アフリカ地域を中心として今後5年間で25億ドル以上の支援を行うことを表明しました。日本は、関係国、国際機関とも協調し、これまでに発表した支援措置を着実かつ効率的に実施するとともに、各国の事情・状況を踏まえて策定される中長期的な復旧・復興計画に基づき、今後とも支援を行っていきます。
column II-2 スマトラ沖大規模地震及びインド洋津波に活きた日本の貢献
Coffee Break 援助のしくみは?