本編 > 第II部 > 第1章 > 1.G8エビアン・サミット(6月)
第I部において述べた通り、近年のグローバル化の進展に伴い、新たな開発上の課題が生まれており、開発問題は国際社会が一致して取り組むべき中心的課題の1つとなっています。さらに、2001年9月11日の米国同時多発テロを契機として、貧困にあえぎ、良い統治の行き届かない国がテロの温床になり得るとの観点からも国際社会の開発問題への関心が高まっています。
このような状況の下、途上国の開発課題に対する取組を強化すべく、開発目標の国際的な共有が進んでいます。その代表的なものが、ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)、2002年の開発資金国際会議で採択されたモンテレイ合意、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD:World Summit for Sustainable Development)で採択されたヨハネスブルグ実施計画です。これらの結果、開発問題への国際社会の取組について一定の方向性が出て来たと考えられます。すなわち、途上国の開発問題について包括的な取組が必要であるということであり、開発資金国際会議の合意文書であるモンテレイ合意では、国内資金、ODA、投資、貿易、債務救済等あらゆる手段を通じた開発資金の確保の必要性、援助の効率化や被援助国側の良い統治の促進といった開発のための方策などが打ち出され、2001年11月のWTOドーハ閣僚宣言とともにその後の一連の国際会議における議論の基礎を提供しています。(詳細は、2002年版ODA白書参照。)
2003年の開発関連の国際会議では、上述の国際的な議論の流れを踏まえ、MDGs、WTOドーハ閣僚宣言、モンテレイ合意、ヨハネスブルグ実施計画等に対するコミットメントを再確認し、それらの達成に向け、開発課題に対する国際社会としての具体的な取組のあり方、特に、国際社会としてMDGs等の進捗を加速するための行動を具体化することの必要性、そのために途上国、先進国、国際機関の間で協調した行動をとることの必要性などについて議論が行われました。
図表II-1 2003年の主要な開発関連国際会議

図表II-2 ミレニアム開発目標

また、主に紛争後の復興支援、アフリカをはじめとする地域別の開発課題への対応に関しても、多くの会議が行われ、開発援助を通じた国際社会の具体的な取組について活発な議論が行われました。
第II部は、まず第1章において、開発全般を取り上げている国際会議(2003年開催)として、G8エビアン・サミット(6月)、開発資金に関する国連総会ハイレベル対話(10月)、また、主にMDGsの達成に向けた努力を念頭において行われている分野別の国際会議を取り上げ、その概要と成果を概観します。そして、それらの会議を通じて繰り返し議論された開発上の主な論点を紹介し、それぞれにおける日本の対応について説明します。なお、復興支援に関する会議については第I部(2章1節3-(4)~)、TICADIIIについては第I部(2章1節4-(3))に掲載しています。
次に、第2章においては、これらの国際会議に加え、経済開発協力機構の開発援助委員会(OECD-DAC:Organisation for Economic Cooperation and Development-Development Assistance Committee)や世界銀行とIMF (International Monetary Fund) の年次総会などにおける議論も含め、開発を巡る主要な論点について、日本の考え方とともに説明します。
1.G8エビアン・サミット(6月)
2003年6月1日から3日にかけフランスのエビアンで行われたG8サミットでは、カナナスキス・サミット引き続き開発問題が主要議題の1つとなり、持続可能な開発、アフリカの開発問題などについて真剣な議論が行われました。

途上国首脳と共に記念写真撮影を行うG8首脳 エビアン・サミット(写真提供:共同通信社)
囲みII-1 エビアン・サミット発出文書のポイント(開発セッション)
囲みII-2 「G8アフリカ行動計画」実施報告書のポイント
持続可能な開発については、その実現に向け、MDGs達成に当たっての資金確保の方途、途上国側の良い統治の必要性、成長と環境保護の両立のための科学技術の役割、京都議定書の早期発効の重要性、HIV/AIDS等の感染症、森林問題など幅広い分野の問題について議論が行われました。同サミットにおいては、G8が今後執るべき具体的行動を示した各種行動計画等がG8首脳による承認を得た上で合計13本発出されました。このうち開発関連では、特にアフリカにおける飢餓に対する行動、水、保健、持続可能な開発のための科学技術、海洋環境とタンカーの安全に関する行動計画が採択されました。
また、アフリカについては、2002年のカナナスキス・サミットにおいて採択された「G8アフリカ行動計画」の進捗状況を記した実施報告書がG8アフリカ個人代表により作成され、G8首脳に提出されました。この実施報告書に基づき、G8及びNEPAD双方の過去1年間の取組につき再評価が行われたほか、今後も非G8の関心国や国際機関を交えつつ、このような交流(パートナーシップ)を続けていくことが確認されました。(注)
日本は、エビアン・サミットに先立って開催された第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議の開催国として、水フォーラムの成果も踏まえ、フランスと協力の下、水問題に関する行動計画の策定に主導的な役割を果たしました。また、米国、英国とともに、持続可能な開発のための科学技術に関する行動計画策定にも中心的な役割を果たしました。保健分野に関しては、感染症対策の一環として、ポリオ撲滅に向け2003年から2005年までの3年間に8,000万ドル拠出することを発表しました。
アフリカに関しては、G8サミットに先立つ5月、ワッド・セネガル大統領の訪日の機会に、小泉総理より「我が国の対アフリカ協力イニシアティブ」(注)を発表するとともに、サミットにおいて小泉総理より、日本は10年前に第1回アフリカ開発会議(TICAD)を開催し、それ以降アフリカ問題で種々イニシアティブを発揮してきたこと、2003年秋に開催するTICADIIIにつきアフリカ諸国はもとより、G8各国からも積極的な参加を強く期待していることなどを発言しました。
なお、このような流れを受けて開催されたTICADIIIでは、G8議長のシラク仏大統領やブッシュ米大統領からメッセージが寄せられるなど、アフリカ諸国のみならず援助諸国や国際機関を含めた他に例を見ないハイレベルで幅広い積極的な参加を得、アフリカ開発に関する深い議論が行われ、関係各方面から高い評価を得ました。(TICADIIIの詳細についてはI部2章1節4-(3)参照。)