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第II部 開発問題を巡る国際的な援助潮流



第1章 最近の主要な国際会議の成果と日本の対応
第1章では、2003年に開催された開発に関する主要な国際会議を取り上げ、その概要と成果を概観するとともに、日本の対応について説明します。
近年のグローバル化の進展に伴い、新たな開発上の課題が生まれてきています。そのため、開発問題は国際社会が一致して取り組むべき中心的課題の一つとなっています。
2002年に開催された一連の開発関連国際会議の結果、開発問題への国際社会の取組について一定の方向性が出て来ました。2003年はこのような議論の流れを踏まえ、ミレニアム開発目標(MDGs)、モンテレイ合意等に対するコミットメントを再確認し、それらの達成に向けた国際社会としての具体的な取組のあり方、特に、MDGs等の進捗を加速するための行動を具体化することの必要性、関係国間の協調行動の必要性などについて議論されました。
フランスのエビアンで行われたG8サミット(6月)では、前年に引き続き開発問題が主要議題の1つとなり、持続可能な開発、アフリカの開発問題などについて議論が行われました。持続可能な開発については、MDGs達成に向けての資金確保の方途、途上国側の良い統治の必要性、成長と環境保護の両立のための科学技術の役割、京都議定書の早期発効の重要性、HIV/AIDS等の感染症、森林問題など幅広い分野の問題について議論が行われました。また、同サミットでは、各種行動計画等が発出されました。
モンテレイ合意の進捗状況のレビューを目的に開催された開発資金に関する国連ハイレベル対話(10月)では、(1)途上国のオーナーシップが確認される一方、開発資金の不足を指摘する声も多く見られた、(2)2005年がモンテレイ合意実施のフォローアップ及びMDGs中間レビューの両面で重要な年になると指摘された、等を内容とする議長総括文書が発出されました。
また、近年、MDGsの掲げられている目標の達成に向け、個別分野毎にどのような取組を行うべきかについての議論が活発化しています。
教育分野では、「万人のための教育(EFA)」の推進が大きな流れとなっており、第3回ユネスコ・ハイレベルグループ会合(11月)では「女子教育」に関して幅広い意見交換が行われました。また、世界銀行はMDGsの「2015年までの初等教育の完全普及」を達成することを目的としたファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)を立ち上げ、具体的な支援対象国を特定しています。
保健分野では、日本は国際社会でいち早く感染症の重要性を取り上げ、包括的な援助を行ってきています。その流れが世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立に至りました。また、「保健・栄養・人口に関するMDGsについての調和行動会合」(5月)では、国際社会がMDGs達成に向けどのような行動を取っていくべきかに関し、保健・栄養・人口分野の目標について具体的に議論されました。
水と衛生の分野については、地球的規模での総合的な取組が必要であり、近年急速に国際社会の関心が高まっています。日本で開催された第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議(3月)には、世界各国からの閣僚級を含め多くの人が参加しました。本会議においては、「閣僚宣言―琵琶湖・淀川流域からのメッセージ」が採択され、安全な飲料水と基本的な衛生施設に関する目標の達成に向け、様々な資源を動員し、努力するという政治的意思が表明されました。


ODA写真館[3] ユネスコ文化遺産保存日本信託基金を利用して行っているアンコール遺跡の保存・修復事業の様子(写真提供:日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA))
Point
・2003年においても、引き続き開発課題問題は国際社会における主要議題の1つ。
・G8エビアン・サミットでは、日本は、水問題、持続可能な開発のための科学技術に関する行動計画の策定に主要な役割を果たす。また、ポリオ撲滅に向けた支援策、対アフリカ協力イニシアティブを発表。
・MDGsに掲げられている目標の達成に向け、個別分野毎の取組に関する議論が活発化。
日本は、途上国のオーナーシップ、良い統治(グッド・ガバナンス)、国別アプローチ、多様な援助手法の活用の重要性などを主張。
○教育分野では、日本は、EFA(万人のための教育)、FTI(ファスト・トラック・イニシアティブ)に貢献するとともに、紛争終結国(特に、アフガニスタン)への教育開発を積極的に推進。また、「国連持続可能な開発のための教育の10年」を提唱し、その推進を支援。
○保健分野では、日本は、世界エイズ・結核・マラリア基金に2002年から2004年度中に2億6,500万ドルの資金的支援を誓約。アジア唯一の援助国として理事会の理事を務める。
○水・衛生分野では、日本で第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議を開催。
○日本は、飲料水と衛生分野への世界最大の援助供与国。水分野の経済協力における包括的な貢献策として「日本水協力イニシアティブ」を発表。