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第6節 国際連携の推進
Point
1. わが国は、効率的・効果的な援助を目指し、被援助国、他の援助国、国際機関等との連携を推進。
2. 途上国間の協力である南南協力を積極的に推進。
3. 他の援助国や国際機関とも政策協議や共同イニシアティブ・プロジェクトを実施。
ミレニアム開発目標(MDGs)といった国際的開発目標が共有され、その達成に向けてますます効率的・効果的な援助が求められる今日、被援助国、他の援助国、国際機関、NGOなどあらゆる開発主体との協調と連携の強化が不可欠となっています。前述のように、国際社会においては、貧困削減戦略文書(PRSP)の策定プロセスや援助手続きの調和化などを通じた援助協調の流れが強まっています。こうした観点から、わが国は、ODAを進めるにあたり、被援助国との政策対話を重視することはもちろん、他の援助国や国際機関との政策対話を通じてより効果的に援助が進められるように努めています。同時に、案件実施にあたっても、他国や国際機関との連携を進めることにより、援助効果を高めるよう努めています。さらに、わが国は援助資源の増大にもつながる、より進んだ途上国による他の途上国への協力(南南協力)の推進も積極的に支援しています。
(1)南南協力の推進
南南協力とは、より開発の進んだ途上国が、自国の開発経験と人材などを活用して、他の途上国に対して行う協力のことです。南南協力は、主に技術協力の形態をとって行われます。こうした協力は、社会・文化・経済事情や開発段階などが比較的似通った状況にある国々による協力が可能となることから、効果的かつ効率的な協力の実施が可能となるメリットがあります。また、地域内での協力の場合、域内の国が協力を行うことで、両国の交流と連帯の強化にも役立ちます。さらに、これまで被援助国であった国が援助国になることにより、協力の主体と幅が広がるという利点もあります。
わが国は、75年、ブエノスアイレス行動計画に先立ち、こうした南南協力の利点に着目し、タイにおいて周辺国の人材の研修事業(第三国研修)を始めました。その後、わが国は、アジア域内における南南協力のみならず、アジアの開発経験をもとに、地域の実情に合わせてアフリカの開発を推進するというアジア・アフリカ協力も積極的に推進してきました。具体的には、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスの一環として、98年から2001年度までに1,500人近いアフリカ諸国の人々が、アジア諸国で研修し、99年、マレーシアにアジア・アフリカ投資・技術移転促進センター(通称、ヒッパロス・センター)を設立するなど、アジアからアフリカへの投資、技術移転の促進を図っています。
コラムI-13 メキシコ南南協力強化支援
2003年9月には、東京で第3回アフリカ開発会議(TICADIII)が行われます。同会議に向けて、わが国としては、アジア稲とアフリカ稲の交配種であるネリカ米の開発・普及やアジアとアフリカ間の貿易・投資を促進するための「アジア・アフリカ官民合同フォーラム」の開催など、一層のアジア・アフリカ協力の推進のための準備を進めています(ネリカ米については、コラムI-6参照)。
なお、東アジア開発イニシアティブ(IDEA)の項(第2章第2節(1)(ハ))でも説明しましたが、マレーシアといった東アジアの中進国は、人づくりやインフラ開発を基盤にして外国からの直接投資がなされやすい環境を整備しました。これにより、急速な発展を成し遂げてきましたが、最近は、新たな援助国や投資国としての役割も果たしつつあります。今後は、開発戦略の成功の体現者としての経験を他の途上国と共有するという面での役割も期待されます。