本編 > 第I部 > 第2章 > 第6節 > (2)他の援助国との協力
(2)他の援助国との協力
先進諸国間の援助協調は最近非常に活発になっています。先進諸国間の援助協調は、大別して多国間で行われるもの、二国間で行われるものがあります。また、各国の政策立案官庁の間で政策対話などを通じて協調が図られるとともに、援助の現場において援助国が具体的な援助実施の面で協調することも盛んに行われています。
まず、多国間の援助協調の例としては、主要な援助国の恒常的な協議や調整の場として、経済協力開発機構(OECD)の中に開発援助委員会(DAC)があります。DACは、22か国と欧州委員会(EC)がメンバーとなっている常設の国際的な議論の場です。主な会合としては、毎年1回行われるハイレベル会合やシニアレベル会合、そして月1回行われる本会合があり、こうした場では、援助に関する、その時々の重要なテーマについて議論されます。2002年5月のハイレベル会合では、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)主要5か国の閣僚との意見交換の場が設けられました。また、これらの会合の他に、貧困削減、環境、ガバナンス、紛争と開発、援助手続き調和化など専門分野別の下部機構が設置されており、各メンバー国の専門家による議論が行われています。わが国は、DAC本会合の副議長を務めてきており、DACの議論全般に積極的に参加しています。
また、被援助国毎に支援国会合が開催されており、2002年は、パキスタン、エジプト、カンボジア、インドネシア、ザンビアなど13か国においてこうした支援国会合が行われ、わが国からもハイレベルの代表団が出席し、議論に積極的に参加しました。
さらに、最近はG8メンバー国や世界銀行、国連開発機関などが主導して分野別に援助国会合が行われています。一例を挙げれば、2002年には、日米が共催した保健や水に関する会合、カナダが主催したG8開発大臣会合、国連科学教育文化機関(UNESCO)が主催した「万人のための教育」(EFA)に関するハイレベル会合、世界銀行が主催した教育に関するファスト・トラック・イニシアティブ会合、カナダが主催した農業に関するラウンド・テーブル、DACと世界銀行が共催した調和化に関するハイレベル会合などが行われました。
被援助国の現場における援助協調は特にアフリカにおいて進んでいますが、アジアにおいても例えばべトナムなど一部の国において活発化してきています。わが国は、途上国政府、援助国、国際機関等の援助関係者の会合に積極的に参加するとともに、援助関係者共通の戦略構築などにおいても種々の貢献を行っています。例えば、タンザニアでは農業セクターの開発計画策定において援助国、国際機関間の調整役を務めるなどの積極的役割を果たしています。
わが国は、こうした多国間の協調のみならず、二国間の援助政策協議を行い、戦略的に重要な地域・国や分野における協調の進め方について、意見交換や政策調整を実施しています。 最近では、米、英、仏、独、加、オーストラリア、北欧諸国、韓国等との局長級の援助政策協議を行い主要課題に関する意見交換を行うとともに、それぞれの援助政策や援助の仕組みに対する理解を深める努力をしています。また、米、英、加、オーストラリアについては、援助関係者の人事交流も行っています。
中でも、わが国が最も緊密に援助協調を行っているのは米国です。その背景には同盟国として緊密な連携を図りながら外交政策を展開していることに加え、援助に際しては二国間援助を通じたプロジェクト型の援助を重視するという援助政策を共有していることがあります。そのため、米国とは局長級の援助政策協議の実施に加えて、国別・分野別に具体的なプロジェクトを協力して行っています。国別には、アフガニスタン復興開発支援でカブール・カンダハル間の幹線道路の整備といった具体的な協力を進めているほか、インドネシアのアチェやフィリピンのミンダナオなどにおける和平の進展を後押しすべく、ODAを活用していくことで両国の合意を見ています。分野別には、まず、保健分野での協力が挙げられます。日米両国は、これまでにバングラデシュ、カンボジア、タンザニア、ザンビア、ナイジェリアに合同調査団を派遣しており、約20か国においてHIV/AIDS対策や母子保健といった分野で共同プロジェクトなどを実施しています。こうした成果を踏まえ、2002年6月には、「保健分野における日米パートナーシップ」に署名し、これまで日米両国の本国主導で進められてきた共同の取組をより現地主導で行うこととして一層協力を強化することに合意しました。
また、9月のヨハネスブルグ・サミットの機会に国際的な関心を集めている水と衛生分野での協力を開始するため、川口外務大臣とパウエル国務長官は共同で「きれいな水を人々へ」イニシアティブを発表したことはすでに第2章第5節(4)で紹介した通りです。
囲みI-26.日米保健協力