前頁  次頁


本編 > 第I部 > 第2章 > 第5節 > (4)水と衛生分野における支援の強化


(4)水と衛生分野における支援の強化

水と衛生分野への国際的関心の高まり
水と衛生の分野については、最近、急速に国際社会の関心が高まっています。その背景には、現在、世界の3分の1近くの人々が、健康、農業及び経済発展を直接脅かすような慢性的な水不足の中で暮らしているという現実があります。また、水と衛生分野の問題は、単に水供給(飲料水)の不足に留まらず、河川や湖沼などの水質改善による水環境の保全、灌漑施設の整備による食糧の安定供給、洪水や土石流による自然災害への対応、水力発電施設によるエネルギーの安定供給など多様な側面を持っており、地球的規模での総合的な取組が必要となっています。
こうした中、2002年9月に開催されたヨハネスブルグ・サミットにおいては、同分野への取組が主要な議論の一つに取り上げられました。その中で特筆すべきは、本サミットの成果である「実施計画」において、ミレニアム開発目標(MDGs)には入っていない衛生分野について「基本的な衛生施設を利用することができない人々の割合を2015年までに半減する」との目標が新たに設定されたことです。
2003年に行われる一連の国際会議でも水と衛生分野の国際協力は重要な議題です。具体的には、3月に京都など3都市において開催される第3回世界水フォーラムにあわせ、わが国が主催する閣僚級国際会議が行われます。また、6月には、G8エビアン・サミット、10月には、わが国が主催する第3回アフリカ開発会議(TICADIII)などが行われる予定ですが、これらの会議においても水と衛生が引き続き主要な論点になることが予想されます。

わが国の取組
わが国は、水の問題の持つ多面性に着目して、いろいろな分野で水分野に対する協力を行っております。具体的には、水供給に関して今までに全世界で4,000万人に水と衛生施設を供給してきました。また、これまで整備された給水施設を将来にわたり安定して運営していくため、例えばセネガルに専門家を派遣し、水管理組合の設立や運営の指導を行っています。これにより、安全で供給の安定した飲料水を確保するとともに、女性や子どもたちを長時間の水くみ労働から解放し、就学機会や生活改善をもたらすことが期待されています。また、衛生分野についても、下水道施設を整備することにより、都市部における衛生的な生活環境の実現に貢献しています。例えば、急速な人口集中により都市化が進み、下水道処理能力が大幅に不足しているホーチミン市に対して、わが国は円借款により衛生施設へのアクセスを改善し、都市の水環境保全に貢献しています。

囲みI-25.第3回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議


また、わが国はヨハネスブルグ・サミットの際に米国と共同で日米水協力イニシアティブ「きれいな水を人々へ」を発表しました。今後、第3回水フォーラムやG8エビアン・サミットといった一連の国際会議を視野に入れつつ、このイニシアティブの具体化を図っていく予定です。また、このイニシアティブは、日米で始められたものですが、今後は他の国や他の国際機関の参加を得たり、他国の取組との連携を深めることで、より大きな取組にしていきたいと考えています。


写真 日米水協力イニシアティブを発表する川口外務大臣

図表I-28 水分野の主要案件

水分野の主要案件




前頁  次頁