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(3)持続可能な開発に向けた環境協力

持続可能な開発を巡る世界の動き
環境問題は、70年代から国際的に議論されていますが、同問題を議論する大きな契機となったのは92年の国連環境開発会議(UNCED、「地球サミット」)でした。この会議では、環境問題に係わる諸問題が包括的に討議され、その結果、世界が共通に取り組むべき行動計画としてアジェンダ21が採択されました。アジェンダ21においては「持続可能な開発」は議論全体に関わる概念として捉えられ、その後の地球環境問題への取組のキーワードとなりました。
UNCEDから10年目にあたる2002年9月には、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)が開催されました。10年間の間に「持続可能な開発」は経済、社会及び環境の3つの要素からなる開発のための概念として定着し、そのため、ヨハネスブルグ・サミットでは環境問題のみならず経済、社会の面も含めて広範な視点から開発問題が議論されました。その結果、UNCED以降、世界的な環境悪化傾向は好転していないこと、途上国における環境劣化を防止するためには貧困問題の解決が不可欠であること、環境保全を含むミレニアム開発目標(MDGs)の達成のためには具体的な行動が必要であることといった考えを基調とする「ヨハネスブルグ宣言」及び「実施計画」が採択されました。

図表I-27 地球規模の環境悪化の現状

地球規模の環境悪化の現状



EcoISDの発表
2002年8月、わが国はヨハネスブルグ・サミットに先立ち、持続可能な開発のためのわが国の具体的行動として「小泉構想」を表明しました。その中では、最近の地球環境問題への国際的な関心の高まりを背景として、わが国の環境協力の理念・方針と、今後の協力の柱となる行動計画を改めてとりまとめた「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」を発表しました。EcoISDでは、途上国の主体的な取組を尊重しつつ、能力向上支援を重視した協力を推進することとし、わが国環境ODAの重点分野として地球温暖化対策、環境汚染対策、「水」問題への取組及び自然環境保全を挙げています。また、具体的な目標として2002年度から5年間で5,000人の環境関連人材育成を実施していくことを表明しました。

囲みI-23.EcoISDの概要
囲みI-24.わが国環境ODAに関するイニシアティブの変遷


このような方針に沿って、わが国の環境ODAは、経済発展に伴う環境汚染への対応や、環境問題の根源にある貧困問題の解決、更には地球規模の環境問題への対応などのために以下の通り、多岐にわたる分野で途上国の取組を支援しています。

[1]地球温暖化対策
 途上国に温暖化対策に係る技術の移転・普及を図るとともに、科学的、社会的、制度的側面を含めた温暖化問題への対処能力の向上を図る。(イランにおける省エネルギー訓練センターの設立や、スリランカのアッパーコトマレ水力発電の建設などを支援するとともに、アジア地域を中心に種々の基礎調査を実施)

[2]環境汚染対策
急速な経済成長を遂げつつあるアジア諸国を中心に、都市部での公害対策及び生活環境改善(大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理等)への支援の重点化を図る。(中国、メキシコなど6か国における環境行政の核となる「環境センター」を通じた途上国の能力構築の実施。ベトナムのハノイ市において廃棄物管理のための機材整備支援等)

[3]「水」問題への取組
都市部・農村部の特徴を踏まえた上下水への対策と、水資源管理及び水質保全のためのソフトの支援を実施。(フィリピンにおける地方都市の水質改善、セネガルでコミュニティ活動の支援を通じた安全な水の供給への協力、草の根無償資金協力を用いたパキスタン、タンザニアなどにおけるNGO等による水供給計画の支援等)

[4]自然環境保全
住民の貧困削減を考慮しつつ途上国の自然保護区等の保全管理、森林、砂漠化防止及び自然資源管理に対する支援を実施。(インドネシアの生物多様性保全計画、エクアドルのガラパゴス諸島生態系の保全計画、ラオスの森林保全・復旧計画などへの支援、及びアジア森林パートナーシップの推進等)

コラムI-11 中国への環境協力
コラムI-12 北九州イニシアティブ



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