前頁  次頁


本編 > 第I部 > 第2章 > 第6節 > (3)国際機関との連携


(3)国際機関との連携
MDGsをはじめとした国際的な開発目標を達成するためには、開発問題に関して高い専門性を有する国際機関と政策対話や共同プロジェクトを実施することが極めて重要です。こうした観点から、わが国は、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)といった国際開発金融機関(MDBs)や国連開発計画(UNDP)(開発全般)、国連児童基金(UNICEF)(保健医療、教育)、世界保健機関(WHO)(保健医療)、国際労働機関(ILO)(労働・人材育成)、国連教育科学文化機関(UNESCO)(教育)、国連人口基金(UNFPA)(人口、リプロダクティブ・ヘルス)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)(難民・避難民支援)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)(エイズ対策)といった国連諸機関との政策対話や事業連携(マルチ-バイ協力)を進めています。以下では、わが国がとりわけ幅広い関係を築いてきた世界銀行、UNDP、UNICEFとの対話・連携の現状について説明します。

世界銀行
世界銀行は、途上国開発における最大のドナーであるとともに、従来、援助の効率化の観点から途上国におけるドナー間の援助調整に主導的役割を果たしてきました。また、最近では、開発資金国際会議(2002年3月、メキシコ)やヨハネスブルグ・サミット(2002年9月、南アフリカ)といった国際会議の主要テーマを世銀・IMF総会や世銀・IMF合同開発委員会で取り上げるなど、一連の開発関連会議の議論にも深く関与しています。2002年9月の世銀・IMF合同開発委員会では、2000年の国連総会で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)の実施をテーマに掲げ、教育、保健、水等の分野における進捗状況が議論されました。教育分野においては、既にご紹介した通り、わが国は世界銀行が推進しているファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)に積極的に関与しており、現在、わが国としていかなる協力が適当であるのか、具体的な協力策について検討を進めています。
こうした中で、わが国は、第二位の出資国として世界銀行との協力関係を重視しており、様々な形で関係強化に努めてきました。わが国は、途上国に対する支援国会議やアフガニスタン復興支援国際会議等の多数国間の国際会議の場を通じて世界銀行と協力しており、本年3月及び10月にそれぞれわが国で開催される第3回世界水フォーラム及び第3回アフリカ開発会議(TICADIII)についても世界銀行と協力しながら、これらの国際会議を運営していく方針です。
これまでわが国は、定期的に世界銀行本部とのハイレベルの政策対話を行ってきましたが、2002年11月には東京でわが国の主要関係省庁及び援助機関が一堂に会し、世界銀行東アジア大洋州局との間で政策対話を行うという初めての試みも行われ、中国及び東南アジア諸国における貧困削減と開発援助のあり方などについて議論しました。また、2003年1月には、ウォルフェンソン総裁が来日し、小泉総理や塩川財務大臣、茂木外務副大臣との間でODA予算、援助の効率化、教育支援といった問題についての意見交換が行われました。
援助の現場では、わが国の大使館、JICA及びJBICの関係者は、途上国の貧困削減を実現するために世界銀行及びIMFのイニシアティブで始められた貧困削減戦略文書(PRSP)の策定作業に積極的に参加しています。また2002年3月には、世界銀行内にわが国からも資金を拠出している貧困削減戦略信託基金(PRSTF)が立ち上げられ、国際開発協会(IDA)借入適格国においてPRSPの作成及び実施に必要な当該国政府及びNGOの能力強化のための支援が行われています。
わが国及び世界銀行はともにIT分野を重視しており、開発におけるITの活用を進めるため、世界銀行の遠隔教育ネットワークであるGDLN(Global Development Learning Network)とわが国の遠隔技術協力ネットワーク(JICA-NET)との連携の実現に向けても作業を進めています。

UNDP
UNDPは国連の中で開発全般を担当する主導的機関で、国連システムにおいて世界で最大のネットワークを持っています。また、毎年、「人間開発報告」を発表しており、援助に関する国際援助潮流の形成に大きな影響力を有しています。さらに、ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて国際社会の牽引役を果たしています。
わが国は、近年UNDPとの間で政策レベル及び事業レベルの双方でパートナーシップを強化してきました。2001年以降は、政策レベルの年次協議を行っているほか、総裁訪日の機会等を通じた政策対話も強化しています。事業レベルでは、例えば、アフガニスタン復興支援等に見られるように、緊密に連携して支援を実施しています。
わが国は、UNDPとの共同プロジェクトも多数行ってきています(いわゆるマルチ・バイ協力)。その具体例としては、パキスタンのゴミ処理改善計画、カンボジアにおける帰還難民の再定住支援及びグアテマラの女子教育支援等が挙げられます。
また、わが国とUNDPは93年の第1回アフリカ開発会議(TICAD)以降、アフリカ開発についての協力関係を強化しており、TICADIIで採択された「東京行動計画」に基づく種々のフォローアップ事業についても、わが国はUNDPに拠出した種々の基金を積極的に活用しています。
UNDPは、わが国と同様、紛争後の復興開発や平和構築などへの支援を強化しており、この分野での連携も深まっています。例えば、パレスチナ支援については、88年以降、UNDPに設置した日本パレスチナ開発基金を活用し、ヨルダン川西岸・ガザ地区での学校や病院建設等インフラ整備、自治政府職員の行政能力向上等を支援しています。また、アフガニスタンでは、帰還難民や国内避難民等の雇用創出を目的とした復興・雇用プログラム(REAP)を実施しており、コソボでは、民主化への動きを支援しているほか、住宅再建、学校・病院建設への支援を、さらに、東ティモールでも道路、港湾、発電、灌漑等インフラ整備を中心に支援を実施しました。
わが国が重視する南南協力についてもUNDPは、他の援助機関や国連機関とも協力しながら技術移転やネットワーク作りなどを推進しており、わが国は、UNDPに設置した基金への拠出金を通じて、そうした活動を支援しています。

UNICEF
UNICEFは、児童・女性の保健医療、教育等に関し国際的に指導的な立場にある国連機関であり、また全世界規模で事業を展開している機関です。わが国はこうした専門性、現場でのノウハウを併せ持つ同機関との協調を重視し、ハイレベルの政策協議を行っているほか、ここ数年、保健医療、教育、水といった分野において日・UNICEF間協力を強化してきました。
保健医療分野では、89年から途上国における予防接種率拡大とポリオ根絶のために共同でワクチンやコールド・チェーン機材の供与といった支援を行っています。こうした努力もあり、2000年10月には西太平洋地域におけるポリオ根絶宣言がなされました。
教育分野については、UNICEFがアフガニスタンで行っている基礎教育支援(バック・トゥ・スクール・キャンペーン)に対しても、わが国は国際社会からの供出額の約65%にあたる1,100万ドルを拠出したほか、わが国NGOから邦人職員11名がUNICEFアフガニスタン事務所に派遣され、同キャンペーンの実施に参加する等、官民合同での取組が行われました。
2001年10月、日・UNICEF合同でバングラデシュに学習ミッションを派遣し、初等教育及びヒ素対策を含む安全な水供給を新たな連携分野として採り上げました。このフォローアップとして、2002年7月にはUNICEFが主体となって実施している「地域別教育環境集中改善計画(IDEALプロジェクト)」に対し、小学校教員のための研修機材、小学生のための学習教材、啓蒙活動用機材の整備等に必要な2億5,200万円を限度とする額の無償資金協力を行いました。
また、わが国はアフガニスタンや食糧危機に苦しむ南部アフリカ諸国などへの緊急支援の一部をUNICEFとの協力の下で実施しています。2001年のUNICEF経由でのアフガニスタン支援の総額は約3,500万ドルに上りました。
このようにUNICEFとの協力形態は多岐にわたっており、UNICEF本体への任意拠出金を含む2001年度のわが国政府の拠出総額は1億ドルあまりに達しています。

コラムI-14 わが国のポリオ撲滅への貢献



前頁  次頁