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人権・人道

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条
及び第17条に基づく第2回報告

(仮訳文)

第11条

 憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。

1.相当な生活水準についての権利

(1) 国民の生活水準に関するデータ
 第12表は、「全国消費実態調査報告」により、年間収入階級別の収入及び消費支出の推移をみたものである。これによると、年間収入及び消費支出は、すべての収入階級で増加傾向にある。

収入階級別

(2) 貧困層に対する援助
(a) 貧困層に関するデータ
 収入階級別のGNPは作成していないので、最貧40パーセントの一人当たりのデータはない。また、我が国において「貧困線」は設定されていない。

(b) 生活保護
 生活に困窮する日本国民に対しては、生活保護法により、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助を行っている。保護の基準は毎年改定されているが、1986年度から1996年度の1級地-1(東京、大阪等の大都市)における標準3人世帯(夫婦、子一人)に対する生活扶助基準額(月額)の推移は第13表のとおりである。

第13表 生活扶助基準額の推移
(単位:円)
年度 基準額
1986 126,977
1987 129,136
1988 130,944
1989 136,444
1990 140,674
1991 145,457
1992 149,966
1993 153,265
1994 155,717
1995 157,274
1996 158,375
1997 161,859

(3) 物質的な生活水準の指数
 月々の1世帯当たりの消費支出額を一定の世帯員(4人)及び日数(1ヶ月30.4日)の支出額に調整した後、これを1995年平均を基準として指数化し、さらに消費者物価指数で除することにより実質化した数字(「消費水準指数」)が、第14表である。

第14表 消費水準指数
(1995年=100)
指数
1985 91.1
1986 91.9
1987 93.8
1988 96.7
1989 97.7
1990 98.9
1991 100.6
1992 101.2
1993 101.3
1994 100.6
1995 100.0
1996 100.6

注 総務庁統計局「家計調査年報」により作成。

2.相当な食料についての権利

(1) 概観
 食料は、国民にとって最も基礎的な物資であり、これを安定的に供給することは国政の基本ともいうべき重要課題である。このため我が国は、食料の安定的供給を図るため、国内生産においては、農業生産性の向上、農業構造の改善、流通・加工の合理化、農産物価格の安定等について必要な施策を総合的に推進すると共に、海外からの供給に依存する農産物について、輸入の安定確保に努めてきたほか、不測の事態に備えて適切な備蓄の確保を図ってきたところである。また、健康で豊かな食生活を図る観点から各種の消費対策を実施してきたところである。その結果、我が国では食料の適正な供給が実現されている。

(2) 食料の適正な供給のための我が国の農業施策

(a) 農用地の整備・開発及び利用の促進
 狭い国土の中で、食料の安定的な供給を図るため、農業生産の基盤となる優良な農用地を開発・改良するとともに、その効率的な利用を進めている。

(b) 地力増進
 地力増進法等により、農業生産性の向上や食料の安定的な供給に大きな影響を与える農地の地力の維持・増進を図っている。

(c) 農業生産資材の導入・利用
 農業の機械化、肥料の品質の保全、農薬の適正な使用の確保等により、農業生産性の向上や安全な食料の供給に努めている。

(d) 農業に関する試験研究の推進及び技術の普及
 農業に関する試験研究の充実により技術開発を促進するとともに、農業技術を迅速かつ適確に普及することにより、農業の生産性の向上や農産物の品質の向上を図っている。

(e) 食料に係る流通の合理化
 食料に係る品質表示の適正化、生鮮食料品等の卸売市場の建設整備、流通部門の構造改善の促進等により、食料の品質の向上を図るとともに、流通の適正化及び円滑化を図っている。

(f) 主要食糧の安定供給
 米・麦等の主要食糧については、これまでは、食糧管理法に基づき、需給の管理及び価格の安定を図ることにより、国民に対する主要食糧の安定的な供給を実現していたが、WTO協定の実施等のための国内制度の改正として、1994年12月に、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(以下、「食糧法」という。)が成立し、食糧管理法は廃止された。現在は、食糧法により、国民に対する米・麦等の主要食糧の安定的な供給を図っている。

(g) 農産物の価格安定について
 農産物価格の過度の変動による悪影響から国民生活を守るため、主要な農産物についてそれぞれの特性に応じた価格安定制度を設け、安定した価格による食料の供給を実現している。

(h) 植物防疫及び動物検疫
 植物に有害な動植物の駆除・まん延防止により、農業生産の安全及び助長を図るとともに、家畜伝染性疾病の発生を予防し、及びまん延を防止すること等により畜産の振興を図っている。

(3) 前記施策の環境及び食料生産資源に対する影響  我が国の農地の中心である水田は、一定の環境保全効果を有しており、我が国では、これまで、資材投入の増加による環境への影響は顕在化していない。しかし、高度成長期以降、肥料、農薬等外部からの資材の投入が増加したことにより、農産物の生産性を向上させるという利益を生む反面で、これらが過剰に投入される場合には、環境への負荷を増大させることが懸念される。例えば、農地から流入する窒素分やリン分が湖沼の水質への負荷の一つになっている事例がある。
 また、区画整理や農業用の用排水施設の整備といった農地改良のための事業は、労働生産性を向上させ、農地としての土地利用を継続させるという点において農業の環境保全機能の維持に資するが、さらに農地の生態系の豊かさに配慮した事業の実施が求められているところである。
 農業の有する環境保全機能を維持・増進させつつ、農業生産を持続的、安定的に行っていくためには、農業分野におけるリサイクル利用の推進を含め、環境に与える負荷を極力少なくすることによって、調和のとれた環境保全型農業を確立することが重要であると認識している。

(4) 農地制度の改革  我が国は、第2次世界大戦後、自作農を急速・広範に創設し農業生産力の発展と農村の民主化を図るため、1945年から46年にかけて農地調整法を施行するとともに、46年には自作農創設特別措置法を制定し、徹底した農地改革を実施した。
 これらの法律に基づき、政府は、地主の所有する小作地の相当部分を強制的に直接買収して小作農に売り渡したほか、小作料の金納化を図った。また、賃貸借契約の解約等を許可性にするとともに小作料の減額請求権を認めるなど小作農の権利の強化を図った。さらに、農地改革推進の中心的役割を担う行政機関とされた市町村及び都道府県の農地委員会についても制度を改正し、従来の官選を改め選挙制度を導入したほか、小作農の意見が十分尊重されるよう委員構成を変更し、民主的な農地改革の実現を図った。
 これらの措置の結果、1950年までに約193万ヘクタールの農地が開放され、農地改革前には46パーセントであった小作地比率が10パーセント未満となるに至り、地主的土地所有制度の解体に成功した。
 その後、1952年に、農地改革の成果の恒久的な維持を直接の目的として農地法を制定して現在に至っている。我が国は、農地法に基づき、農地の権利移動規制、小作地所有制限、農地の賃借人の地位の安定のための制度等により、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図っているところである。

(5) 食料の安全性に対する配慮  食品等の安全性を確保するため、食品衛生法に基づいて、以下の措置が講じられている。

(a) 食品、添加物、器具及び容器包装等の規格基準の設定
(b) 食品衛生監視員による監視及び指導
(c) 食品衛生管理者による自主的管理体制の整備
(d) 飲食店等の34の業種についての営業許可制度

(6) 国民の栄養に対する配慮

(a) 我が国の食生活は、従来の米、魚、野菜を中心とした伝統的な食生活パターンに肉類、牛乳・乳製品、果実などが加わったことにより、平均的には、多様でありかつバランスのとれたものとなっている。もっとも、最近は、PFC供給熱量比率における脂質のウェイトが適正水準を上回るおそれがあるほか、個人や年齢別に見ると、栄養バランスのくずれも指摘されている。このため、バランスのとれた望ましい食生活を実現するよう、「日本型食生活新指針」を策定し(1990年)、その普及に努めている。

(b) また、国民の栄養改善のため、栄養改善法に基づき、毎年国民栄養調査を実施し、国民の栄養素等の摂取状態を把握する一方、5年ごとに栄養所要量を改正している。また、資格のある栄養士を各保健所に配置し、個人、集団給食施設等に対する指導を行っている。市町村においても、40歳以上の地域住民に対し、老人保健法に基づく事業の一環として、健康教育、健康相談の中で栄養指導が行われている。

(c) その他、栄養の原則についての知識の普及を進めるため、食生活上の留意点を国民一般にわかりやすい形で「健康づくりのための食生活指針」として取りまとめ、広く普及に努めている。
 さらに、近年、国民が外食や加工食品を利用する機会が増えたことに対応するため、飲食店や加工業者等における栄養成分表示の実施を推進している。

(7) 世界の食料供給の公平な分配を確保するためにとった措置  開発途上国の一部には、今なお低所得国を中心に相当な栄養不足人口を抱える国もある。
 このため我が国は、開発途上国に対し、農業分野をはじめとして、食料安定供給確保のための国際協力を積極的に推進してきたところであり、開発途上国の食料不足の解消や人口の大半を占める農民の生活の安定と向上等に寄与してきた。
 特に、農林水産業分野においては、開発途上地域の農林水産業に関する試験研究等を行う国立機関として国際農林水産業研究センター(JIRCAS)を設置し、研究者の派遣や招へいによる国際研究協力を実施している。

3.相当な住居についての権利

(1) 住宅に関する統計的データ

住宅数、持家比率及び空家率の推移

所有関係別床面積の推移

第17表 住宅の衛生設備、腐朽破損の状況

  戸数(1988年)
住宅総数 37,413,000 (100.0%)
 浴室のない住宅 2,837,000 (7.6%) 
 危険又は修理不可能な住宅 133,000 (0.4%) 
注 総務庁統計局の「住宅統計調査」による。

住宅の建築時期別占有形態

 なお、ホームレス、違法居住者及び追立てに関する統計的なデータはない。
 また、政府の設定した住居費の負担能力限度というものはない。

(2) 住宅・居住に関する法律
(a) 居住に関する権利を規定する法律
 所有権、賃借権の内容については民法が規定しているほか、特に建物に係る賃借権に関しては借地借家法が特別の定めを置いている(「借地借家法」は、従来の「借地法」、「借家法」「建物保護ニ関スル法律」を一本化したもので、1992年8月1日に施行された。)。

(b) 住宅に関する法律
 国民の住生活の向上に関しては、住宅建設の促進及び住宅ストックの向上等を図るため、住宅建設計画法に基づき策定される5か年毎の総合的な住宅建設計画のもと、以下のような法律に基づき各種の施策が講じられてきている。
(i)  「公営住宅法」 国及び地方公共団体が協力して住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃の賃貸住宅を供給することを目的としている。
(ii) 「住宅・都市整備公団法」 住宅事情の改善を特に必要とする大都市地域その他の都市地域において集団住宅及び宅地の大規模な供給と都市の再開発を行う住宅・都市整備公団の設立等について定めている。
(iii) 「地方住宅供給公社法」 住宅を必要とする勤労者の資金を受け入れ、これをその他の資金とあわせて活用して、当該勤労者に対し居住環境の良好な住宅及びその用に供する宅地の供給を行う地方住宅供給公社の設立等について定めている。
(iv) 「住宅金融公庫法」 住宅の建設等に必要な資金で、銀行その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを長期・低利で融通することを目的とする住宅金融公庫の設立等について定めている。
(v)  「住宅地区改良法」 不良住宅が密集する地区の環境の整備改善を図るための改良事業について定めている。
(vi) 「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」 土地所有者等が建設する良質な賃貸住宅について、助成措置を行うこと等により、中堅所得者層の居住の用に供する賃貸住宅の供給を促進することを目的とする。

(c) 土地利用に関する法律
 国土利用計画法に基づき、国より全国的な「国土利用計画」が、また、都道府県知事により都市地域、農業地域、自然保全地域等の指定を含む「土地利用基本計画」が定めらている。

(d) 賃借人の権利に関する法律
 借地借家法は、借地権の最低存続期間を法定するとともに、地権者・賃貸人が借地・借家契約の更新を拒絶できる場合、建物賃貸人が建物の明渡しを請求できる場合等を限定している。また、この法律の規定に反する特約で借地・借家人に不利なものは無効とする(片面的強行規定)など、借地・借家人の保護に留意したものとなっている。
 また、住宅金融公庫法は、住宅金融公庫の融資を受けて建設された賃貸住宅については、その家賃を同法の定めるところに従って算出した額以下にしなければならないことを定めている。

(e) 土地への投機を制限する法律
 土地基本法は、土地が投機的取引の対象とされてはならない旨を定めている。また、国土利用計画法は、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去するため、土地取引の規制に関して講ずべき措置を規定している。

(f) 建築規制、建築基準等に関する法律
 建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的として、建築物の敷地、構造、設備及び用途について確保すべき最低の基準を定めている。

(g) 住居及び居住地における環境計画及び衛生に関する法律
 住宅建設計画法は、良質な居住水準と良好な住環境を備えた住宅の建設を促進するため5か年毎の総合的な住宅建設計画を策定すること等を定めている。また、建築物における衛生的環境の確保に関する法律は、多数の者が使用し又は利用する店舗、共同住宅等の建築物の維持管理に関し、衛生的な環境の確保を図ることを目的として、建築物環境衛生管理技術者が一定の基準に従って建築物の維持管理を行うべきことを定めている。

(3) 居住についての権利を実現するためにとられたその他の措置

(a) 地域住民を基盤とする組織に対する助成
 地区住民による自主的な住環境の整備・改善を支援することを目的とする地区住環境総合整備事業において、地区住民によって構成される住環境整備組合が狭隘道路の拡張等地区設備の整備を行う際の補助を行っている。

(b) 住宅建設促進のためにとっている措置
 前記(2)(b)に記載した各法律に基づく施策のほか、住宅建設五箇年計画(現在は第七期)に基づき、公営、公団等公共賃貸住宅の的確な供給、住宅取得のための融資、利子補給等による良質な民間賃貸住宅の供給の促進等、総合的な住宅対策を推進している。

(c) 住宅に困窮する居住者に対する措置
 不良住宅の密集する地区の整備改善を図る住宅地区改良事業、不良住宅が集合していること、小規模な敷地が連たんしていること等により住環境の劣っている地区の住宅事情の改善と環境の整備を行うコミュニティ住環境整備事業等において、事業の実施により住宅に困窮する居住者のための改良住宅等を地方公共団体が供給している。

(d) 遊休土地を解放するためにとっている措置
 国土利用計画法により、助言、勧告、土地買取り協議等を通じて遊休土地の有効かつ適切な利用の促進を図っている。

(e) 住宅に関する国の予算措置
 1996年度の住宅対策の予算は、1兆1612億8,800万円であり、一般会計に占める割合は約1.5パーセントである。

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