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経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条
及び第17条に基づく第2回報告
(仮訳文)
- (1) 家族及び扶養児童の概念
- (a) 家族
- 我が国の民事基本法である民法は、特に「家族」の概念及び範囲についての定義規定を設けず、夫婦及び親子並びに夫又は妻と一定の血族関係にある者の相互の間における法律関係を個別に規定することを通じて、間接的に「家族」の概念及び範囲を定める方法を採用している。
上記の関係にある者の法律関係のうち、特に個人の生計の維持又は扶養(扶助を含む。)に関する規制の骨子は、次のとおりである。以上の規制から、民法は、夫婦及びその間の未成年の子から成る集団を、生活共同体という意味における「家族」の基本的な単位としているものと解される。
- (i) 夫婦については、同居・協力・扶助の義務を負う(第752条)とされているが、この義務は、相手の生活を自己の生活と同一の内容及び程度のものとして保障するという高度の義務と解されている。また、日常の家事に関して生じた債務を夫婦が連帯して負担することとされ(第761条)、夫婦の一方が禁治産宣告を受けた場合は他方がその後見人となる(第840条)などの権利義務が定められているほか、相続においても配偶者は常に相続人となることとされている(第890条)。
- (ii) 親子については、子が未成年である間は、両親が親権を行使して(第818条)、監護教育を行い(第820条)、その居所を定める(第821条)と共に、配偶者に対すると同様の高度の扶養義務を負うと解されている。更に、子は、親との関係で第1順位の相続権を与えられている。
- (iii) これに対し、兄弟姉妹及び一定範囲の血族又は姻族は、扶養を要する者に配偶者又は親がないか、あってもその者の資力では十分な扶養がなされない時に扶養の義務を負うのみであるなど、その義務の程度は比較的軽いものとなっている。
- (b) 児童
- 民法は、満20年をもって成年とすると定め(第3条)、未成年者の私法上の行為能力を制限している(第4条)ほか、未成年の子は父母の親権に服する旨規定している(第818条)。親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負っている(第820条)。なお、20歳未満の者であっても婚姻をしたときは、私法上成年に達したものとみなされる(第753条)。
また、児童の健全な育成を目的とする児童福祉法において「児童」とは、「満18歳に満たない者」と定義されている。
- (2) 家族に対する援助
- (a) 児童の養育にかかる経済的援助
- 児童を養育する父母等に対する経済的援助として、児童手当法に基づく児童手当、児童扶養手当法に基づく児童扶養手当、特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づく特別児童扶養手当がある。
- (i) 児童手当については、本報告書中第9条3を参照。
- (ii) 児童扶養手当は、父と生計を同じくしていない児童を監護する母等に対し支給されるものである。支給月額は児童一人の場合、41,390円(1997年4月現在、児童の数に応じ加算あり)、受給者数 は62万4,101人(1997年3月末現在)である。
- (iii) 特別児童扶養手当は、精神又は身体に障害を有する児童を監護養育する父母等に対して支給されるものである。支給月額は1級の障害を有する児童一人につき50,350円(1997年4月現在)、受給者数は13万人(1997年3月末現在)である。
- (b) 保育サービス
- 保護者の就労、疾病等のため保育に欠ける乳幼児については、児童福祉法に基づき保育サービスが行われている。1997年4月現在、全国で約2万2,400ヶ所の保育所において、約165万人の乳幼児(全乳幼児の約2割に相当)が保育されている。保育所における乳幼児の保育に要する費用は、国及び地方公共団体が負担する公費と、保護者の負担能力に応じて徴収される保育料で賄われている。また、国は、保育所の施設整備費の補助等の諸施策を講じている。
- (c) 育児休業
- 1992年4月より施行されていた「育児休業等に関する法律」は、1995年6月に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)へと改正され、同年10月より一部を除き施行されている。
育児・介護休業法では、1歳に満たない子を養育する労働者は事業主に申し出ることにより育児休業を取得することができ、事業主は要件を満たした労働者の申出を拒否することができないと規定している。
また、事業主は、休業を取得せずに1歳に満たない子を養育する労働者について、勤務時間の短縮等就労しつつ子を養育することを容易にするための措置を講じなければならない(第19条第1項)とされている。
さらに、事業主は、1歳から小学校の始期に達するまでの子を養育する労働者について、育児休業制度又は勤務時間の短縮その他の就業しつつ子を養育することを容易にする措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければならない(第20条第1項)旨も規定されている。
- (d) 介護休業
- 育児・介護休業法により、1995年10月から事業主はできる限り早く法に沿った介護休業制度及び家族の介護のための勤務時間の短縮等の措置を設けるよう努力することが求められており、1999年4月から介護休業制度は一律に事業主の義務となる。
同法では、要介護状態(2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族(配偶者・父母及び子・配偶者の父母・同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫)を介護する労働者が、事業主に申し出ることにより連続する3月の期間を限度として介護休業を取得することができ、事業主は要件を満たした労働者の申出を拒否することはできないと規定している。
また、事業主は、休業を取得せずに要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、連続する3月以上の期間における勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない(第19条第2項)とされている。
さらに、事業主は、家族を介護する労働者について、介護休業制度又は勤務時間の短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずるよう努力しなければならない(第20条第2項)旨も規定されている。
- (e) 深夜業を行う労働者への配慮
- 1997年に行われた労働基準法の一部改正によって、女性の時間外及び休日労働並びに深夜業(午後10時から午前5時までの間の労働)の規制が解消されることとなった(本報告書第6条5雇用機会の均等(1)女性労働者の項参照)ことと併せて、育児・介護休業法の一部改正が行われ、育児又は家族の介護を行う一定の労働者の深夜業(午後10時から午前5時までの間の労働)の制限の制度が創設された。この改正は1999年4月より施行される。
(3) 婚姻の自由
- (1) (a)で述べたとおり、我が国における家族の基本的な単位は、夫婦及びその間の未成年から成る集団であるので、婚姻は、我が国における家族の核を成す制度である。憲法第24条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と規定している。民法上、成人の男女の婚姻は、当事者双方が一定の方式の届出を行うことによって成立するものとされ、重婚の禁止、近親婚の禁止等の合理的な理由に基づく規制が設けられている以外には、婚姻の自由に対する法律上の制限はない(未成年者であっても、18歳以上の男性及び16歳以上の女性は、父母の同意を得て、成人と同様に婚姻をすることができる。)。
ただし、いまだ一部に、婚姻に際して家柄や社会的身分などを問題とするような前近代的な態度、習慣が残っていることは否めない。我が国の人権擁護機関は、このような態度や慣習を解消するため、各種の啓発活動を行い、憲法第24条の趣旨が国民の間により一層浸透するよう努めている。
- (1) 妊産婦・乳幼児の健康確保
- 母子保健法に基づき、妊産婦・乳幼児に対する健康診査、妊産婦・乳幼児の保護者に対する保健指導、妊娠又は出産に支障を及ぼすおそれがある疾病を有する妊産婦に対する援助、病院等に入院することを要する未熟児に対する医療給付、母子保健に関する各種の相談事業、妊産婦や乳幼児の保健指導を行うための母子健康センターの設置等を行っている。
また、児童福祉法に基づき、身体に障害のある児童に対する育成医療の給付及び補装具の交付、結核児童に対する療養の給付並びに小児がん等小児慢性特定疾患に罹患している児童に対する医療費の援助を行っている。さらに、経済的理由により入院助産を受けることができない妊産婦を入所させるための助産施設も設置されている。
- (2) 出産にかかる経済的援助
- 健康保険の被保険者が分娩した場合には(被保険者の被扶養者である配偶者が分娩した場合は、配偶者出産育児一時金として)、30万円が支給される。
また、母子及び寡婦の自立促進対策として、母子相談員による相談指導、疾病等の際の居宅介護等事業、公共施設内における売店等の設置の優先許可、母子福祉施設の設置等を行っている。
国民健康保険(健康保険と国民健康保険の異同については、本報告書中第9条1(1)を参照)においても、被保険者が分娩した場合に、出産育児一時金が支払われる。
- (3) 母子家庭等に対する援助
- 母子及び寡婦福祉法に基づき、母子家庭及び寡婦に対し、無利子又は低利で事業開始資金、修学資金等の貸し付けを行っている。1996年度の貸し付け実績は、およそ6万件、206億7,000万円にのぼっている。
また、母子及び寡婦の自立促進対策として、母子相談員による相談指導、疾病等の際の居宅介護等事業、公共施設内における売店等の設置の優先許可、母子福祉施設の設置等を行っている。
- (4) 労働基準法及び男女雇用機会均等法等における母性保護措置
- (a) 労働基準法においては、以下のような母性保護措置が規定されており、すべての労働者について適用される。
- (i) 妊産婦等の坑内労働の禁止(第64条の4)
- (ii) 妊産婦等に対する危険有害業務の就業制限(第64条の5)
- (iii) 出産前6週間及び出産後8週間の就業制限。但し多胎妊娠の場合は出産前14週間、出産後10週間の就業制限(第65条)
- (iv) 妊産婦が請求した場合の変形労働時間制の適用の制限、時間外労働、休日労働又は深夜業の禁止(第66条)
- (v) 生後満1年に達しない生児を育てる女性の育児時間の権利(第67条)
- (b) また、1997年に成立した改正男女雇用機会均等法(本報告書第6条5雇用機会の均等(1)女性労働者の項参照)において、これまで事業主の努力義務であった妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する措置が義務づけられた。義務づけとなった措置は以下のとおりであり、この部分については1998年4月より施行される。
- (i) 保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保ができるようにすること
- (ii) 保健指導又は健康診査による指導事項を守ることができるようにするための措置の実施
- (c) 政府は、これらの規定を受けて母性健康管理指導基準を策定し、事業主に対し、その基準が履行されるよう指導を行っている。
- (d) なお、船員法においても同様の保護規定がある。
- (5) 自由刑の執行停止
- 自由刑の執行の場面において、言渡しを受けた者が受胎後150日以上であること及び出産後60日を経過していないことを任意的執行停止事由として、母性の保護を図っている。
我が国は、1994年4月に児童の権利に関する条約を批准しており、同条約の実施状況については、右条約第1回報告書を提出しているのでこれを参照されたい。
- (1) 障害児の保護
- 心身障害については、その発生予防、早期発見、早期治療に努めているほか、障害児を精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、肢体不自由児施設、盲ろうあ児施設及び重症心身障害児施設へ入所又は通所させ、療育、保護を行っている。さらに、児童相談所での相談・指導、ホームヘルパーの派遣等の在宅福祉施策についても積極的に推進を図っている。1996年10月現在、障害児施設は816ヶ所、利用人員は約3万8千人である。
- (2) 保護を要する児童の養護
- 保護者がいないか又はいても保護者に養育されることが適当でないなど保護を要する児童に対しては、乳児院又は児童養護施設に入所させる集団的養護あるいは里親又は保護受託者に預ける個別的養護を行っている。
- (3) 非行児童等の保護
- 非行児童等の保護を要する児童については、児童相談所が、関係機関との連携の下に児童の指導、健全化を図っている。また、児童自立支援施設においては、不良行為を行ったり、そのおそれがあるため保護者に監護させることが不適当な児童を入所させ、自立支援を行っている。
また、非行を犯した少年(20歳未満の者)に対し、その性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うための特別の措置を定めるものとして、少年法がある。
- (4) 経済的搾取からの保護
- (a) 労働基準法は、満15歳未満の者を労働者として使用することを原則として禁止している(第56条)。例外的に使用できるのは以下の場合に限られる。
- (i) 非製造業にかかる職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつその労働が軽易なものについて、行政官庁の許可を受けた12歳以上の者を使用する場合。
- (ii) 映画の制作又は演劇の事業で、児童の健康及び福祉に有害でなくかつ労働が軽易なものについて、行政官庁の許可を受けた場合。
1996年1月から12月において、満15歳未満の児童の使用許可件数(人数)は、3,784件である。
- (b) さらに労働基準法は、満18歳未満の者を危険有害業務及び坑内労働に就かせることを禁止している(第62条及び第63条)。
- (c) 1987年9月の労働基準法改正により、満15歳未満の者の労働時間は、「修学時間と通算して1週間40時間」に短縮された(第60条第2項)。
- (5) 児童売買等の処罰
- 刑法第224条ないし第228条、第228条の3によって、未成年者の略取誘拐、営利目的誘拐、国外移送目的誘拐、国外移送目的人身売買等の行為が処罰の対象となっており、また、同法第217条、第218条、第219条によって保護を要する年少者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしない行為が処罰の対象となっている。
また、児童福祉法第34条によって児童の心身に有害な影響を与えるおそれのある行為(児童からの搾取となるおそれのある行為を含む。)が禁止され、同法第60条によってこれに違反した者は処罰されることになっている。
- (6) 児童の人権の擁護
- 我が国の人権擁護機関では、1994年から児童の人権問題を専門的に取り扱う「子どもの人権専門委員」制度を発足させ、児童の人権が侵害されないように監視し、もし、これが侵害された場合は、その救済のため、速やかに適切な措置をとるとともに、児童の人権擁護のための啓発活動を行っている。
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