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人権・人道

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条
及び第17条に基づく第2回報告

(仮訳文)

第9条

 我が国は、医療、傷病給付、出産給付、老齢年金給付、障害給付、遺族給付、家族給付、業務災害給付、失業給付のすべての分野において社会保障を実施している。我が国は、1974年6月にILO第121号条約(業務災害の場合における給付に関する条約)を批准し、また、1976年2月にILO第102号条約(社会保障の最低基準に関する条約)を批准(傷病給付、失業給付、老齢給付、業務災害給付について義務受諾)している。両条約の実施状況については、第102号条約につき1996年、第121号条約につき1993年に報告書を提出しているので参照されたい。

1.医療、傷病給付、出産給付

 医療、傷病給付、出産給付は、医療保険制度によってカバーされているが、その他に、国及び地方自治体の一般財源による公的扶助制度(生活保護)がある。

(1) 医療保険制度の内容
 現行の医療保険制度は、医療保険が雇用部門や地域を単位として形成されてきたことを反映して、6つの異なる制度から成っている。すなわち、被用者及びその家族のための被用者保険(健康保険、船員保険並びに国家公務員、地方公務員及び私立学校教職員のための3つの共済制度)とその他の人々のための地域保険(国民健康保険)である。地域保険は、被用者保険のいずれによってもカバーされない人々を対象とするものであり、市町村、または医師や大工など同業に従事する者のグループによって構成される国民健康保険組合によって運営される。以下、人口の大部分をカバーしている健康保険と国民健康保険につき、制度の概要を記述する(基本的には第1回報告時と同様であるが、その後の法改正により、自己負担割合、給付期間等に変更がある。)。
(a) 医療
 両制度の下で給付される医療には、治療、外科手術、病院及び診療所への入院、看護、歯科治療、薬剤等が含まれる。医療費のうち、健康保険制度においては2割(被用者の家族の場合は3割(入院の場合は2割))、国民健康保険制度においては3割が患者の自己負担となる。ただし、患者の一月の自己負担額が6万3千6百円を超える場合には、その超える額を支給すること等を内容とする高額療養費制度が設けられている。

(b) 傷病給付
 傷病により就労不能となった場合、健康保険においては、4日目から18ヶ月目まで、標準報酬(被保険者の毎月の基礎的賃金あるいは俸給に基づき定められる)の60パーセントが傷病手当金として給付される。国民健康保険においては、これらの給付は、法律上任意給付となっており、国民健康保険組合の多くは同様の給付を行っている。

(c) 出産給付
 出産の場合にも、健康保険においては、分娩の日以前42日から分娩の日後56日までの範囲内で、標準報酬の60パーセントの出産手当金が支給される他、出産育児一時金(配偶者については、配偶者出産育児一時金)として、定額30万円が支給される。国民健康保険では、給付内容は、各市町村の条例等によるが、殆どの市町村において出産育児一時金として30万円を支給している。

(2) 医療保険制度の財政構造
(a) 健康保険
 個人の保険料は、その者の標準報酬月額に保険料率をかけた額であり、事業主と被保険者で折半負担されるのが原則である。1997年3月末現在における政府管掌健康保険の保険料率は8.2パーセントであり、1997年3月末現在における組合管掌健康保険制度の平均保険料率は8.394パーセントであった。
 これらの制度に要する事務費は、政府が負担している。政府管掌健康保険においては、さらに、療養の給付、家族療養費、傷病手当金、出産手当金及び高額療養費(家族のための同様の給付を含む)等の保険給付に要する費用の13パーセントが国庫負担でまかなわれている。

(b) 国民健康保険
 保険料は、被保険者が属する世帯の世帯主が支払う。その額は、原則として、所得割+資産割+被保険者均等割(世帯の員数に応じて課される)+世帯別平等割(一律)によって算出されるが、保険料は1世帯当たり年間53万円を超えることはできない。給付費等の50パーセントが国庫負担である他、地方自治体の財政を援助するための補助金など幾つかの補助金制度がある。

(c) 老人保健
 老人保健法は、高齢化の進展に伴い、国民の自助と連帯の精神に基づき、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防から治療、機能訓練にいたる保健事業を総合的に行うことを目的としている。これらの保健事業は、地域住民に最も身近な市町村が一体的に実施しているが、その費用は、患者の一部負担金、公費負担及び各医療保険の保険者からの拠出金により賄われ、国民全体で公平に負担することとしている。
 その一方で、急速な高齢化の進展等に伴う老人医療費の増大と経済成長の低迷が続く中、若年世代の負担は過重なものとなってきており、老人の心身の特性に応じた適切な保健医療サービスの提供を確保しつつ、世代間負担の公平化、老人医療費の適正化・効率化等の観点から、必要な制度の見直しに取り組んでいるところである。

2.老齢給付、障害給付、遺族給付

 老齢給付、障害給付、遺族給付は、公的年金制度によりカバーされている。公的年金制度は、国内に適法に居住するすべての者に適用されるものである(国籍要件は1982年1月に撤廃された。)。この他に、職域、地域等によっては、企業年金・個人年金等も行われている。公的年金が、国民の老後生活の主柱として老後生活の基本的部分を確実に保障することを目的とするものであるのに対し、これらは、老後生活をより豊かに生きるための自助努力の手段として行われているものであり、相互に補完性を有する。
 公的年金制度には、全対象者共通の基礎年金を支給する国民年金制度と、これに上乗せして報酬比例の年金を支給する被用者年金制度(一般の被用者を対象とする厚生年金保険制度及び幾つかの職域-国家公務員、地方公務員、私立学校教職員、農林漁業団体職員等-のための共済年金制度)がある。以下、すべての者に適用される国民年金及び被用者の約85パーセントが加入している厚生年金制度について、制度の概要を記述する。基本的には第1回報告時と同様であるが、1985年、1989年及び1994年の年金制度改正により、各制度を通じた給付と負担の公平化及び婦人の年金権の確立(すべての婦人に自己名義の基礎年金を保障)等の改善が行われた。

(1) 国民年金制度
(a) 被保険者は、国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての者である。被用者年金制度の加入者の配偶者(専業主婦等)も独立して被保険者となる。

(b) 給付には、i)加入期間25年を満たした65歳以上の者に支給される老齢基礎年金(1998年4月からの月額66,625円)、ii) 障害の度合に応じて支給される障害基礎年金(1998年4月からの月額1級83,283円、2級66,625円)、iii)被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者が死亡した場合にその遺族に支給される遺族基礎年金(1998年4月からの月額66,625円+子の人数に応じ加算)がある。

(c) 財源は、保険料(1998年度の月額13,300円)、被用者年金制度からの拠出金及び国庫負担金(原則として給付費の3分の1)である。

(2) 厚生年金保険制度
(a) 被保険者は、民間被用者である。

(b) 給付には、i)加入期間25年を満たした60歳以上の者(女性は59歳以上の者)に支給される老齢厚生年金(支給額は、年齢、平均報酬月額、加入月数並びに配偶者及び子の有無によって定まる。)、ii) 加入期間中の傷病による障害に対して支給される障害厚生年金(支給額は、平均標準報酬月額、被保険者月数及び障害の度合によって定まるが、月額49,967円の最低保障がある。)、iii)被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者等が死亡した場合にその遺族に支給される遺族厚生年金(支給額は、平均標準報酬月額及び被保険者月数によって定まる。)がある。

(c) 財源は、労使折半の保険料である。保険料率は17.35パーセント(1996年10月より)。

3.家族給付

 家族の生活の安定と児童の健全な育成を促進することを目的として、1972年1月、児童手当法に基づき児童手当制度が創設された。手当の受給者数は、1997年2月現在、200万1,864人である。制度の概要は、第1回報告で述べたとおりであるが、その後の改正で以下の点に変更がある(費用負担については従前どおり)。

(a) 日本に住所を有する者(国籍要件は1982年1月に撤廃された。)で、支給対象児童を監護し、かつ、その生計を維持する者に対して支給される。ただし、前年の所得が政令で定める額(扶養親族が3人の場合、所得239.6万円)以上の者に対しては支給されない。
 支給対象児童の範囲については、従来「義務教育終了前の児童(16歳未満)を含む3人以上の18歳未満の児童」とされていたが、1991年の児童手当法の改正により、「3歳未満の児童」に変更された。

(b) 支給額は、第1子、第2子が各5,000円、第3子以降は10,000円である。

(c) また、所得制限により児童手当を受けられない被用者又は公務員であって、その者の前年の所得が政令で定める額(扶養親族が3人の場合、所得417.8万円)未満の者に対し、全額事業主(公務員においては所属庁)負担による特例給付(児童手当と同額)が支給される。

4.労働災害給付

 労働者の業務上災害(通勤災害を含む)に対する保険給付は、労働者災害補償保険法により行われている。

(1) 労働者災害補償保険は、国籍を問わず、すべての労働者(事業主に雇用され、かつ、賃金の支払いを受ける者)を対象としており、労働者を使用するすべての事業に適用される。1997年3月現在の適用事業所数は約268万事業場、適用労働者数は約4,790万人である。

(2) 業務上の事由又は通勤により、労働者が負傷、疾病、障害を負い、又は死亡した場合、労働者又はその遺族に対し、以下のような保険給付が行われる。
(a) 療養(補償)給付(療養を要する場合)
(b) 休業(補償)給付(療養のため休業し賃金を受けない場合(休業する日の4日目から支給))
(c) 傷病(補償)年金(療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治ゆせず、その障害の程度が傷病等級に該当する場合)
(d) 障害(補償)給付(傷病が治ゆした後、身体に一定の障害が残った場合)
(e) 遺族(補償)給付及び葬祭料(葬祭給付)(死亡した場合)
(f) 介護(補償)給付(障害(補償)年金又は傷病(補償)年金を受けており、常時又は随時介護が必要な状態で、現に介護を受けている場合)
 さらに、これらの保険給付に加えて労働福祉事業としての特別支給金が支給される。これら保険給付の水準は、ILO第121号勧告の水準に達している。

(3) 労働者災害補償保険は政府が管掌する保険であり、これに要する費用は原則として、事業主の負担する保険料によって賄われている。保険料は、事業主の支払う賃金総額に保険料率を乗じて算出される。保険料率は、過去の災害率その他の要因を考慮して業種別に定められており、現在は、最低が0.6パーセント、最高が13.4パーセントである。

5.失業等給付

 失業した、及び雇用の継続が困難となる事由が生じた労働者に対しては、労働者の生活、雇用の安定及び就職の促進のため、雇用保険法に基づき、失業等給付が支給される。

(1) 雇用保険は、労働者を使用するすべての事業に適用されており、そこに雇用される労働者は、一定の者(船員保険の被保険者及び65歳に達した日以降に雇用される者等)を除き、被保険者とされる。1996年3月末現在の雇用保険の適用事業数は約196万ヶ所、被保険者数は約3,377万人である。

(2) 失業等給付には、失業中の労働者の生活の安定を図ることを主たる目的とする求職者給付と、失業中の労働者の再就職の促進を図ることを主たる目的とする就職促進給付及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、雇用の安定を図ることを目的とした雇用継続給付の3種類がある。求職者給付のうち、一般の被保険者に対して支給される基本手当の給付水準は、失業前の賃金日額と年齢及び被保険者であった期間によって定まるところ、1997年の日額の最低は2,580円、最高は10,790円であり、給付日数の最低は90日、最高は300日である。

(3) 失業等給付の財源は、労使が負担する雇用保険料(賃金総額の0.8パーセントで労使が折半)と国庫負担により賄われている。

6.社会保障関係費の推移

 近年、人口の高齢化等に伴い、社会保障関係費が国家予算や国民経済に占める割合は増加の傾向にある(第11表参照)。

第11表 社会保障費の国家予算に占める割合
(単位:億円)
  GNP(名目) 一般歳出 社会保障関係費 割合
1980年度2,453,600307,33282,12426.7%
1985年度3,255,011325,85495,73629.4%
1990年度4,415,891353,731116,15432.8%
1995年度4,927,803421,417139,24433.0%


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