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経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条
及び第17条に基づく第2回報告
(仮訳文)
- (1) 賃金の決定方法
- 我が国では、憲法第28条により、勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利が保障されているところ、賃金は、労使の話し合い又は団体交渉によって決定されるのが原則である。憲法の規定を受けて、労働組合法、国営企業労働関係法等が、賃金をはじめとする労働条件について労働協約を締結する権利を認めている。
ただし、国家公務員は、その地位の特殊性と職務の公共性から、労働基本権が制約されており、国営企業職員を除く一般職の国家公務員は、給与等の勤務条件について労働協約を締結することができない。このような一般職の国家公務員の給与は、法律によって定められ、その改定は、社会一般の情勢に適応するよう、独立した第三者機関である人事院の国会及び内閣への勧告に基づき、法改正によって行われる(国家公務員法第28条、一般職の職員の給与に関する法律第2条)。例えば、1997年4月において、非現業の一般職国家公務員のうち、行政職職員(平均年齢39.8歳)の平均給与月額は35万6,424円であり、他方行政職に類似すると認められる民間企業従業者の平均給与月額は36万56円であった。このため、人事院は、国家公務員給与と民間賃金との較差を解消することを基本として、国家公務員給与を改定するよう勧告を行った。これを受けて、内閣は、労働基本権の制約の代償措置で ある人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、国政全般との関連等を考慮しつつ、国家公務員給与の取扱いを検討した結果、指定職俸給表の適用を受ける職員(以下、指定職職員)の給与を除き、一般職の国家公務員の給与について人事院勧告どおり改定を行う方針を決定し、「一般職の職員の給与に関する法律及び一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出した。同法案は、政府原案どおり成立し、1997年4月に遡って、指定職職員を除く一般職国家公務員の給与改定が実施された。また、指定職職員については1998年4月1日より給与改定が実施された。
地方公務員(企業職員及び単純労務職員を除く)の給与も、ほぼこれに対応する 手続によって定められる(地方公務員法第24条、第26条)。
- (2) 最低賃金
- (a) 労働者の生活の安定、労働力の質的向上等を目的として、最低賃金法により最低賃金が保障されている。最低賃金は、労働大臣又は都道府県労働基準局長が、一定の産業、職業又は地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認めるときに、公益、労働者及び使用者の各側を代表する同数の委員で構成される中央又は都道府県最低賃金審議会に調査審議を求め(諮問)、その意見(答申)を尊重して決定する。最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金には、地域別最低賃金(産業や職種に関りなく、都道府県のすべての労働者に適用されるもの)と産業別最低賃金(特定の産業の労働者に適用されるもの)がある。この他に、労働協約に基づいて決定される地域的最低賃金がある。
1997年3月31日現在決定されている最低賃金を決定方式別に示すと、第6表のとおりである。
第6表 最低賃金決定件数及び適用労働者数 1997.3.31現在
決定方式 決定件数 適用労働者数 調査審議に基づく最低賃金 301 47,863,100 うち地域別最低賃金 47 43,088,600 うち産業別最低賃金 254 4,774,500 うち労働大臣決定分 3 4,300 うち労働基準局長決定分 251 4,770,200 労働協約に基づく地域的最低賃金 2 600 合計 303 47,863,700 注 2以上の最低賃金が適用される労働者については、
金額の高い最低賃金の適用労働者として計上。
- (b) 最低賃金は、一般職の公務員等、他の法律等で規定されている者を除き、常用、臨時、パートタイム等すべての労働者に適用される。ただし、軽易な業務に従事する者等については、都道府県労働基準局長の許可を条件に、個別の適用除外が認められる。
- (c) 最低賃金の水準は、最低賃金審議会における調査審議を経た結論を尊重して労働大臣又は都道府県労働基準局長が決定する。最低賃金法では、労働者の生計費、類似労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力の3要素を総合的に勘案して定めることとされている。最低賃金審議会の審議に当たっては、対象となる労働者の賃金実態についての調査結果等を検討するとともに、最低賃金審議会の委員自らが事業場等に赴き、作業実態、賃金実態等を実地に視察した上で、関係労働者や使用者からも意見を聞くなどして金額の検討が進められる。その上で、地域の生計費、学卒初任給、労使間で協定した企業内の最低賃金、賃金階級別の労働者分布、あるいは決定しようとする金額未満の賃金を支給されている労働者数から見た影響の度合等を考慮した上で結論が出される。
我が国における常用労働者一人平均の月額賃金は第7表のとおりであり、地域別・産業別最低賃金の全国平均日額は第8表のとおりである。
第7表 常用労働者1人平均月間現金給与総額 (単位:円)
現金給与総額 所定内給与 超過労働給与 特別給与 1985 317,091 214,255 22,332 80,504 1990 370,169 244,373 27,123 98,673 1995 408,864 284,040 23,983 100,841 1996 413,096 286,853 25,181 161,062 注1 労働省「毎月勤労統計調査」による。
注2 事業所規模30人以上を対象としている。
第8表 地域別・産業別最低賃金の全国平均日額 (単位:円)
地域別最低賃金 産業別最低賃金 1985 3,478 3,834 1990 4,117 4,377 1995 4,866 5,521 1996 4,969 5,650 注 適用労働者数による加重平均額である。
- (d) 最低賃金を決定したときは、官報に掲載して公示するほか、労働基準監督機関において、関係労使に対しリーフレットを配布し、あるいは説明会を開催するなどの方法により周知徹底に努めるとともに、労働基準監督機関による監督指導を全国的に実施し、違反事業場に対しては、その是正を求めているところである。
- (e) 使用者は労働者に対し、最低賃金以上の賃金を支払う義務を有し、これに違反した者は、最低賃金法により処罰される。また、最低賃金に達しない賃金を労使間で合意しても、法律上無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる(最低賃金法第5条)。
最低賃金法違反の罪については、労働基準監督機関に配置された労働基準監督官が、刑事訴訟法上の司法警察員の職務(捜査)を行う。
- (f)なお、我が国は、1971年4月、ILO第26号条約(最低賃金決定制度の創設に関する条約)及び第131号条約(開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約)を批准しており、これに適合する法制度を確保している。ILO第26号条約につき1976年に、ILO第131号条約につき1997年に、最新の報告書をILOに提出した。
労働基準法は、第3条において「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と規定している。また、我が国は、1967年7月、ILO第100号条約(同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約)を批准しており、これに適合するよう法制度の確保を図っている。
- (1) 女性労働者の待遇
- 男女雇用機会均等法の施行後10年を経過し、この間企業における雇用管理の改善が進み、法の趣旨は着実に浸透してきている。1995年に行われた「女子雇用管理基本調査」によれば、部長相当職の女性のいる企業は14.3パーセント、課長相当職は30.6パーセント、係長相当職は72.1パーセントである。また、男女別定年制及び結婚・妊娠・出産退職制については、制度上は解消している。国家公務員に関しても、人事院規則の改正により国家公務員採用試験における女性の受験資格の制限を撤廃しており、現在、一般職国家公務員の採用において、女性に対する制限、差別はない。
- (2) 労働組合法第7条において、労働組合の組合員であること、労働組合に加入し若しくはこれを結成しようとしたこと又は労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者に対して不利益な取扱いをすることを不当労働行為として禁じている。
- (3) 公共・民間の両セクターの相互に似通った職務の報酬の比較については、上記1.(1)を参照されたい。
- (1) 主要法令等
- (a) 労働者の職場における安全及び衛生を確保するため、「労働安全衛生法」、「じん肺法」等の法律及び「労働安全衛生規則」、「ボイラー及び圧力容器安全規則」、「有機溶剤中毒予防規則」等の関係規則を制定、施行している。
- (b) 船員法の適用を受ける船員や鉱山保安法第2条2項の規定による鉱山における労働者にかかる保安については、労働安全衛生法の適用が除外されているが、それぞれ、船員法及びその関係規則、鉱山保安法及びその関係規則により、労働衛生・安全が確保されている。
- (c) 我が国は、1953年10月、ILO第81号条約(工業及び商業における労働監督に関する条約)を批准しており、これに基づく労働基準監督機関の活動を確保している。この条約の実施状況については、1997年ILOに提出した報告書を参照されたい。
- (2) 労働災害
- (a) 我が国の労働災害(業務災害、通勤災害、業務上疾病)による死傷者数は、1961年をピークとしてその後減少を続けている(但し1975~77年は一時的に増加した。)ところ、第1回報告以降も同様の傾向にある(第9表参照)。
死傷者数 死亡者数 度数率 強度率 1983 930,000 2,588 3.03 0.30 1984 921,000 2,635 2.77 0.34 1985 902,000 2,572 2.52 0.29 1986 859,000 2,318 2.37 0.22 1987 847,000 2,342 2.22 0.20 1988 832,000 2,549 2.09 0.20 1989 818,000 2,419 2.05 0.20 1990 798,000 2,550 1.95 0.18 1991 765,000 2,489 1.92 0.17 1992 726,000 2,354 2.13 0.15 1993 696,000 2,245 2.07 0.18 1994 675,000 2,301 2.00 0.20 1995 645,000 2,348 1.88 0.19 1996 621,000 2,363 1.89 0.16 注1 死傷者数は,労災保険の新規受給者数により推定。
注2 度数率とは,100万延べ労働時間当たりの死傷者数である。
注2 強度率とは,1000延べ労働時間当たりの労働損失日数である
- (b) 但し、労働災害の多くは、中小規模事業場において発生しており、また、工場、建設現場等における労働災害が依然として多い状況に対応するため、1992年労働安全衛生法を改正し、中小規模建設現場における安全衛生管理体制の整備を図るとともに、建設工事の計画段階での安全確保対策の充実を図った。
(3) 職業性疾病
- 職業性疾病の発生件数は、1980年代前半には年間1万5,000件~1万8,000件程度であったものが、1996年においては9,250件と減少している。
1996年に発生した職業性疾病についてみると、負傷に起因する疾病が70パーセント、じん肺症及びじん肺合併症が約16パーセントを占めている。
労働安全衛生法に基づく有害業務従事者を対象とした特殊健康診断にかかる有所見者率は、1996年には、3.1パーセントとなっている。
公正かつ良好な労働条件の一部として、休憩、休日、労働時間の制限及び有給休暇については、「労働基準法」等においてその最低基準を定め、労働基準監督機関によってその遵守の確保を図っている。
- (1) 休日
- 労働基準法においては、労働者は毎週少なくとも1回又は4週間を通じ4日以上の休日が与えられなければならないとされている(同法第35条)
- (2) 所定労働時間と残業時間
- 1987年及び1993年の労働基準法等の改正により、それまで1週48時間とされていた労働時間の最高限度が、段階的に1週40時間へと短縮された。この法定労働時間を超えて労働させることができるのは、非常災害の場合(第33条)、又は、労使が書面で時間外労働に関して協定を行い、これを行政官庁に届け出た場合(第36条)に限られる。
- (3) 有給休暇
- 1993年に労働基準法第39条が改正され、従来1年とされていた年次有給休暇の初年度継続勤務要件が、6か月に短縮された。
- (4) 公の休日についての報酬
- 前回報告したとおり、我が国は、「公の休日についての報酬」に拘束されない権利を留保している。これは、我が国では、現実に労働しない国民の祝日についても賃金を支払う賃金体系を採っている企業の割合が少なく、また、国民の祝日に賃金を支払うという社会的合意が無いことなどから、国民の祝日について報酬を支払うか否かは、労使間の合意にゆだねることが適当と考えられるためである。
- (5) 農業及び水産等の事業に従事する労働者に対する制限
- 労働基準法において、その性質又は態様が法定労働時間や週休制を適用するに適しない事業又は業務に従事する労働者(農業及び水産等の事業に従事する労働者)については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないこととされている(第41条)。
- (6) 船員に対する制限
- 船員の労働時間等については、その職務の特殊性等から、一般の労働者とは別の「船員法」等により規制されている(第116条)。
5.休息、余暇、労働時間の合理的制限、定期的な有給休暇及び公の休日に係る 報酬に関する我が国の法律及び慣行につき権利の実現の程度に影響を与えてい る要因及び障害
- (1) 一般に、中小企業においては、経営基盤の脆弱さ、代替要員の確保の難しさ等から、大企業に比べ労働時間の短縮が困難となっている。
また、年次有給休暇については、労働者が病気等有事への備えを重視する傾向があること等の要因から、必ずしも完全取得されない場合が多い。
- (2) 管理監督者等の労働時間、休憩及び休日については、労働基準法の規定は適用されない。また、これについて特段の措置はとられていない。
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