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経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条
及び第17条に基づく第2回報告
(仮訳文)
- (1) 第2表は、我が国における有効求人倍率(有効求人数を有効求職者数で除したもの)の推移を年齢階層別にみたもの、第3表は、完全失業率(完全失業者数を労働力人口で除したもの)の推移を性・年齢別にみたものである。これらによると、1997年においては有効求人倍率は1倍を下回っており、特に、高年齢者の有効求人倍率が低水準になっているなど年齢間の格差が大きい。一方、完全失業率は全体で3.4パーセントとなっており、雇用失業情勢は厳しい状況にある。性・年齢別にみると、男女共に15~19歳の若年層で、また、男性の60~64歳の高年齢層で完全失業率は高い水準となっている。
- (2) 第4表は、有効求人倍率及び完全失業率の推移を地域別にみたものである。これによると、南関東(東京圏)、近畿(大阪圏)などの大都市圏と北海道(本土北端)及び九州(本土南端)で完全失業率が高く、有効求人倍率も低い水準になっている。
有効求人倍率 完全失業率 1987 1992 1997 1987 1992 1997 全国 0.70 1.08 0.72 2.8% 2.2% 3.4% 北海道 0.44 0.66 0.54 4.2% 2.9% 3.8% 東北 0.56 1.02 0.80 2.9% 1.9% 2.9% 南関東 0.84 0.96 0.58 2.7% 2.4% 3.8% 北関東・甲信 1.17 1.74 1.02 1.8% 1.5% 2.5% 北陸 0.87 1.63 1.08 2.4% 1.6% 2.6% 東海 1.12 1.69 0.96 2.0% 1.6% 2.7% 近畿 0.55 0.85 0.60 3.3% 2.5% 4.0% 中国 0.73 1.52 1.02 2.8% 1.7% 2.7% 四国 0.69 1.20 0.88 3.3% 2.3% 3.2% 九州 0.40 0.82 0.57 4.0% 2.5% 3.8%
注1 労働省「職業安定業務統計」、総務庁統計局「労働力調査」による。 注2 北海道-北海道
東北-青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
南関東-埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
北関東・甲信-茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県
北陸-新潟県、富山県、石川県、福井県
東海-岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿-滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国-鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国-徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州-福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、
沖縄県
- (3) 障害者については、その能力、適性等に応じたきめ細かな職業指導、紹介を行うことが特に重要であることから、公共職業安定所において求職登録制度を設けているところであり、第5表はその推移をみたものである。求職登録する障害者数は、増加する傾向にあり、それにともなって就業中の者も増加している。しかしながら、これらの伸びに比し、有効求職者の伸びが大きくなっており、雇用機会はやや滞留の動きがみられる。
注 「保留中の者」とは、現在病気等の理由により紹介斡旋の対象と
登録者全数 有効求職者 就業中の者 保留中の者 1986年3月末 342,179 47,824 277,570 16,785 1991 〃 341,876 54,276 272,101 15,499 1996 〃 414,735 88,030 305,239 21,466 1997 〃 426,109 95,515 307,643 22,951
ならない者である。
- (1) 勤労権の保障
- 憲法第27条1項は、「すべて国民は、勤労の権利を有する。」と定め、国民の労働の権利を認めている。国は、この勤労権を保障するため、労働者の職業の安定のための諸施策を講じる責務を負っている。職業安定行政にかかわる現行の諸法令(法令の詳細については第1回報告参照。)は、勤労権の保障を大きな柱としている。
- (2) 職業選択の自由
- また、憲法第22条1項は、「何人も公共の福祉に反しない限り、・・・職業選択の自由を有する。」と定めている。この権利を実質的に保障するため、我が国は、公共職業安定所を始めとする職業安定機関を整備し、積極的な求人開拓、求職者に対する情報提供、職業紹介等を実施している。他方、国が就職の機会をあっせんする(職業安定機関が職業指導、職業紹介等を行う)に当たっても、あくまで本人の自由意思を尊重すべきであり、国家権力による労務配置等は許されない。
- (3) 我が国の雇用関係諸施策
- このように勤労権の保障と職業選択の自由の保障は、職業安定法、雇用保険法等日本の職業安定関係法規を一貫する基本理念であるが、現在ではこれらの理念に立脚するとともに、更に進んで近代福祉国家の基本的な政策理念である「完全雇用の達成」を目標として雇用関係諸施策の総合的展開が図られている。
すなわち、雇用対策法を頂点とする日本の雇用に関する各種の法令及びこれに基づく各種諸施策は、それぞれの対象や採用する手段は異なっていても、憲法の理念の具体化や完全雇用の達成という基本的な政策目標の実現に向かって体系化されている(雇用対策法第1条第1項参照)。具体的に体系づけるとすれば、まず第1に、雇用対策法に基づく雇用安定事業等の失業防止措置があり、第2に、雇用保険等に見られる失業者の賃金喪失をカバーすべき生活保障措置があり、第3に、職業紹介、職業訓練等の失業者の就職促進のための措置があるということになる。
雇用政策の目標である完全雇用の達成とその水準の維持を実現するためには、その時々の経済や雇用の情勢に即応して的確かつ機動的な雇用対策の推進を図ることはもとより、中長期的な労働力需給構造の変化に十分対応できるよう努める必要がある。このような観点から、我が国は、1967年以降雇用対策基本計画を策定(1995年には、第8次計画を策定)し、また、当面する雇用失業情勢に的確に対応し、必要な施策を総合的、計画的に実施するための指針として、毎年度、年次雇用計画を策定することとしており、これらの計画に従って具体的な雇用政策が行われている。労働生産性の向上は基本的に労使の自主努力の結果であるが、政府としても、労働生産性の向上に資する政策として、職業能力開発対策、省力化投資の促進等を行なっている。また、直接的には労働生産性の向上を目指したものではないが、労働時間の短縮の促進も、生産性の向上を促す契機となっている。この他、産業構造の転換策(高生産性部門へ産業雇用構造をシフトさせること)、研究開発の促進、なども労働生産性の向上に資するものといえよう。
- (1) 職業能力開発対策
- 労働力の質の向上を図るため、政府は、民間企業における職業能力開発の促進等を図るための援助、公共職業訓練の実施、技能検定の実施等による職業能力開発システムの形成、技術革新や情報化の進展に対応したME(マイクロ・エレクトロニクス)・情報処理関連人材の養成等を図っている。
- (2) 省力化投資の促進
- 省力化投資は、労働力を節約することによって、労働生産性の向上を図るものであるところ、政府はその促進のための援助を実施している。また、労働力不足に対応しつつ民間設備投資の促進を図るため、中小企業を始めとして省力化設備投資を行う事業者に対する融資制度等を設けている。
- (3) 労働時間の短縮の促進
- 労働時間の短縮は、国民がゆとりある生活を営むために我が国全体として取り組むべき国民的課題となっている。政府は労働時間短縮に向け、週40時間労働制の完全定着を基盤として、年次有給休暇の完全取得の促進、長時間残業の削減を重点に労働時間対策の積極的推進に努めている。
我が国の職業訓練制度の基本的枠組みは、職業能力開発促進法(1985年6月に「職業訓練法の一部を改正する法律」が公布されたことにより、第1回報告で触れた「職業訓練法」が「職業能力開発促進法」に改称された。)及びこの法律に基づき5年ごとに定められる職業能力開発基本計画によって定められている。国及び都道府県においては、これらに基づき、民間企業における教育訓練の振興を図るとともに、企業内教育訓練の機会が必ずしも十分でない労働者のために、公共職業能力開発施設を整備している。
- (1) 民間企業における教育訓練の振興
- 民間企業における教育訓練の振興については、職業能力開発促進法に基づき、事業内職業能力開発計画の作成及びその円滑な実施を図るための職業能力開発推進者の選任を勧奨するとともに、当該計画に基づき行われる教育訓練の実施に要した経費について助成措置を講じているところである。
- (2) 公共職業能力開発施設
- 公共職業能力開発施設における職業訓練は、習得させようとする知識及び技能の「程度」と「期間」に基づき、短期課程及び普通課程の普通職業訓練、並びに専門短期課程及び専門課程の高度職業訓練に区分されている。国及び都道府県は、職業能力開発基本計画及びこれを踏まえて定められる都道府県職業能力開発計画に基づく施策の推進に努めるとともに、各施設に労使や関係行政機関の代表等から構成される運営協議会を設置して、労働者や産業のニーズに応じた訓練を実施するなどその効果的な運営に努めている。
職業安定法第3条は、何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地等を理由として職業紹介、職業指導等について、差別的取扱いを受けることがない旨規定している。政府は、雇用機会の均等性を実質的に保障するため、以下のような施策を行なっている。
- (1) 女性労働者
- (a)男女雇用機会均等法及び労働基準法等の一部改正
- 男女間の雇用機会、労働条件の均等化を促進するため、1986年4月に「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律(男女雇用機会均等法)」を施行したほか、労働基準法及び船員法等女性保護規定を改正し、時間外労働、休日労働、深夜業、危険有害業務等における女性に対する制限を緩和した。
- また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を確固たるものとするため、1997年に男女雇用機会均等法等が改正された。
- 改正男女雇用機会均等法は一部を除き、1999年4月から施行されるが、その主要な改正点は以下のとおりである。
- (i)これまで事業主の努力義務となっていた募集・採用、配置・昇進について、女性に対する差別を禁止することとし、また、教育訓練について差別が禁止される対象の範囲を限定しないこととした。
- (ii)これまで認められていた女性のみを募集することや女性のみを配置すること等は、女性の職域を固定化したり男女の職務分離をもたらす等の弊害が認められるため、原則として「女性に対する差別」として新たに禁止することとした。
- (iii)国は男女労働者の間に事実上生じている差を解消するための取組(ポジティブ・アクション)を講じ、又は講じようとする事業主に対し、相談その他の援助を行うことができる旨の規定が新設された(但し、この規定に基づいて行われるポジティブ・アクションとしての女性のみに対する措置は上記(ii)の「女性に対する差別」には当たらないものとされる)。
- (iv)女性労働者に対する差別を禁止する規定に違反している事業主がその是正を求める勧告に従わない場合には、その旨を公表する制度が創設された。
- (v)調停制度については、当事者の一方からの申請により調停ができるようになった。
- (vi)事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な配慮をしなければならない旨の規定が新設された。
- (vii)これまで事業主の努力義務であった妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する措置が事業主に義務づけられた(1998年4月1日より施行)。(本報告書 第10条2母性の保護を参照)
- さらに、同時に行われた労働基準法の一部改正により、満18才以上の女性労働者に係る時間外及び休日労働並びに深夜業(午後10時から午前5時までの労働)の規制を解消することとし、改正男女雇用機会均等法と併せて1999年4月から施行される。
- (b)雇用管理改善に関する援助業務
- 募集・採用、配置・昇進などの女性の雇用管理の問題については、各都道府県に労働省の出先機関である女性少年室があり、男女雇用機会均等法のより一層の遵守とその趣旨に沿った雇用管理の実現、改正男女雇用機会均等法の周知を図るため、啓発や相談、制度改善指導、個別紛争解決のための援助業務を行っている。具体的には女性少年室には、女性労働者、事業主等から、年間2万件にのぼる相談が寄せられており、男女雇用機会均等法上問題がある企業に対しては厳正な指導を行っている。また、一方では、定期的に企業の女性の雇用管理に関する事情聴取を行い、問題を把握した場合には、厳しく是正を求めるなど積極的な指導にも努めている。さらに、男女雇用機会均等法の趣旨に沿った雇用管理の改善を促進するため、企業における自主的取組を促進している。
- (c)男女雇用機会均等法の適用除外
- なお、男女雇用機会均等法に基づき、募集・採用、配置・昇進に関し、労働大臣が具体的に事業主が講ずるように努めるべき措置を定めた指針について、以下のような適用除外が認められている。
- (i) 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男性に従事させることが必要な職業(俳優、男声歌手等)に従事する労働者に係る場合
- (ii) 守衛、警備員等防犯上の要請から男性に従事させることが必要な職業に従事する労働者に係る場合
- (iii) 業務の性質上男性に従事させることについて上記(i)及び(ii)の職業と同程度の必要性があると認められるその他の職業(宗教上、風紀上、スポーツにおける競技上の必要性等から男性でなければならないもの)に従事する労働者に係る場合
- (iv) 労働基準法上の規定(女性の時間外・休日労働、深夜業の規制等)により女性の労働が制限・禁止されていることから、通常の業務を遂行するためには、女性に対し男性と均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難と認められる場合(なお、女性時間外・休日労働、深夜業の規制は1999年3月限り解消される。)
- (v) 風俗、風習等の相違により女性が能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合等
- なお、改正男女雇用機会均等法に基づき、新たな指針が策定され、1999年4月から適用される予定である。
- (2) アイヌの人々、同和関係者、在日韓国・朝鮮人
- 公共機関が行う職業紹介、職業指導等において、アイヌの人々、同和関係者、在日韓国・朝鮮人に対し、差別的取扱いが行われることはないが、これらの者の有する歴史的経緯を考慮すれば、より安定した生活を営むことができるよう特に配慮する必要があることから、更に実質的な権利確保のため、政府としては、事業主がかかる人々に対する正しい理解と認識を深め、求職者の適性と能力に基づく公正な採用選考を行うよう、指導・啓発を行ない、もって、これらの者の就職の機会均等が確保されるように努めている。
なお、人種や国籍、社会的身分等を理由として、就職の機会均等が確保されない事例が見受けられる場合、人権擁護機関において、個別に関係者に対して職業安定法3条等の趣旨(上記5.柱書参照)の理解を求める啓発を行うこととしている。
- (3) 来日外国人
- 我が国において就労することを目的として来日する外国人のうち、専門的な技術、技能又は知識を必要とする業務に従事しようとする人及び一般の日本人では代替することのできない外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする人の受入れについては、適切な入国・在留管理が行われる限り、国内の雇用への悪影響その他の社会問題を生じるおそれは少なく、我が国の経済及び社会の発展に資するところが大であると考えられる。
我が国は、このような観点から、専門的技術等を必要とする業務に従事する労働者については、可能な限り受け入れる方向で対処することとしており、我が国に入国、在留を認められた外国人については、在留資格の範囲内で全国の公共職業安定所において、我が国民と同様に職業紹介を行い、雇用機会の確保に努めている。
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