- 4. 女性に対する暴力に関する情報
- (1)現行法制
- ア)暴力から女性を保護するための法制度
- 女性に対する暴力については、殺人罪(刑法第199条、死刑又は無期若しくは3年以上の懲役)、傷害致死罪(刑法第205条、2年以上の有期懲役)、傷害罪(刑法第204条、10年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料)、暴行罪(刑法第208条、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)、脅迫罪(刑法第222条、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)、逮捕監禁罪(刑法第220条、3月以上5年以下の懲役)、強制わいせつ罪(刑法第176条、6月以上7年以下の懲役)、強姦罪(刑法第177条、2年以上の有期懲役)等の処罰規定を適用することができ、事案に応じて、これらの処罰規定を的確に運用している。
- このような被害を受けた者は、告訴をすることができる。なお、強姦罪や強制わいせつ罪等の性犯罪についての告訴期間は、他の犯罪と一律に、犯人を知った日から6か月以内とされていたが、性犯罪の被害者は、その犯罪で受けた精神的ショックや事件をめぐる様々な事情により、短期間で告訴するかどうかを決めるのが難しい場合があることから、2000年5月12日に成立した「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律」において、性犯罪につき、告訴期間の制限を撤廃し、公訴時効が成立するまでの間は告訴をすることができるようにした。
- また、被害を受けた女性等が刑事事件の証人として証言する際には、公開の法廷において被告人の面前で証人尋問を受けることにより著しい精神的負担を受ける場合があることから、このような証人の負担を軽減するため、同法において、(A)証人尋問の際、適当な者を証人に付き添わせる制度、(B)証人と被告人又は傍聴人との間を遮へいする制度及び(C)ビデオリンク方式による証人尋問の制度(証人を別室に在室させ、テレビモニターを通じて証人尋問を行う方式)等を導入した。
- イ)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年5月26日公布)
- 第6条で記述する。
- ウ)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(2001年6月20日公布)
- 第6条で記述する。
- エ)配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(2001年4月13日公布)
- 第16条で記述する。
- オ)児童虐待の防止等に関する法律(2000年5月24日公布)
- 第16条で記述する。
- (2)強姦及び強制わいせつの現状
- 2001年中の強姦の認知件数は2,228件で、1971年の4,862件に比べ2分の1未満に減少している。その推移をみると、1971年以降1990年まで減少傾向が続いたが、その後1,500件前後で推移し、1997年からはゆるやかな増加傾向にある。
- 2001年中の強制わいせつの認知件数は9,326件で、1971年の3,374件に比べ約2.8倍に増加している。その推移をみると、1986年まで減少傾向が続き、1987年以降増加傾向にあるが、1999年から急増しており、2001年は前年比約3割の増加となっている。
- (3)被害者への支援サービスの存在
- ア)被害者への適切な対応
- 専門的な被害者支援が必要とされる事案が発生した際には、捜査員とは別に指定された警察職員が、病院への付き添い等の被害者支援を実施し、被害者の精神的負担の軽減を図っている。
- また、犯罪により精神的被害を受けた被害者に対して、カウンセリングに関する専門的知識や技術を有する警察職員が、被害者の希望に応じて、その精神的被害を軽減するためカウンセリングを実施している。長期間にわたってカウンセリングが必要な被害者に対しては、精神科医や民間のカウンセラーを紹介するなど関係機関・団体との連携を図り、被害者の精神的被害回復のための施策を進めている。
- さらに、地方自治体、司法関係者、医療関係者、民間団体等で構成される被害者支援連絡協議会を通じて活発な情報交換等を行い、信頼関係の構築及び連絡体制の確立等関係機関との連携強化を図ることにより、多様な被害者のニーズに応じている。
- 特に、性犯罪に関しては、性犯罪被害者の立場に立った適切な対応により被害者の精神的負担の軽減を図るとともに、従来以上に適切かつ強力な性犯罪捜査を推進するため、1996年に各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置したほか、女性の警察官による事情聴取や鑑識活動、証拠採取の際の被害者の負担を軽減するために、証拠採取に必要な用具や被害者の衣類を預かる際の着替え等をまとめた「性犯罪捜査証拠採取セット」の整備等の施策を進めている。
- イ)再被害の防止
- 警察では、被害者等が同じ加害者から再び被害を受けることを防止するため、従来から防犯指導、警戒措置等の再被害防止措置を講じてきたが、継続的な再被害防止措置を講じる必要がある被害者等の「再被害防止対象者」への指定、法務関係機関との連携強化等を盛り込んだ「再被害防止要綱」を2001年8月に制定し、再被害の防止のための施策を強化している。
- また、女性・子どもが被害者となった殺人、強姦、強制わいせつ等の犯罪が増加傾向にあるとともに、女性に対するストーカー事案や夫から妻への暴力事案、子どもに対する声掛け事案や児童虐待事案に関する相談件数が増加傾向にあることから、「女性・子どもを守る施策実施要綱」を制定し、ボランティア、自治体等との連携による女性・子どもを守る施策の推進、防犯ブザー等の防犯機材の貸与等により被害に遭った女性・子どもへの支援の取組を推進している。
- ウ)被害の潜在化防止
- 女性が性犯罪の被害の届出や相談を行いやすいよう、各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪被害110番」等性犯罪相談窓口を設置しているほか、刑事手続や各種の救済制度について分かりやすく解説したパンフレットを被害者に交付したり、捜査状況や被疑者の処分状況等を適切に連絡し、被害者からの照会に対しても確実に対応したりするなどの適切な情報提供を行うことによって、被害女性の援助を行っている。
- また、被害者の相談が円滑に行なわれるよう、相談室の照明・内装の改善、応接セットの設置等を図るとともに、機動的に被害者の指定する場所に赴くことができ、被害者のプライバシーを保護しながら事情聴取等を行うことができる特別の装備を備えた「被害者対策用車両」の整備を進めている。
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