- 第12条
- 1. 生涯を通じた女性の健康の保持増進
- (1)「健やか親子21」の策定等
- 1998年に、厚生省児童家庭局長の下に、専門家からなる「生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会」を設置した。同研究会は、女性の健康について、現状の把握、実施されている施策の評価、今後の施策の方向についての検討を行い、1999年に検討結果をとりまとめ、公表した。
- 2000年11月に、21世紀の母子保健の主要な取組を提示するビジョンである「健やか親子21」を策定した。「健やか親子21」は、国、地方公共団体、医療機関、国民など関係者が一体となって推進する国民運動計画の性格をもつものであり、(1)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進、(2)妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援、(3)小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備、(4)子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減の4分野について、2010年までに達成すべき目標を定めている。
- また、2000年度から、保健婦、助産婦等母子保健医療に携わる専門職を対象として、母子保健事業、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ等に関する専門的な研修を新たに実施している。
- 将来を担う世代の健全な育成を図る体制の整備が求められていることから、国立成育医療センターを2001年度に開設し、小児医療、母性・父性医療を包括する医療(成育医療)の向上を図ることとしている。
- (2)健康支援事業
- 生涯を通じた女性の健康支援事業を2000年度には27か所(全国の31%)の都道府県・指定都市で実施した。具体的には、保健婦等が、生涯を通じた女性の健康上の問題(婦人科的疾患及び更年期障害、妊娠、避妊、出産の悩み、不妊等)に関し相談指導、健康教育を行う事業を拡充した。また、相談担当者の研修を継続的に行った。
- また、生涯を通じた女性の健康支援に関する研究や、骨粗鬆症など女性に多い疾病の原因解明・治療に関する研究を実施した。2002年からは、新たに更年期に重点を置いた女性の健康支援に関する研究を行うこととしている。
- (3)性教育・啓発
- 学校教育においては、児童生徒が発達段階に応じ、性に関する科学的な知識を身に付け、生命の大切さを理解し、人間尊重、男女平等の精神に基づく異性観を持ち、望ましい行動がとれるよう、「体育」「保健体育」「理科」「家庭科」「道徳」や「特別活動」などを中心に、性に関する指導の一層の改善・充実に努めている。このため、教師用指導資料の作成や、各種研修会を開催するなど、各種施策を推進している。
- また、中学生に対して、性情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについても指導するとともに、高校生に対して、受精、妊娠、出産とそれに伴う健康問題や人工妊娠中絶の心身への影響などについて指導し、性に関する情報への対処など適切な意思決定や行動選択が必要であることを理解できるよう努めている。
- 社会教育においては、都道府県・市町村が行う、性に関する学習や女性の健康問題を含む目的別・対象別の学級・講座等を開設することを奨励している。
- (4)生涯を通じた女性の健康支援
- ア)思春期
- 「健やか親子21」は、2010年までの目標として、10代の人工妊娠中絶及び性感染症罹患率を減少傾向とすることを掲げている。
- 10代の望まない妊娠は7.0(女子人口千対)(1996年)から12.1(女子人口千対)(2000年)と、増加している傾向にある。これを予防するため、2000年に思春期児童を対象として、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの考え方を踏まえ、性教育、避妊、人口妊娠中絶の影響、性感染症等についての理解を深めるとともに、相手の人格の尊重と対等な関係に基づかない性行為の自粛等を盛り込んだ「思春期の性と健康に関するハンドブックの作成」を国から各地方公共団体に対して通知し、各地方公共団体において思春期の性や健康に関するハンドブックの作成が推進されるように、その作成にあたっての指針を提示した。
- イ)妊娠出産期
- (i)妊娠から出産までの一貫した母子保健サービスの提供
- 「健やか親子21」は、2010年までの目標として、妊産婦死亡率の低下や妊娠・出産について満足している者の割合の上昇を掲げており、その達成に向けた取組を推進している。
- また、「健やか親子21」では、利用者が希望する妊娠・出産に関する医療サービスを選択できるよう、医療施設が情報提供に取り組むことを推進することとしている。同時に、QOL(Quality
- Of Life:生活の質)の確保と有効な医療を追求する観点から、産科技術について、リスクに応じた適応の検討やEBM(Evidence Based
- Medicine:根拠に基づいた医療)による見直しを行うこととしている。
- 2001年に、母子健康手帳の様式について、父親の育児参加に関する記述を新たに設ける、働く父母の子育て支援の観点から育児休業などの職場における仕事と子育ての両立支援に関する制度の記述を拡充する等の見直しを行い、2002年4月から施行している。
- (ii)不妊専門相談サービス等の充実
- 「健やか親子21」では、不妊への支援を課題の一つにあげており、これを踏まえ、2000年度には18か所の都道府県、指定都市で、不妊専門相談センターの拡充を実施した。
- (iii)周産期医療の充実
- 我が国の妊産婦死亡、周産期死亡の現状をみると、2000年の妊産婦死亡数は78人、死亡率(出生10万対)は6.3でこの数年横ばいである。乳児死亡率(出生千対)は3.2、乳児死亡の55.0%を占める新生児死亡の率(出生千対)は1.8、また周産期死亡率(妊娠満22週以後の死産数+早期新生児死亡数/出生数+妊娠満22週以後の死産数×1000)は5.8で、年々低下している。
- 「健やか親子21」では、妊産婦死亡率の半減及び世界最高水準の周産期死亡率の維持を2010年までの目標として設定している。
- 少子化、35歳以上の妊婦の増加、出生体重1500g未満児の増加のなかで、安心して子供を産み育てる環境づくりの一環として、妊娠時期から出産、小児期にいたるまでの高度な医療を提供するための周産期医療施設(PICU:Perinatal
- Intensive Care Unit)、小児医療施設(NICU:Neonatal Intensive Care Unit)を全国的に整備しつつ、1996年から都道府県単位で妊婦及び新生児に対する周産期医療についてのシステム体制の構築を推進している。
- (iv)女性の主体的な避妊のための環境整備
- 1999年に低用量ピルの、また、2000年に女性用コンドーム等の使用が承認された。
- また、2000年に、母体保護法の一部改正が行われ、助産師を始めとする受胎調節実地指導員が受胎調節のために必要な薬剤を販売できる期限を従前の2000年までから2005年までの5年間の延長を行った。
- ウ)成人期、高齢期
- 骨粗鬆症は骨折等の基礎疾患であり、高齢化の進展によりその増加が予想されることから、骨量が減少している者を早期に発見し、骨粗鬆症を予防することが必要である。
- そのため、1995年より、閉経前後の40歳、50歳の女性に対する骨粗鬆症検診を老人保健法の総合検診の中に位置づけたところである。さらに、2000年からは、老人保健事業第4次計画においてより検診を受けやすくするため、独立した検診とするとともに、併せて、骨粗鬆症(転倒予防)に関する健康教育や健康相談を行い、骨粗鬆症の早期発見や予防等に努めている。実施主体は市町村であり、費用は、国、都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担している。
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