- 第11条1(d)
- 1. 同一価値労働同一報酬
- 労働基準法第4条では、賃金について女性であることのみを理由とした差別的取扱いが禁止されているが、実際に支払われている平均賃金(パートタイム労働者を除く。)の男女間格差を見ると、2000年においては女性は男性の65.5%となっており、徐々に縮小してきている。こうした男女間賃金格差は、職種や職務上の地位が男女で異なること、女性の勤続年数が男性に比べ短いこと等によるところが大きいと考えられる。
- 男女間の就業分野の違いについては、改正男女雇用機会均等法により募集・採用、配置・昇進における差別的取扱いや、女性の職域の固定化や男女の職務分離といった弊害が認められる「女性のみ」又は「女性優遇」の措置が禁止されたことを踏まえ、積極的な行政指導により男女雇用機会均等法の履行確保を図るとともに、男女労働者の間に事実上生じている差を改善するためのポジティブ・アクションの普及のための援助を行っている。
- 男女の勤続年数の差異については、男女がともに育児や介護といった家族の一員としての役割を果たしながらも働き続けることができるよう、職業生活と家庭生活との両立支援対策や、労働時間の短縮を積極的に進めている。
- また、こうした男女の差異の解消を図るためには、その背景にある男女の能力や役割に対する固定的な考え方を改めることが重要であり、そのための広報啓発活動に引き続き取り組んでいるところである。
- さらに、労働基準法においては、この規定の違反については、是正指導を行っているところである。
- なお、2001年度から2002年度にかけて男女の賃金格差の原因について分析を行うとともに企業の賃金・処遇制度等が男女間の賃金格差に及ぼす影響等を把握するための研究会を発足させ、検討を行っている。
- 2. 女性の家庭内の無報酬活動の測定と計量化
- (1)生活時間に関する基礎調査
- 総務省では、国民の生活時間の配分及び主な活動を明らかにすることを目的として、社会生活基本調査を2001年10月20日現在で実施した。今回の調査では、従来の把握事項に加え、家事等、家庭内無償労働の時間量の実態把握に資する基礎資料の充実を図っている。
- (2)無償労働の貨幣評価
- 内閣府(経済企画庁)では、家庭内での家事や社会的活動といった対価を要求しない無償労働についての貨幣評価額を推計し、1997年5月に結果を公表した。
- その結果によると、1996年における無償労働の貨幣評価額(機会費用(OC)法*による)は、総額116兆円であり、国内総生産(GDP)比23%となった。このうち、女性が行った無償労働の評価額は98兆円で、総額の85%を占めている。
- さらに、介護・保育サテライト勘定の研究を行い、2000年6月に公表した。介護・保育サテライト勘定とは「政府が社会福祉として提供する介護・保育サービス」、「事業者が有償で行う介護・保育サービス」に加え、通常は貨幣評価されることのない「家族が無償で行う介護・保育」も含めた社会全体の介護・保育サービスにかかる生産活動や支出活動を金銭単位で把握し、介護・保育に関する経済的側面の理解、分析に資することを狙いとしたものである。なかんずく、「家族が行う介護・保育」については、上記無償労働の貨幣評価手法を適用し試算を行っており、家庭による生産額は部門別にみて最も大きく、介護では、1.7兆円(介護サービス生産額全体の37%)、保育では7.3兆円(保育サービス生産額全体の74%)との結果となった。
- また、こうした家庭による生産額を、介護では男女別、保育では父、母、祖父母別にみると介護では女性の割合が82%、保育では母の割合が86%でそれぞれ女性、母親の割合が極めて高いことが明らかとなった。
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- * 機会費用(OC)法とは、無償労働を行うことにより、当該無償労働者が市場に労働を提供することを見合わせたことによって失った賃金(逸失利益)で評価する方法である。
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