- (2)外国人女性の売買・売春の防止
- ア)現行法制
- 外国人女性の性的搾取等事案に対しては、出入国管理及び難民認定法、職業安定法、売春防止法等の関係法令を適用して国際犯罪組織であるブローカー組織及び女性の受入店舗となっている風俗店等の取締りを積極的に推進している。
- イ)入国管理局における対策
- 出入国管理行政の面から、いわゆる人の密輸や売春強要(管理売春)等の犯罪に対抗するためには、入管法違反者から遡り、その背後に存在する悪質なブローカーを洗い出す以外に接近方法が少ないのが実情である。入国管理局では、売春を含め、不法就労を企図して我が国への入国を図る者に対する入国審査等の厳格化に努めるとともに、ブローカーに引率されるなどして不法入国を図る事案の背後関係の追及に努め、警察等捜査機関と協力して、いわゆる人の密輸に代表される売春強要、人身売買等の犯罪の早期発見と厳正な対処に努めている。また、入国管理局においては、警察等との合同での不法滞在者の摘発を強力に押し進めるとともに、ブローカーに引率されるなどして不法入国を図る事案の背後関係の追及に努め、不法入国・不法滞在者の退去強制手続の過程で人身売買や売春強要等人権侵害に当たる情報を入手した場合には、入国管理局には司法警察権がないことから、警察等捜査機関に通報・告発し、介在する悪質なブローカーの摘発に協力している。
- また、入国管理局においては、退去強制手続を執る過程で賃金の不払い、労働災害などの事実が判明したときは、雇用主あるいは労働基準監督署に連絡するなど退去強制手続を受ける者の権利救済にもできる限りの配慮をしている。
- ウ)トラフィッキングに対する国際的な取組
- 1995年6月のハリファックス・サミットにおいて設置が決定された通称リヨン・グループは、国際組織犯罪対策について幅広い議論を行ってきており、また、その下に設置した小委員会において、人の密輸に関する「原則と行動計画」を策定した。この「原則と行動計画」は、1999年10月のモスクワのG8司法・内務閣僚級会合において、人のトラフィッキングに対処するための「『人の密輸』と闘うための原則と行動計画」(仮訳)として承認された。
- 他方、国連では、1998年12月の国連総会決議に基づきアドホック委員会を設置して包括的な国際組織犯罪対策を目的とする条約の作成を目指し、その一環として、人、特に女性と児童のトラッフィキングの予防、抑圧及び処罰を目的とする議定書について協議した。我が国は、実効的な内容の条約が早期に合意されるよう、国連アドホック委員会における議論に積極的に参加した。
- そして、2000年11月、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(仮称)」は国連総会で採択され、同年12月、我が国はこれに署名した(未発効)。3つある関連議定書のうち、「人の密輸」に関する議定書(仮称)も同年11月に国連総会で採択された。我が国は、現在、国内法との関係などを検討しているところである。
- 我が国はトラフィッキング対象者の送り出し国ではなく入国する国となっているが、これまで我が国はアジア太平洋地域のトラフィッキング中継国や同送り出し国の法執行・出入国管理当局との間で、人のトラフィッキングの防止や捜査、取締りの強化のための協力を推進してきた。例えば、アジア諸国の法執行当局の能力向上を目的として、国際組織犯罪捜査の諸問題について意見交換を行うセミナーを行ったり、捜査技術に関する専門家派遣、機材供与なども行ってきた。
- こうした中で、2000年1月、東京において、外務省はアジア太平洋地域各国からの出席を得て、人のトラフィッキングに関するアジア太平洋地域シンポジウム(Asia-Pacific Symposium on Trafficking in Persons)を開催し、活発な議論を行った。
- また、2002年2月には、インドネシアで「人の密輸・不正取引及び関連の国境を越える犯罪に関する地域閣僚会議」が開催され、我が国よりも杉浦外務副大臣が出席し、積極的に議論に参加した。
|