- (6)セクシュアル・ハラスメントの防止
- ア)現行法制
- 職場における性的嫌がらせについては、暴行罪、脅迫罪、強要罪(刑法第223条、3年以下の懲役)、名誉毀損罪(刑法第230条、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)、侮辱罪(刑法第231条、拘留又は科料)等の処罰規定を適用することができ、事案に応じて、これらの処罰規定を的確に運用している。
- イ)職場一般における防止
- 男女雇用機会均等法においては、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するための雇用管理上の配慮が義務づけられており、同法に基づき定められた指針において、事業主は、(A)セクシュアル・ハラスメントに関する方針の明確化と労働者に対する周知・啓発、(B)相談・苦情への対応、(C)事案が生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応について配慮することが求められている。
- 1999年度に企業を対象に実施した調査によると、49.0%の企業が「セクシュアル・ハラスメントを許さないという方針の明確化と周知啓発」を行い、34.3%の企業が「相談・苦情窓口を設置」し、36.8%の企業が「セクシュアル・ハラスメントが起きたときの事後の対応」を決めているとしている。
- 企業の規模別にみると、規模が大きい企業ほど、各対策についての取組が進んでおり、3項目とも実施済みである割合も高くなっている。
- 2000年度に各都道府県労働局雇用均等室に寄せられた均等法に係る相談件数のうち、セクシュアル・ハラスメントに関する相談が8,614件と最も多くなっている。
- 政府では、企業において実効あるセクシュアル・ハラスメント防止のための措置が適切に講じられるよう、男女雇用機会均等法及び指針の周知徹底を図るとともに、計画的に事業場訪問を行い、事業主がセクシュアル・ハラスメント防止対策を講じていない場合には是正のための行政指導を行っている。
- また、中小企業等に対しては、効果的な防止対策が確実に講じられるよう、事業主及び人事労務担当者に対する具体的な取組についての情報提供や相談等の事業を実施している。
- さらに、職場におけるセクシュアル・ハラスメントによって精神的苦痛を受けた女性労働者からの相談に対しては、専門的知識・技術を持ったセクシュアル・ハラスメントカウンセラーを1999年度から各都道府県労働局雇用均等室に配置し、相談対応の充実を図っている。
- ウ)公務職場における防止
- 人事院は、公務職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するため、人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)を1999年4月1日から施行した。同規則において、各省各庁の長に対しては、セクシュアル・ハラスメントの防止に努め、発生した問題に迅速かつ適切に対応するよう、職員に対しては、セクシュアル・ハラスメントをしないよう注意するよう義務付けるとともに、具体的防止対策として、職員に対する指針の策定、職員に対する研修、苦情相談体制について規定している。
- この規則を受けて、各府省においては、部内規程の作成、苦情相談体制の整備をはじめ、所属職員への研修を通じた意識啓発等、その防止に向けての取組が行われている。
- 一方、人事院では、各府省の担当者を対象とした研修会等を開催するとともに、セクシュアル・ハラスメントの防止対策について、より組織的、効果的に取り組むため、毎年12月4日から12月10日までを「国家公務員セクシュアル・ハラスメント防止週間」と定め、その期間中「シンポジウム」の開催、「セクシュアル・ハラスメントホットライン(一日110番)」の開設等を行っている。これらの取組を通じ、セクシュアル・ハラスメント問題の重要性や防止対策の必要性についての理解、周知が図られている。
- また、人事院では、人事院規則施行前である1997年と同規則施行後の2000年に、一般職非現業国家公務員を対象に「国家公務員セクシュアル・ハラスメント調査」を実施した。両調査結果を比べると、セクシュアル・ハラスメントであると思う行為についての男女間の認識の差は、とりわけ男性の問題意識の高まりにより大幅に縮小するとともに、セクハラであると思う行為を受けた経験も、規則施行を機に全般的に減少している。
- エ)大学等における防止
- 文部科学省(文部省)においては、「文部科学省(文部省)におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」を1999年3月に制定(同年4月から施行)し、その旨を各国公私立大学等に通知し、各大学に対して、相談体制の整備などセクシュアル・ハラスメント防止に積極的に取り組むよう促してきた。同規程に基づき、各国立学校等では、セクシュアル・ハラスメント防止等のための規程を制定し、相談窓口の設置をするとともに、教職員及び学生に対する啓発活動を実施している。
- また、教育委員会においても、セクシュアル・ハラスメント防止等のための規程を制定し、相談窓口の設置、教職員に対する啓発活動等を実施している。
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