第1部 日本女性の現状
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1 人口及び人口動態
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1996年の我が国の人口は約1億2,586万人、うち女性が約6,418万人である。
女性は男性に比べ約249万人多く、総人口の51.0%を占めている。
我が国では平均寿命の伸長と少子化の進行により、21世紀半ばには、国民の約3人に1人が65歳以上という、超高齢社会が到来することが予測されている。特に65歳以上の老年人口に占める女性の割合は、1996年では58.7%であり、この割合は21世紀に向けて今後大きく増加すると予測されている。平均寿命は、1996年現在、女性83.59歳、男性77.01歳であり、男女ともに世界トップクラスである。1996年の出生数は約120万7千人、出生率(人口千対)は9.7で、出生数及び出生率共に前年に比べ上昇した。この結果、1996年の合計特殊出生率(一人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとした時の子ども数で、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は現在の人口を将来も維持するのに必要な2.08を大きく下回る1.43となっている。前回の報告にも触れたように、出生率の低下は女性の晩婚化の進行と生涯未婚率の上昇によるものであり、その要因として、特に女性の社会進出が進み育児の負担感、仕事との両立の負担感が増加していること、また男女共に結婚に対する価値観が変化してきたこと等が挙げられている。
1996年の婚姻件数は79万5,080件、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)は6.4で、婚姻件数及び婚姻率共に、前年(1995年は79万1,888件、率は6.4)並みである。平均初婚年齢は妻26.4歳、夫28.5歳で両者共に一貫して上昇傾向となっている。
離婚については、1996年には20万7千件、離婚率(人口千人当たりの離婚件数)は1.66で、離婚件数及び離婚率共に、上昇している。各年齢層とも離婚率は上昇してきており、特に20歳代の離婚率の上昇は急速である。世帯規模については、一般世帯の平均世帯人員は減少傾向にあり、1995年には2.82人となった。一般世帯をその世帯員相互の続柄によって家族類型に分類してみると、1995年では、世帯主と親族関係にある世帯員のいる「親族世帯」が一般世帯の74.1%を占め、単独世帯が25.6%を占めている。また65歳以上の高齢の親族がいる世帯は一般世帯の29.1%を占めており、一貫して増加傾向にある。
1996年の妊産婦死亡率は出生十万対6.0であり、減少傾向にある。
身体障害児・者数は1996年には約320万人であり、そのうち女性の在宅身体障害者数は約130万人、男性の当該数は約150万人である。また精神薄弱児・者数は1995年には約41万人であり、そのうち女性の在宅精神薄弱児・者数は約12万人、男性の当該数は17万人である。
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2 教育
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1997年の女子の高等学校等への進学率は97.0%(男子94.8%)であり、1969
年以来男子のそれを上回っている。女子の大学・短期大学への進学率も年々上昇しており、1997年には女子48.9%、男子45.8%と1989年以来男子のそれを上回っている。大学のみの進学率は1997年には女子26.0%、男子43.4%といまだに男女間で開きがあるが、第3回政府報告書に記載した1992年(女子17.3%、男子35.2%)に比べると男女差が縮小している。
1997年の大学の学部における関係学科別の女子比率を見てみると、女子が過半数を占めている学科は家政96.5%、芸術67.8%、人文科学67.4%、教育58.3%などとなっている。一方、女子の占める割合が低い学科について1992年と比較すると、伸びているのは、社会科学23.9%(1992年は17.4%)、農学38.6%(同26.9%)、理学25.2%(同19.8%)、工学9.0%(同5.5%)などである。
1997年には、短期大学における女性教員数は8,163人(1992年8,141人)、教員総数の中で女子の占める割合は41.1%(同38.5%)となっており、1992年と比較すると人数、割合共に増加の傾向にある。大学における女性教員数は16,564人(同12,380人)、教員総数の中で女子の占める割合は11.7%(同9.6%)となっており、1992年と比較すると人数、割合共に上昇している。
1996年の短期大学卒業者の就職率は、女子が66.5%、男子が56.1%で女子の方が高い。大学卒業者の就職率においては女子が63.5%、男子が67.1%と男子がわずかに上回っている。進学者等を除いた卒業生の中で就職する者の割合でみると、1991年を頂点に男女共に減少傾向にあり、短期大学卒業者については女子70.5%、男子67.2%、大学卒業者については女子68.3%、男子76.7%となっている。
第3回報告書提出以降、上述の通り、教育分野、特に高等教育分野における女子の進学率は、上昇傾向にある。また、専攻分野については、従来女子の占める割合が低いとされていた学科における女子の占める割合が増加している。
さらに、教育の場における男女の地位について、「男女共同参画に関する世論調査」(総理府:1995年7月実施)では、学校教育において男女の地位は平等であると考えている者は、女性62.3%、男性69.1%、となっている。これを職場において男女の地位が平等と思う女性19.2%、男性32.3%、家庭生活において男女の地位が平等と思う女性31.5%、男性49.0%といった項目と比較すると、学校教育は他の場と比較して男女平等感が最も高い場となっている。
全体的に、教育面においては、男女間の格差は、依然として存在するものの、徐々に縮小する傾向が見られる。
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3 就業
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1997年の女性の労働力人口(就業者+完全失業者)は2,760万人で、増加傾向 にあり、労働力人口総数に占める女性の割合は、40.7%であった。1997年の女性労働力人口のうち就業者は2,665万人、完全失業者は95万人、完全失業率は3.4% (男性も3.4%)であった。
また、女性の労働力率は50.4%と3年ぶりに上昇し、男性の労働力率は77.7%で前年と同率であった。女性の労働力率を年齢階級別にみると、20~24歳層(73.4%)と45~49歳層(72.2%) を左右のピークとして、30~34歳層(56.2%)をボトムとするM字型の曲線を描いている。
これを10年前(1987年)と比べると、進学率の上昇の影響で20~24歳層で低下しているほかは、いずれの年齢層においても労働力率は高まり、M字型曲線は全体的に上方にシフトしている。特に、25~29歳層では大幅に上昇しているほか、50~54歳層及び55~59歳層の中高年層での上昇が大きくなっている。
配偶関係別に女性の労働力率を見ると、未婚では61.2%、有配偶では51.3%、死別・離別では31.7%となっている。
従業上の地位別に女性就業者数の割合をみると、雇用者が2,127万人(女性の就業者総数に占める割合79.8%)、家族従業者が308万人(同11.6%)、自営業主が223万人(同8.4%)であった。自営業主及び家族従業者は減少傾向が続く一方で、雇用者は増加を続けており、就業者に占める雇用者の割合は年々高まってきている。
雇用者数全体に占める女性雇用者の割合も年々増加しており、1997年には39.5%となっている。
1997年の女性雇用者数を業種別にみると、サービス業が737万人(女性の雇用者総数に占める割合34.6%)で最も多く、次いで卸売・小売業、飲食店が586万人(同27.6%)、製造業が451万人(同21.2%)となっており、これら3業種で女性雇用者の83.4%を占めている。元々女性比率の高いサービス業での増加傾向が顕著であり、卸売・小売業、飲食店でも増加している。これに対し、製造業では5年連続で減少しており、金融・保険業でも2年連続で減少した。
1997年の女性雇用者数を職業別に見ると、事務従業者725万人(女性の雇用者総数に占める割合34.1%)、技能工、製造・建設作業者371万人(同17.4%)で過半数を占めている。また、専門的・技術的職業従事者326万人(同15.3%)も増加してきている。
職業別の女性比率を見ると、事務従業者が59.7%、保安職業・サービス職業従事者が53.9%と半数を超え、次いで専門的・技術的職業従事者が45.2%、労務作業者が43.1%となっており、女性比率を10年前(1987年)と比較すると事務従業者の上昇幅が最も大きい。また、管理職従事者の女性比率は、1992年の7.9%から1997年の9.5%へと、水準は低いものの上昇している。
また、1997年の女性の平均勤続年数は8.4年で、男性の13.3年に比較すると短いものの、1992年の7.4年に比べて1.0年伸びている。女性雇用者の中高年齢化も進んでおり、35歳以上の者の割合は1997年で60.1%となった。女性雇用者に占める既婚者の割合も増加しており、1997年には67.0%に達した。
賃金については1997年6月のパートタイム労働者を除く雇用者の賃金で見た場合には、女性の所定内給与額は男性を100とすると63.1となっている。このような男女間の賃金の差は、勤続年数、学歴、就業分野、職階、労働時間等の諸要因によってもたらされている。そこで、勤続年数、年齢、学歴について条件を同一にした標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職して同一企業に継続勤務している労働者)所定内給与額を見ると、1997年において、大卒の場合、20~24歳では男性を100とした場合、女性は95.1であり、もっとも差の大きい45~49歳においては男性を100とした場合、女性は81.8である。
労働時間について見ると、1997年の女性常用労働者1人平均月間総実労働時間は事業所規模30人以上で142.9時間となっており、うち所定内労働時間は137.0時間、所定外労働時間は5.9時間であった。一方、男性の総実労働時間(事業所規模30人以上)は166.8時間で、うち所定内労働時間は150.7時間、所定外労働時間は16.1時間であった。
女性の労働組合員数については、1997年には346万人で1992年(352万人)よりやや減少している。一方、組合員総数中に占める女性の割合は28.4%であり、1992年(28.2%)よりわずかながら上昇している。
パートタイム労働者は近年著しく増加し、1997年には週間就業時間が35時間未満の雇用者数(非農林業従業者)は1,114万人となっている。このうち女性の占める割合は67.0%であり、女性雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は35.9%である。また、パートタイム労働者の就業実態を見ると、職種、職務内容や就業意識の面において多様化が進んでいる。
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4 農林漁業に従事する女性
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農林漁業に従事している女性は、1995年には286万人で、男性204万人と比較 してわずかに多い。うち、農業に関しては、1997年には222万7千人で、全農業従事者の56.7%を女性が占めている。労働報酬についてみると、1996年の農業従 事者で、報酬、給与等を受け取っていない女性は26.7%である。女性の社会活動への参加、地域の農林水産業に関する方針決定の場への参画等については、依然として低調ではあるものの、近年徐々に状況が改善されてきている。
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5 男女共同参画に関する世論調査結果
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政府が1995年7月に行った男女共同参画に関する世論調査によると、各分野で男女の地位は平等になっていると思うかどうか聞いた結果は、男女とも半数以上が「平等」と答えた分野は、学校教育の場(女性62.3%、男性69.1%)のみであり、他の分野においては、男性の方が優遇されているというものが男女ともに多く、特に社会全体(女性79.8%、男性70.0%)、社会通念・慣習・しきたりなど(女性78.7%、男性74.9%)、政治の場(女性71.2%、男性61.6%)で多くなっている。(統計資料38参照)。
また、政府が1997年9月に行った男女共同参画社会に関する世論調査によると、男性は家庭よりも仕事を優先する方が望ましいとする考えが過半数を占めるのに対し(仕事を優先62.4%)、女性は仕事よりも家庭を優先する又は家庭と仕事を同じように両立することが望ましいとする考えが大多数であり(家庭を優先45.0%、家庭と仕事を両立41.2%)、また、「女性は仕事をもつのはよいが、家事・育児はきちんとすべきである」という考えに賛成する者が依然として多数を占める(賛成86.4%)。性別にみると、女性は仕事よりも家庭を優先する又は家庭と仕事を同じように両立すると答えた女性は男性よりも多く、女性自らが家庭責任を感じていることが表れている。
一方、1992年11月に行った男女平等に関する世論調査の結果と比較すると、「女
性は結婚したら、自分自身のことより夫や子どもなど家族を中心に考えて生活した方がよい」という考え方に賛成と答えた者は男女ともに減少し、また、「一般に、今の社会では離婚すると女性の方が不利である」と答える者が増えてはいるものの、「結婚しても相手に満足できない時は離婚すればよい」と考えている者は増えるなど、考え方が従来より柔軟になり、家庭観は大きく変化している。
(統計資料39 1)2)3)参照)