第3章 分野別に見た外交


(2)不 拡 散

(イ)地域の不拡散問題

 北朝鮮は、7月5日に弾道ミサイルを発射し、10月9日には核実験実施を発表した。国連安保理は、これらを非難し、決議第1695号及び決議第1718号をそれぞれ7月16日及び10月15日に全会一致で採択した。北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、核実験を実施したとしていることは、日本のみならず国際社会の平和及び安全を脅かすものであり、NPTを礎とする国際的な軍縮・不拡散体制への深刻な挑戦である。12月18日から22日まで、北京において、第5回六者会合(第2セッション)が開催され、朝鮮半島の非核化等、六者会合共同声明の実施に向けて議論が行われたが、実質的な成果を上げることなく、休会に入った。日本は、六者会合は、朝鮮半島の非核化を実現するための最も有効な枠組みであるとの基本的考えの下、引き続き、米国、中国等の関係国と緊密に連携しつつ、北朝鮮にすべての核兵器及び既存の核計画の放棄に向けた具体的行動をとるよう強く求めていく(第2章第1節1.「朝鮮半島」参照)

 過去20年近くIAEAに申告せずに核活動を行い、信頼回復のために濃縮関連・再処理活動の停止を求められてきたイランは、求めに反し、1月にウラン濃縮関連活動を再開した。これを受け、2月、IAEA特別理事会は、本件を国連安保理に報告することなどを内容とする決議を圧倒的多数で採択した。同報告を受け、3月31日、国連安保理は議長声明 (注29) を発出し、7月31日には、イランの核問題に関するものとしては初の安保理決議である決議第1696号を採択(賛成14、反対1)した。決議第1696号は、8月31日までにイランが同決議を遵守しない場合に、国連憲章第7章第41条 (注30) 下の適当な措置を採択する意図を表明した。しかし、イランはその後もウラン濃縮活動を継続・拡大し、6月のEU3(英国、フランス、ドイツ)、米国、ロシア、中国の6か国による包括的提案に真摯な対応を示さず、8月22日の包括的提案に対する回答も、決議第1696号の要求にこたえるものではなかったことから、その後のEU3とイランの協議及び関係国間の協議を踏まえ、12月23日、安保理は、国連憲章第7章第41条下の措置を含む決議第1737号を全会一致で採択した。日本としては、イランが、IAEA理事会及び国連安保理の要求に従い、すべての濃縮関連・再処理活動を停止し、交渉のテーブルにつくよう、関係国と緊密に連携しつつ、引き続き働きかけていく考えである(第2章第6節4.「イラン」参照)

(ロ)大量破壊兵器等の拡散防止の取組

 日本は、大量破壊兵器等の拡散防止に向け、IAEA保障措置 (注31) 及び輸出管理の強化、「拡散に対する安全保障構想(PSI)」 (注32) への参加等の外交努力を積極的に継続している。

 IAEAの保障措置は、核物質等の軍事転用を防止するための検認制度であり、国際的な核不拡散体制の実効性を確保する上で中核をなす制度である。日本は、特に、多くの国が保障措置強化のための「追加議定書」 (注33) を締結することが重要であるとの認識の下、二国間・多国間の協議の場をとらえ、各国に締結を求めている。また、保障措置のより一層の効率化の観点から、日本は、「統合保障措置」 (注34) がより多くの国に適用され、それに伴い保障措置の受入れ国とIAEAの双方の負担や経費が削減されることが重要と考えている。

 兵器やその関連汎用品の供給能力を持ち、かつ不拡散の目標を共有する国々の間では、それぞれの国からの軍事的な用途につながり得る輸出を協調して管理する取組がなされている。現在、兵器の種類に対応した5つの輸出管理レジーム (注35) が存在し、日本はこれらすべてに参加するとともに、原子力供給国グループ(NSG)の事務局機能を引き受けているのをはじめ、その強化に貢献している。ミサイルに関しては、その使用・開発等を禁じる国際的な規範はないが、日本は、「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」 (注36) の実効性の確立と普遍化に積極的に貢献している。

 不拡散に関する国際規範を受け入れていない国の存在等により、拡散を完全には阻止できていない現状に対し、従来の不拡散体制の「抜け穴」を埋めるべく、日本はPSIの訓練や会合に積極的に参加してきている。4月のオーストラリア主催航空阻止訓練には、税関及び警察庁・警視庁職員からなる特別チームが参加した。

 また、同様に核不拡散体制の「抜け穴」を埋めるべきとの問題意識から、濃縮・再処理等の機微な技術が拡散しないよう、核不拡散と原子力の平和的利用の両立を目指した様々なイニシアティブが提案されてきており、日本も、米国等が提案している核燃料供給保証に係る6か国構想 (注37) を補完するものとして、9月のIAEA総会において「IAEA核燃料供給登録システム」に関する提案 (注38) を行うなど、新たな枠組みの構築に向け、議論に積極的に参画している。

 日本は2003年以降毎年度、東京でアジア不拡散協議(ASTOP:Asian Senior‐level Talks on Non‐Proliferation) (注39) を、また、1993年以降毎年度、アジア輸出管理セミナーを開催するなど、アジアにおける不拡散体制への理解の促進と取組の強化を目指す働きかけ(アウトリーチ活動)を積極的に実施し、地域の不拡散体制強化に向け外交努力を継続している。




<< 前の項目に戻る 次の項目に進む >>