第3章 分野別に見た外交 第1節
(注1)2002年12月にワシントンで開催された「2+2」会合で、新たな安全保障環境における日米両国の防衛態勢を見直すことを含め、両国間の安全保障に関する協議の強化が決定されて以来、日米両国は緊密な協議を継続している。その一環として、2005年2月の「2+2」会合で共通戦略目標を確認した日米両国は、同年10月の「2+2」会合で共通戦略目標を追求する上での日米の役割・任務・能力、及び在日米軍の兵力態勢再編に関する協議の成果をとりまとめて発表した。
(注2)米軍施設・区域の集中による沖縄県民の負担を軽減するため、在沖縄米軍施設・区域を整理・統合・縮小し、また、米軍の運用を調整する方策を日米両国政府がとりまとめた報告。1996年12月2日、日米安全保障協議委員会にて承認。
(注3)日米地位協定の運用改善の例としては、ほかに2004年8月に沖縄県宜野湾市で発生した米軍ヘリ墜落事故を受け、日米間で協議した結果、2005年4月、日米合同委員会で承認された「日本国内における合衆国軍隊の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン」がある。このガイドラインは、米軍航空機が墜落または目的地以外に着陸を余儀なくされた場合、米軍は日本当局に通報するとともに、現場保全や救助など必要な措置を行うなどとするもの。
(注4)1989年のG8アルシュ・サミットにおいて、国際的な資金洗浄(マネー・ロンダリング)対策の推進を目的に招集された国際的な枠組みで、日本のほか、経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心に31か国・地域及び2国際機関が参加。現在では、テロ資金対策についても指導的役割を果たしている。
(注5)2003年6月のG8エビアン・サミットにおいて採択された「テロと闘うための国際的な政治的意思及び能力の向上G8行動計画」により創設が決定され、その主たる目的は、テロ対策のためのキャパシティ・ビルディング支援に関する要請の分析、需要の優先付け、及び被援助国におけるCTAGメンバーによる調整会合の開催。2006年12月までに計11回開催されている。
(注6)11月の閣僚会議では、テロ行為を強く非難し、テロの攻撃が引き続きAPEC地域の安全、安定、成長にとって深刻な問題であることを再確認し、安全な貿易の確保とテロの危険の根絶のための更なる個別・共同の行動を奨励することを明言した閣僚共同声明が採択された。
(注7)テロ対策特別措置法は、2001年9月11日の米国同時多発テロが国連安保理決議第1368号で「国際の平和と安全に対する脅威」と認められたことなどを踏まえ、日本が国際的なテロの防止・根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与することを目的として制定。
(注8)2006年7月には、東京において、「生物テロの事前対処及び危機管理セミナー」を開催。ASEAN各国、中国及びインドより生物テロ対策の担当者等39名を対象とし、日本をはじめ、オーストラリア、カナダ、韓国及び世界保健機関(WHO)等の各専門家により、テロの脅威の評価、生物剤の保安管理、生物テロ発生後の適切な対処を確保するための関係機関の体制整備等につき講義を実施し、関係諸機関を見学するとともに、生物テロ発生時の対処につき机上演習を実施した。
(注9)12本のテロ防止関連条約については、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/kyoryoku_04.html参照。また、日本は12本すべてのテロ防止関連条約を締結している。なお、2005年4月、1997年から交渉が続けられてきた放射性物質や核爆発装置などを使用したテロを予防するための核テロリズム防止条約(仮称)が13本目として国連において採択され、日本は同年9月に署名した。
(注10)同対話において、6つの優先協力分野とそれぞれのリード国を特定し、本件対話を毎年開催するとともに、フォローアップのための専門家会合を開催することなどを内容とする共同議長サマリーを採択し、今後、同対話の枠組みにおいて、日・ASEAN間でのテロ対策協力の強化について対話を継続していくことが合意された。
(注11)2004年4月に内閣に設置された人身取引に関する関係省庁連絡会議において12月に策定されたもの。出入国管理強化を含む人身取引の防止、刑法改正及び取締り強化による人身取引加害者の処罰、シェルターにおける被害者の保護等の被害者保護を中心に、包括的な施策が盛り込まれている。
(注12)主要先進国で薬物関連援助政策等につき相互理解を深め、政策の調整を図ることを目的として、1990年6月、ダブリンにおいて発足した。日本、米国、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、EU25か国及びUNODCが参加し、ブリュッセルで年2回の全体会合を開いている。また、薬物が生産されている国におけるダブリン・グループ参加国の大使館で同様の協議を行うことが提唱され、ミニ・ダブリン・グループ会合と称するアドホック(特別の)会合が、約70か国の主要な薬物生産国において開催されている。
(注13)国連の歴史上初めて提出された安保理の改革に関する本決議案は、32の共同提案国と多数の支持国を得るも、拒否権獲得等にこだわるアフリカとの立場の相違もあり、最終的に会期末に廃案となったが、安保理改革の機運をかつてないほどに高めた。
(注14)G4決議案提出を受け、第59回国連総会会期中においては、アフリカ連合(AU)、コンセンサス・グループ(UFC:非常任理事国のみの拡大を主張。イタリア、パキスタン、メキシコ、アルゼンチン、韓国等で構成)も、それぞれ独自の決議案を提出するに至った。これらは第59回会期の終了とともにいずれも廃案になったが、第60回会期中の2005年12月に、アフリカの一部諸国が「AU決議案」を再提出した。
(注15)安保理の加盟国一般に対する説明責任や議論の透明性を強化するため、安保理の手続き・規則を整備・改善すること。(注16)国連平和構築委員会:2005年12月に設立された。運用規則や活動方法を議論する常設の組織委員会と、特定の国の平和構築の戦略を議論する国別会合から構成される。組織委員会は、(1)安全保障理事会から7か国、(2)経済社会理事会から7か国、(3)国連への財政貢献上位10か国から5か国、(4)PKO等への要員派遣上位10か国から5か国、(5)その他地域バランスなどを考慮して総会から選ばれる7か国-の計31か国からなる。
(注18)United Nations Peacekeeping Operations:UNPKOまたは単にPKOという。PKOとは本来、安保理決議に基づき、停戦合意の成立後に国連が紛争当事者の間に立って停戦や軍の撤退の監視等を行うことにより、事態の沈静化や紛争の再発防止を図り、紛争当事者による対話を通じた紛争解決を支援することを目的とした活動である。しかし、現在のPKOではこれらの伝統的な任務に加え、選挙、文民警察、人権、難民帰還の支援から行政事務や復興開発までも任務とする複合的なPKOが増加しており、任務の多様化、複雑化の傾向が進んでいる。
(注19)外務省・国連大学共催「平和構築を担う人材とは~アジアにおける平和構築分野の人材育成に関するセミナー」における麻生外務大臣基調講演:「平和構築者の『寺子屋』を作ります」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/e_gaimu.html)参照。
(注20)日本は、1994年以降毎年、核廃絶に向けた漸進的・現実的アプローチにのっとり、「全面的核廃絶」に至るまでの具体的「道すじ」を示した核軍縮決議案を国連総会に提出し、国際社会の圧倒的支持を得てきた。2006年は、核軍縮決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」を提出し、国連総会で賛成167、反対3(米国、インド、北朝鮮)、棄権8の圧倒的多数の支持を得て採択された。
(注21)地下核実験を含むあらゆる「核兵器の実験的爆発または他の核爆発」を禁止する条約。1996年、国連総会にて採択。現時点では未発効。2006年12月現在、批准国数137か国(署名国数177か国)。
(注22)世界321か所に設置される4種類の監視観測所によりCTBTで禁止される核兵器の実験的爆発または他の核爆発が実施されたか否かを監視する制度。
(注23)兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT:Fissile Material Cut‐off Treaty)。核兵器及びその他の核爆発装置用の核分裂性物質(プルトニウム及び高濃縮ウラン等)の生産を禁止する条約。1993年9月にクリントン米国大統領によって提案された。ジュネーブ軍縮会議にて行われる予定の条約交渉はいまだに開始されていない。
(注24)パキスタンでは2004年2月に「核開発の父」と呼ばれるカーン博士を含む科学者が、核関連技術の国外流出にかかわっていたことが明らかになった。これらは国際社会の平和と安定、核不拡散体制を損なうものであるとともに、流出先の一つと見られている北朝鮮への流出は、日本の安全保障上の重大な懸念であるとの認識の下、日本はパキスタンに対し、累次の機会に遺憾の意を伝えるとともに、本件に関して日本に情報を提供し、再発防止策を講ずるよう強く求めてきている。(注25)1月、麻生外務大臣がインド・パキスタン両国を訪問し、軍縮・不拡散に関する局長級協議の立ち上げにそれぞれ合意した。
(注26)2005年7月及び2006年3月、米印首脳間で合意。インドへの民生用原子力協力を制限している原子力供給国グループ(NSG)(本節6.(2)(ロ)「大量破壊兵器等の拡散防止の取組」参照)のガイドラインの調整を追求すること等を米国が約束。インドは、すべての民生用原子力施設をIAEA保障措置下に置くことに合意。
(注27)本事業は2002年6月のG8カナナキス・サミットにおいて、大量破壊兵器及びその関連物質の拡散防止を主な目的として、首脳レベルで合意された「G8グローバル・パートナーシップ」の一環として実施されているもの。「希望の星」と命名されている。
(注28)極東地域において、海上保管されている解体原子力潜水艦原子炉区画を陸上において長期間安定して保管するための施設。
(注29)同議長声明は、イランに対し、IAEA理事会の要求事項履行を求めるとともに、すべての濃縮関連・再処理活動の完全かつ継続的な停止を再度行う重要性を強調。
(注30)「安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、かつ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部または一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。」
(注31)IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、核物質等が軍事目的に利用されていないことを確保することを目的として、「査察」等の手段により検認活動を行うもの。NPT締約国たる非核兵器国は、NPT第3条に基づき、IAEAとの間で保障措置協定を締結し、国内のすべての核物質について保障措置を受け入れる(包括的保障措置)ことが求められている。
(注32)PSI(Proliferation Security Initiative):大量破壊兵器、ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、国際法・各国国内法の枠内で参加国が共同してとり得る措置を検討・実践する取組。75か国以上が、活動の基本原則を定めた「阻止原則宣言」を支持し、実質的にPSIの活動に参加・協力している(2006年12月現在)。
(注33)IAEAとの包括的保障措置協定に追加してIAEAとの間で各国が締結する議定書。この締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲や「補完的アクセス」による検認対象場所が拡大されるなど、IAEAの権限が強化される。2006年11月現在、78か国が締結。
(注34)従来の保障措置協定(包括的保障措置協定)に基づく保障措置と追加議定書に基づく保障措置との合理的かつ有機的な統合を図る概念。具体的には、追加議定書の実施を通じ、「未申告の原子力活動及び核物質の不存在」の結論がIAEAより得られた国を対象に、従来型の保障措置に基づく通常査察を減少させることなどにより保障措置を効率化するもの。この「結論」が出された国はこれまで24か国であり、そのうち日本、オーストラリア、ハンガリー、インドネシア等について統合保障措置が適用されている(2006年12月現在)。
(注35)図表「大量破壊兵器、ミサイル及び関連物資等の軍縮・不拡散体制の概要」中の「不拡散のための輸出管理レジーム」参照。各輸出管理レジームの概要については、外務省ホームページ上の「国際輸出管理レジーム」のページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/regime/index.html)参照。
(注36)HCOC(Hague Code of Conduct against Ballistic Missile Proliferation):弾道ミサイル不拡散のための初めての国際的政治合意であり、弾道ミサイルの拡散防止、弾道ミサイルの実験・開発・配備の自制などの原則と信頼醸成のための措置などが主な内容。126か国が参加(2006年11月現在)。
(注37)2005年9月以降、米国を中心として、保障措置協定違反がなく、原子力安全、核物質防護上の基準を満たし、機微な技術を放棄した国を対象に、現在の核燃料市場を補完する「セーフティーネット」としての「仮想燃料銀行(virtual fuel bank)」の構築を目指し、濃縮ウランの供給を現在行っている国(米国、フランス、英国、ロシア、ドイツ、オランダ)が核燃料供給保証の枠組み構築に関する議論を進めてきた。右構想は2006年6月のIAEA理事会に6か国構想(RANF)として提出された。なお、米国は核燃料供給保証に更なる保証を与えるため、独自のイニシアティブとして、IAEAの検証の下で17.4トンの兵器級高濃縮ウランを希釈して得られる低濃縮ウランを用いる「燃料備蓄(Fuel Reserve)」を2009年までに設けることを提案。
(注38)日本は、RANFの趣旨・目的に賛同しており、今後も国際的な議論に建設的に参加し、貢献していく観点から、現在の供給国の独占体制の維持という文脈で懐疑的にとらえられている面もあるRANFに対する参画性を高め、これを補完するものとして、9月のIAEA総会及び並催の特別イベントにおいて、「IAEA核燃料供給登録システム」に関する提案を行った。この提案は、具体的には一定の条件の下、ウラン濃縮に限らず、ウラン原料、転換、燃料加工、ウラン在庫、備蓄等の核燃料供給全般について各国がそれぞれの実態に応じて、その供給能力をIAEAに登録し、供給面での不安の解消と市場の攪乱(かくらん)の予防に努める制度をIAEAにおいて創設するというものである。
(注39)ASEAN10か国、日本、中国、韓国、米国、オーストラリアの局長級の不拡散政策担当者が一堂に会し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行うもの。
(注40)1997年4月発効。締約国数は181か国(2006年12月末現在)。
(注41)1975年3月発効。生物兵器の開発、生産、貯蔵、取得及び保有を包括的に禁止するとともに、保有する生物兵器の廃棄義務を規定する。締約国数は155か国(2006年12月現在)。
(注42)BWC締約国は、2011年次回運用検討会議まで、締約国会合及びその準備の専門家会合を毎年開催して、条約の強化に関する6分野を順次協議し、締約国間の共通理解と実効的措置を促進していくこととなった。
(注43)2月14日~15日に開催。計26か国の政府及び機関関係者、国内外専門家等約70名が参加した。
(注44)対人地雷の使用、生産等を禁止し貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去等を義務付ける条約で、1999年3月に発効した。2006年12月末現在の締約国数は、日本を含め152か国。
(注45)海面から水深2,000メートルまでの水温・塩分データを観測・通報するフロートを全世界で約3,000個展開する海洋監視システムの構築計画。
(注46)市民的及び政治的権利に関する国際規約(通称B規約)。
(注47)日本はこれまで8か国と人権対話を行った実績がある。
(注48)ジュネーブ諸条約第1追加議定書はジュネーブ諸条約を補完・拡充するもの。同追加議定書では国際的な武力紛争において保護対象となる傷病者、捕虜、文民などの範囲が拡大され、戦闘の方法・手段の規制等も含められた。
(注50)2005年12月の日・ASEAN首脳会議で小泉総理大臣がASEAN共同体の形成に向け75億円の支援を表明したのを受けたもの。
(注51)2002年に川口順子外務大臣が提唱した「平和の定着」構想に基づく。
(注52)2004年G8シーアイランド・サミットで日本が提案。廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)を通じて、資源と物資のより効率的な使用を奨励し、循環型社会の構築を国際的に促進する。
(注53)熱帯林保有国の環境保全と熱帯木材貿易の促進を両立させ、開発途上国の経済的発展に寄与する目的で1986年に設立された。
(注54)アジアの持続可能な森林経営の促進を目的として、アジア諸国(ASEAN)、援助国・国際機関及びNGOなどが違法伐採対策、森林火災予防、荒廃地の復旧(植林)等の活動を通じて協力していくためのパートナーシップ。
(注55)2005年1月、国連防災世界会議(於:神戸)において採択された防災施策の指針。
(注56)2005年に開催されたG8グレンイーグルズ・サミットで合意された「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する対話」。G8及び中国、インド、ブラジル、南アフリカ、メキシコ等のエネルギー需要国を含む途上国が参加。
(注57)「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」。クリーンで効率的な技術の開発・普及を通じた環境汚染、エネルギー安全保障、気候変動問題への対処を目的として発足。参加国は、米国、オーストラリア、インド、韓国、日本、中国の6か国。
(注58)WFP報告から。WFPは、約1万人の職員(現地職員を含む)を有し世界82か国で支援地域の食糧事情にあった食糧支援を展開している。
(注59)国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)及び国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保護や支援の対象となっている人数。UNHCRは、世界116か国(262事務所)で活動し、その職員数は約7,000人(80%以上が支援現場で働いている)。また、UNRWAは、パレスチナ難民の救済を行う唯一の国際機関である。