第2章 地域別に見た外交


1.朝鮮半島(拉致問題を含む)

【総  論】

 日本に隣接する朝鮮半島は、北東アジア地域に位置する日本にとって最も重要な地域の一つである。

 韓国は、地理的に最も近いだけではなく、自由と民主主義、基本的人権等の基本的な価値を日本と共有し、共に米国との同盟関係にあり、政治、経済、文化といったあらゆる面で極めて密接な関係にある重要な隣国である。近年、両国の関係は一層の深みと広がりを見せており、将来に向けて一層強固な友好協力関係を発展させることが、日韓両国のみならず北東アジア地域の平和と繁栄にとって極めて重要である。

 2006年は、日韓両国の主張が重複する排他的経済水域(EEZ)における海洋の科学的調査等を巡り、日韓関係が難しい局面を迎えることもあったが、10月の安倍総理大臣の韓国訪問以降、日韓間の連携が目に見えて緊密になった年でもあった。

 北朝鮮については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、北東アジア地域の平和と安定に資する形で国交正常化を図るという基本方針の下、「対話と圧力」の一貫した考え方に基づいて様々な施策を講じてきた。

 2006年は、北朝鮮による弾道ミサイル発射と核実験の実施という、日本の安全保障にとって重大な脅威となる事態が発生した年であった。7月5日、北朝鮮はテポドン2を含む7発の弾道ミサイルを発射した。日本は、この弾道ミサイルの発射は、日本の安全保障や国際社会の平和と安定、さらには大量破壊兵器の不拡散という観点から重大な問題であるとの認識の下、万景峰92号の入港禁止や入国審査の厳格化等の一連の措置を講じた(注1) 。さらに10月9日、北朝鮮は核実験の実施を発表した。日本は、この北朝鮮による核実験の実施は、日本のみならず東アジア、並びに国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できないものであるとの認識の下、すべての北朝鮮籍船の入港禁止や、北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止等の更なる厳格な措置を講じた(注2)

 日本は、独自の措置の実施及び安保理決議の着実な実施を通じ北朝鮮に圧力をかけ続ける一方で、対話の窓口は開け続けている。12月に約1年1か月ぶりに再開された第5回六者会合第2セッションは具体的な成果なく終了したものの、2007年2月に開催された同第3セッションは、北朝鮮による寧辺の核施設の活動停止及び封印等の「初期段階の措置」や、北朝鮮によるすべての核計画の完全な申告の提出やすべての既存の核施設の無能力化にまで踏み込んだ「初期段階の次の段階における措置」などからなる文書を採択し、朝鮮半島の非核化に向けた第一歩を踏み出した。日本としては、北朝鮮による核放棄の実現及び拉致問題をはじめとする諸懸案の解決に向け、関係国と緊密に連携しつつ、引き続き最大限努力していく考えである。




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